日本百名城の1つである岩村城跡を始めとした、数多くの旧跡が存在する岐阜県恵那市岩村町。古き良き町並みから少し車を走らせると、山々に囲まれた大自然が広がる、緑豊かな町です。

そんな情緒あふれる町へ、1年前に愛知県春日井市から移住をしてきた「伊集院さん夫婦」に、移住に対する思いやきっかけ、現在の仕事について伺いました。





映像制作のために恵那市へ、人との繋がりや温かさを感じ移住を決意  

伊集院さん夫婦は2020年冬に、岐阜県恵那市に移住をしてきました。最初は移住を考えていなかった夫婦が移住を決意するまでには、約1年間の期間を要したそうです。その1年間の中で、数多くの「人との繋がり」があったと語ります。


「まだ移住を考えていない頃、たまたま恵那市で移住サポーターをされている方をYouTubeで見つけました。その方はWebの仕事をしながら、自然豊かな恵那市にUターン移住していたんです」


この出会いをきっかけに働き方の視野が広がったと語る伊集院さん夫婦。

実はお2人とも、以前から副業でWeb系の仕事をしていました。移住サポーターの存在を知り、自分たちもWebスキルを活用しながら田舎に住めるのではないかと感じたそうです。すぐに、恵那市で移住サポーターをされている方にSNSを経由して連絡を取ります。SNS上でやりとりをしているうちに、とんとん拍子でお会いできることになりました。



「会いに行った時は、まだ移住を明確に決めたわけではなく、田舎での働き方ってどんな感じなのかな?くらいの感覚でした。実際にお会いして、恵那市の情報や移住の話を聞かせて頂きました」


話を聞いていくうちに段々と移住・恵那市に興味が湧いてきたお2人。ここで移住サポーターの方から、“ある提案”をされました。

「移住サポーターの方から、恵那市の動画コンテンツを作りたいという話題が出ました。元々私たちも、動画コンテンツを配信してみたかったこともあり、お手伝いさせて頂くことになりました」


伊集院さん夫婦と移住サポーターの方が手がけた動画コンテンツは、YouTubeチャンネル「Farm Roots’Visions」にて配信。リアルな田舎生活や農的な生活、移住に関する情報を映像で発信しています。


映像制作のために何度も恵那市に足を運ぶなかで、お2人は地元の方との繋がりがどんどんと増えていきました。土地柄と人の温かさに魅了され、恵那市への移住を本格的に考え始めたそうです。

しかし会社員だったことや、住む家も決まっていなかったことから、すぐに移住することは困難でした。



「恵那市に移住をしたいと思い始めてから、2,3軒の空き家を紹介してもらったんですが、自分達の条件と合わずになかなか一歩が踏み出せませんでした。そんな時に空き家バンクで紹介された古民家が私たちの条件にピッタリ合致したので、すぐに移住を決意しました。10月に空き家を見つけて脱サラ。その2ヶ月後の12月には移住先へ引越しをすることになりました」


ついに恵那市への移住を決意した伊集院さん夫婦。このゴール地点に辿り着くまでには、移住サポーターの方との出会いや、そこから広がる恵那市の方との繋がりがありました。お2人は、この移住で初めて「人との繋がりの大切さ」を実感したそうです。今でも移住を始めるまでに出会った方とは交流があり、情報交換を続けています。



課題が山積み!空き家を一からリノベーション

移住を決意した伊集院さん夫婦は、空き家だった古民家を一からリノベーションすることに。夫婦共にリノベーション経験は全くありませんでしたが、大学で少しだけ学んだ知識とYouTube動画を頼りに始めます。

しかし、空き家を一から作りかえるのは、想像以上に大変だったと語ります。


「移住1ヶ月前から週末は恵那市へ赴き、リノベーションを始めました。リビングとキッチンだけは完成させてから引越したかったのですが、自分たちが思っている倍以上に時間がかかってしまい、間に合いませんでした。YouTubeで事前に勉強していた内容が、材料が少し違うだけで全然工程が変わってきてしまって……。経験がない私たちは慣れていない分、試行錯誤の繰り返しでした」


移住後もリノベーションは続き、2021年の夏に一段落ついたそうです。また、夏は虫問題、冬は寒さ問題の対策をしていく必要がありました。

恵那市にきて2回目の冬を乗り越えた伊集院さん夫婦は、1回目の経験を活かして、二重窓を作るなどの万全の対策で寒さを乗り越えたそうです。夏は今年で2回目となり、虫対策は考え中ながらも「こっちが慣れるしかないかな」と笑って答えてくださいました。



