総務省が5年毎に行なっている「平成30年住宅・土地統計調査」によると、空き家数は848 万9千戸となっており前回調査と比べ3.6%増加し、空き家率は13.6%と過去最高を記録しました。

この社会問題を早急に解決するため、政府や自治体は空き家問題に関する項目に補助金や助成金を用意しており、空き家を活用することは空き家問題への解決につながると共に、金銭的な援助を受けられることが大きなメリットです。

現在行われている対策や、空き家のおしゃれな活用方法などについて紹介します。



空き家問題が起こる理由




日本における空き家率は昭和33年以降上昇を続けており、早急に解決しなければならない問題です。なぜここまで深刻化しているのかみていきましょう。


新築の建物の増築

持ち家の取得方法は「新築」が990万2千戸で持ち家総数に占める割合が30.2%と最も高く、次いで「新築の住宅を購入」が738万9千戸で割合は22.5%となっていますが、「中古住宅の購入」は483 万3千戸で割合は14.7%と、かなり低い数字です。


参考:総務省 平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計より


アメリカやイギリスは中古住宅の割合は80%以上あり、それに比べると日本の数値は大幅に下回っていることがわかります。日本はいわゆる新築信仰が強く、中古住宅を敬遠する人が多いことも空き家が増えた一つの要因です。


少子高齢化による人口減

内閣府が発信している令和2年版高齢社会白書によると、令和元年10月1日時点での日本における高齢化率は28.4%となっています。

少子高齢化が進んだことによって総世帯数は減少し、総住宅数と総世帯数の需要と供給のバランスが大きく崩れました。核家族化が進み、平均寿命が伸びたことによって老人ホームなどの福祉施設を利用する人たちが増えており、結果として空き家となった建物を放置している例も多いです。


相続問題の加速化

空き家は子供が相続することになりますが、すでに住宅を所有していたり遠方の地に住んでいることもあるため、空き家を使わない世帯も出てきます。

解体するにも多額の費用がかかり、更地にしてしまうと固定資産税は6倍高くなってしまうのでそのまま放置されていることもあります。



現在行われている空き家対策




次に空き家問題を解決するための対策を見ていきましょう。


国が行っている対策

2015年5月に全面施行された空き家対策特別措置法により、空き家を放置への罰則は厳しいものとなりました。倒壊の危険があったり、著しく衛生上有害となる恐れがあったり、管理がされておらず景観を損なっている場合などに「特定空家等」に認定されます。

その後自治体の指導に従わず、勧告を受けると場合固定資産税の特例措置が無くなり、固定資産税は更地にした時と同額の6倍になることがあります。その後の改善命令に背いた場合には、さらに50万円以下の過料が科せられます。


各都道府県が行っている対策

各都道府県や自治体は空き家活用に関する項目に様々な対策や助成金を用意していますが、その制度は様々です。今回は平成30年住宅・土地統計調査において、全国で空き家率が21.3%と最も高かった山梨県の対策をご紹介します。

山梨県では現在「空き家活用ビジネス」を推進しており、県のホームページやYouTubeを使い全国への情報発信をしています。空き家活用ビジネスを検討している事業者へ向けて、空き家活用事業を認定する「やまなし創生官民連携空き家活用事業認定制度」を設けており、下記の基準を満たすことによって認定事業者に選ばれます。


①複数の空き家を活用する見込みのあるビジネス

②空き家の活用が複数の市町村で実施される見込みのあるビジネス

③地域の課題解決や地域の活性化等に貢献するビジネス

④その他公益性、実現性等の観点から認定すべきもの


空き家所有者に対する補助金も用意されており、通常枠では改修費用の3分の2以内(上限250万円)特別枠では回収費用の4分の3以内(上限500万円)が支給されます。


参考:山梨県 空き家率日本一の山梨県で空き家活用ビジネス!より


各都道府県において取り組みの違いがありますが、それぞれのホームページで詳細を確認できます。


企業が行っている対策

株式会社などの民間事業者も政府と連携し空き家対策の取り組みを行なっています。空き家問題に関する住民への普及啓発、空き家の発生抑制および実態把握、流通の促進、利活用など、多くの企業や団体が協力し活動を進めています。

