新型コロナウイルスの蔓延をきっかけに社会やビジネスの形は大きく変化することとなりました。そこで大きく注目を浴びることになった働き方の一つがワーケーションです。

この記事ではワーケーションの概要やメリット、デメリットなどをわかりやすく伝えます。



ワーケーションとは?  



「ワーケーション」とは、Work(仕事)とVacation(休暇)を組み合わせた造語です。2020年よりよく使われるようになった「テレワーク」という言葉は、自宅で行う在宅勤務、電車や新幹線、カフェなどで仕事をするモバイルワーク、企業のサテライトオフィスやコワーキングスペースで行うものを指します。

しかし、今回紹介する「ワーケーション」は、そこからさらに一歩進んだテレワークスタイルです。「ワーケーション」は政府や各省庁から推進され、自治体からも期待されている新しい政策の一つです。観光地、旅行先など非日常の場に滞在し、仕事をしながら余暇を過ごすこと。今までのテレワークの主目的は仕事を行うことでしたが、ワーケーションの主目的は休息です。

普段とは全く違う環境に身を置くことにより、リフレッシュをしながらメリハリをもって仕事を遂行することができます。



ワーケーションの始まり・由来  



ワーケーションは2000年代にインターネットが急速に普及した頃、アメリカで始まったワークスタイルだといわれています。日本でも、IT企業を中心に、リゾート地に拠点を置き、創造性・生産性を高めるための取り組みが行われていました。

2017年頃からJAL、JTBといった大手民間企業がワーケーションを導入し、自治体では和歌山県白浜町が先駆けとしてワーケーションを推進しています。


コロナがワーケーションに与えた影響  

2019年11月、ワーケーションの全国的な普及、促進を図るため1道6県58市町村で構成するワーケーション自治体協議会が設立されました。ワーケーションは働き方改革の一つとして関心を集めていましたがコロナ禍による大きな社会変化により新しい日常の一環として奨励されたことでさらに大きく注目を浴びていきます。

令和2年度、環境省は国立・国定公園及び国民保養温泉地における誘客やワーケーションの推進を支援し、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けている地域経済の再活性化を目的に補助事業を実施することを発表しました。

ワーケーション自治体協議会への参加自治体は2021年6月の段階で1道22県171市町村まで増えており、ますます拡がりをみせています。



ワーケーションのメリット  



ワーケーションを行うメリットを見ていきましょう。


自分にとっての場合


好きな地域で暮らせる

「興味はあったけど仕事が忙しい、距離が遠い」などの理由で、今まで旅行することを諦めてきた経験はありませんか?観光地、温泉街など、自分の行きたい好きな場所を選び仕事を行うことがワーケーションの目的の一つであり、大きな利点です。

 

心にゆとりができる

滞在先で仕事を行うことができるため、早めに仕事を切り上げ心置きなく休息を楽しむこともできます。働き方の自由度が増し、自分自身で仕事をコントロールすることができるため心にゆとりが生まれます。


家族と過ごす時間が増える  

ワーケーションを活用すれば仕事をしながら家族旅行を行うことも可能です。会社員には難しい印象のあった長期間の旅行ができるのもワーケーションならではの特徴です。真剣に仕事をしている姿を見てもらうことで家族の絆がより深まるかもしれないですね。


企業にとっての場合  


創造力、生産性が高まる  

ワーケーションを行うことにより大きく期待されている分野の一つは創造性です。非日常ならではの感動、体験及び、仕事と休暇が一緒になった時間を意図的に作り出すことによって創造力が養われます。また、働き方の特性によりタイムマネジメントを意識することとなり、生産性向上へとつながります。


メンタルケアに有効である  

自然豊かなリゾート地や観光名所、温泉地など自らが楽しむことのできる環境に身を置くことで、高いリフレッシュ効果が見込めます。仕事内容から発生することのあるストレスや悩みの問題も、ワーケーションを行うことで改善し、満足度の上昇へとつながります。


ワークライフバランスがとりやすい  

2019年に経済開発協力機構(OECD)が発表したワークライフバランスランキングにおいて日本は38カ国中、下位から数えて5番目という結果になりました。

仕事に重点を置きすぎることで生活が疎かになっているという調査報告ですが、ワーケーションによって仕事と生活を調和させることが可能です。自分のペースで仕事に望むことができ、移動に時間を取られることがなく仕事の終わりや合間にも現地での休暇を楽しんでもらうことができます。



ワーケーションのデメリット  



続いて、デメリットも見ていきましょう。


自分にとっての場合  


出社や対面の商談の際に遠い  

自由に旅先を選べることがワーケーションのメリットでもありますが、もし急な出社連絡や顧客への面談などが入った際などに、すぐ足を運ぶことは難しくなります。自分が不在となることで問題が発生する可能性はないか、前もって上司と相談することにより解決するかもしれません。