課題と目的、取り組み内容、成果などの詳細は国土交通省が令和3年3月に発表した「空き家対策における事例集」で確認できます。


参考:国土交通省 空き家対策における事例集



空き家の活用方法




次は空き家の活用方法を紹介します。


リフォーム、リノベーションをして住まいを貸す

空き家の多くは古く痛んでおり買い手が見つからない場合がほとんどですが、リフォームをすることで綺麗で美しい物件を探している人たちの目にとまり、内覧希望者が増えることが期待できます。シーズンによっては即入居可能な物件を探している人が多く、おしゃれなリフォームをした空き家であれば即契約に結びつくこともあるでしょう。

しかし空き家によっては汲み取り式トイレや、コンクリートやタイルでお風呂場を作る在来工法など、昔ながらの設計により改修しても買い手が見つからないことがありえますが、その際はリノベーションを実施することが効果的です。リフォームは古くなった箇所を修復したり、改装したりすることですが、リノベーションは建物に新しい機能や価値を付け加え、機能性を高める改装工事のことです。

古い設計の空き家でも、リノベーションを行うことで機能性の高いおしゃれな空間になります。


民泊・オフィスにする

住宅宿泊事業法では台所や浴室、洗面設備、トイレなどの居住要件を満たし、消防設備も設置することによって、工業専用地域を除いた全ての地域で民泊として営業を行えます。

多くの場合、民泊専門の業者に委託することになりますが、民泊は空き家を有効利用する方法の中でも人気の高い事業の一つです。また近年では働き方改革の一つであるワーケーションが注目されており、地方の空き家を使っての民泊はワーケーションの環境にも適しています。

またリモートワークが注目されたことによって、地方へ会社の拠点を移すことを検討している企業も増えています。空き家を活用したオフィスやコワーキングスペースなど、新たなまちづくりの一環として多くの自治体や企業が協力し、空き家対策に乗り出しています。

またコロナ禍での感染リスクを抑えることを考えた場合、地方の空き家をオフィスとして活用することは非常に効果的といえるでしょう。


更地にして活用する

まずは市場調査をすることが重要ですが、更地にすることで新たな活用方法がうまれます。

たとえば更地を駐車場にすることは数ある土地活用方法の中でも投資額は比較的少ないことがメリットで、人口が多く需要がある環境なら安定した収入を得られます。

また事業用として土地を貸す借地契約を結ぶことによって安定した地代収入が見込め、初期費用や維持コストもかかりません。しかし土地に建物が立っていない場合には、住宅用地の特例適用は受けられません。



空き家活用の実例




空き家カフェ

様々な空き家活用事例集の中で注目されている事業の一つが空き家カフェです。古い外観の空き家を利用することでレトロな空間を演出でき、女性客を中心に人気を博しています。


AKARI三鷹

「AKARI」(あかり)とは空き家を3~7年間借上げ、大規模なリノベーションを行い、賃貸戸建や店舗、民泊などの活用を行う商品です。

AKARI三鷹とはAKARIを利用したプロジェクトで、東京都三鷹市のJR中央線「三鷹駅」から徒歩11分の場所にある空き家を5年借り、内外装のリフォームを行なった後に「AKARI三鷹」として賃貸戸建化しました。純和風建築の雰囲気を残したまま、水回り設備の交換や、破損個所の修繕などを実施しています。


参考:AKARI(あかり)~空き家を借り上げサブリース、街の活性化へ~より


ふるさと情報館

近年では田舎暮らしを行うため都会から地方に移住することは当たり前になりましたが、ふるさと情報館は30年前から、都市と地方の田舎を結ぶ活動を続けてきました。

田舎暮らし物件の売却相談を行っており、常時全国約400件前後の田舎暮らし向き物件情報を提供し、空き家物件と田園生活をはじめたい田舎暮らし希望者を結んでいます。


参考:都市と地方を結ぶふるさと情報館より



まとめ

空き家問題が起こる理由や対策、活用方法などについての説明でした。

国や自治体、企業が協力し取り組んでいる空き家問題ですが、現在も非常に多くのプロジェクトが進められています。空き家を有効利用するために、空き家相談センターなどに活用相談を受けてみるのも良いでしょう。

リモートワークが進んできた中で多様な働き方が可能となり、都市部から地方への移住を検討する人たちが増えている近年において、空き家を活用することは非常に多くの利点があります。



関連記事