遠くなるかもしれないデメリット、自分がいないことで起こるかもしれない事態の想定などが必要です。


コミュニケーションがとりづらい  

基本的に電話やテレビ会議、チャットツールなどを用いて仕事を進めることが多く、直接顔を合わせることがありません。普段と違った環境下でのコミュニケーションによってお互いに意図が通じ合わないことや、通信環境によっては音声が聞きとりにくいといった事態も起こりえます。


プロセスを評価してもらえない  

人事や上司などに、プロセス(仕事をしている姿)を見せられないため、評価基準は以前と全く違う、新しい評価基準へと移行することが予想されます。過程の評価が難しくなるため、結果主義へと偏ってしまう可能性もあります。

明確な目標設定を決める必要も出てくる上に、目標設定もプロセスでは評価されず、結果で判断されてしまうことが多くなります。


企業にとっての場合  


環境整備にコストがかかる  

企業側がワーケーションを導入する場合、もっとも大きな課題といわれていることがICT環境の整備です。最適なインターネット環境、電子機器、オンライン会議ツールやチャットツール、VPN(Virtual Private Network)などを用意する必要があるでしょう。

また不正アクセスによる情報漏洩や重要な情報の改ざん、システム破壊などのリスクもあるため万全なセキュリティ対策を実施することが大切です。


労務環境の整備

旅行先、宿泊場所までの移動費や宿泊費が発生するため、前もって金額を負担する範囲や上限値を決める必要があります。また旅先で事故が発生する危険もあります。労災適用範囲を明確にするために仕事と休暇の区別をつけることも重要です。


労働時間の正しい管理ができない  

ワーケーション(テレワーク)を導入する場合であっても企業は勤務者に対して働いてもらった時間を把握し、時間に応じた賃金を支払う義務がありますが、監視の目が行き届かないという特有の問題が発生します。そのため就業規則の見直しや、テレワーク用のクラウドサービスなどの利用を検討する必要があります。



ワーケーションできる仕事・企業には限りがある?  



パソコン一台あれば行える仕事であればワーケーションに適しているといえます。 逆に接客業など、人と直接顔を合わせる必要のある仕事はリモートワークに適していないため、必然的に実施が難しくなるでしょう。


< ワーケーションに適した仕事の例 >


✓エンジニア

ワーケーションの活用と相性が良い仕事としてまずあげられるのはエンジニアです。 パソコンやスマホ、そしてインターネットのできる環境が整っていれば、どこでも作業が可能です。


✓マーケティング、広報

マーケターや企画、広報の職種の人も、主な業務は社内での打ち合わせのみなので、ワーケーションが実現可能です。コロナ禍によりインターネット環境を使った会議アプリやチャットツールが流行したことで社内会議もオンラインで行うことができます。


✓デザイナー

パソコンや制作に必要なソフトが必要となってきますが、動作環境や周りの環境を整えることができれば場所にとらわれることなく仕事ができるのがデザイナーです。


✓ライター

コミュニケーションを取ることも多いですが、会議アプリやチャットツールを使用することで、連携がとれるため、ライターもワーケーションが可能です。



ワーケーションにおすすめの場所は?  

最後に、ワーケーションにおすすめの土地を紹介します。


リラックスできる温泉地  

大きなリラックス効果が期待できる温泉地は、リラックスして仕事を行いながら健康増進も期待できます。


物価の安い田舎  

自然に囲まれた田舎を旅行先にすることで、ゆっくりとした時間の中で過ごすことができます。また、田舎は都会よりも物価が安い傾向にあるため、生活費を抑えた生活が可能です。


空気が綺麗なリゾート地  

リゾート地特有の美しいロケーションでの中で仕事を行えることはワーケーションの醍醐味です。滞在期間が終わっても、記憶に残る体験となることでしょう。


非日常的な離島  

休暇中に魚を取ったり、仕事の合間に海でスキューバダイビングを楽しみたい。そんな非日常感に溢れる夢のような暮らしも、離島なら可能です。


新しい文化に触れる海外  

異国の文化に触れることで、価値観の違いを理解するきっかけとなり、自国や自らを振り返る良いきっかけにもなります。仕事だけでなく人間的な成長にも期待できますが、感染予防に十分な注意が必要です。

滞在先を選ぶ際、選択肢が幅広いことでどこに行くのが良いか迷ってしまうこともあるのではないかと思います。自治体が誘致している地域ならワーケーションに適した環境作りに取り組んでいるためオススメです。

最近では旅館や宿泊施設でワーケーションプランが増加しており、長期利用での大幅な値引きをしている施設もあります。きっとあなたの希望に合う旅行先が見つかるはずです。



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