荒れた畑での野菜栽培、そこで得られたものは野菜だけではない  


リノベーションをした空き家には元々畑がついていたため、春頃から畑作業をスタート。自給自足が出来たらいいなと始めた行動が、意外なところで実を結びました。


「僕たち夫婦は人見知りなんで、積極的に近所付き合いをしたり、交流したりできるタイプじゃないんです。移住先へ引越してきたばかりの頃は、お隣さんや近所の交流がほとんどなくて……。どうやってお付き合いしていこうかと考えていました。ところが、畑を始めてからは、近所の方から声をかけてもらう機会が多くなりました。野菜栽培のアドバイスや、苗・野菜のお裾分けなど、受け身であったにもかかわらずご近所さんと繋がりを持てたのはとても良かったです。ご近所さんも畑という共通点から親近感を持ってもらえて、話かけやすくなったのかなぁと思っています」



畑を通して、近所の方と交流を深められたことに加え、食への関心も広がりました。元々は、自分たちが食べる食事に対してはあまり興味がなかったそうです。

しかし畑を始めてからは、自分たちで作った野菜や近所の方から頂いた野菜を食べることが増え、以前までは捨てていた野菜の部分を使い切るなど、考え方が変わったと語ります。



現代的な働き方を田舎で実現、そのメリットとは?


ご夫婦は現在、岐阜県恵那市を拠点に「アトリエ・イジュウイン」としてWeb制作と映像制作を行っています。設計・デザイン・実装までを二人で行っているため、全てオリジナル制作ができることを強みとしています。元々副業で始めていたWebの仕事を、現在は本業にして活動されていますが、移住前から恵那市ではこの仕事を始めようと考えていました。


「移住サポーターの方と動画コンテンツを制作していく中で、私たちの存在を知ってくれる方が多くなりました。そのため、移住する前から恵那市の方々からお仕事を頂けるようになって、ふと田舎でもWeb関連は需要があるのかな?と思い始めました」



実際にアトリエ・イジュウインは、恵那市の農家の方や自治体からも依頼を受けるようになっていました。このような依頼を受けて、自分たちの好きなことを求めている人が多いと感じ、移住先でのWeb制作や映像制作を行うことを決意したそうです。

とはいえ、Webの仕事は現代的であり、都会のイメージが強いです。そこでお2人に、田舎で現代的な働き方をする事について伺いました。


「やはり都会と比較すると需要は少ないです。しかしそれ以上に供給も少ないと感じました。また、人との繋がりが強い地域なので、伝聞で私たちの活動を知ってもらえることが多く、誰かの紹介で仕事を依頼されることがとても多いです。また、都会と比較すると生活コストが低いので、そこまで稼がなくてもやっていけるのは移住先で好きな仕事をする魅力ですね」


ネットワークの発達により、メールやチャットなどを活用し繋がれるようになったこのご時世。しかし、伊集院さん夫婦はお客様の要望を漏れなく引き出すために、直接会って方向性を聞くことを大事にしているそうです。現代的なスキルは取り入れつつ、地域に寄り添った形でより良いサービスを提供しています。



脱サラしてフリーランスに転身、今後の長い人生を見据えた生き方

移住から1年経過したと同時に、会社員からフリーランスに転身して1年となった伊集院さん夫婦。フリーランスになってから、考え方がガラリと変化したと語ります。


「会社員時代は、たくさん頑張ることが評価になると思っていました。しかしフリーランスになってからは、頑張ることに重きを置くのではなく、お客さまに価値があるものを提供する事ができたかを考えるようになりました」


移住当初は、サラリーマン時代の生活から抜け出せず、居心地の悪さを感じていたそうです。しかし現在は、自分たちの働きやすい環境や方法を模索しながらフリーランス業に精を出しています。また、フリーランスになってから時間の使い方が自由になり、選択肢が広がりました。


「時間を自分たちで自由に選択出来るようになったからこそ、畑やリノベーションに力を入れることが出来ました。これに関しては、お金が発生するわけではないので、今はコスパが悪いと感じます。しかし、それも長い目で見れば、自分たちで家が作れたり、野菜が作れたりするのは良い自己投資だなと思っています」


今は自分たちの生活スキルを伸ばす種まきの時期と語る伊集院さん夫婦は、後々はその技術も仕事に活かしたいと考えているそうです。さらに自分たちが高齢になり、収入が下がった際に自給自足が出来るよう、今後もスキルを磨いていきたいと語ります。



自分たちの経験から、次の移住者へ繋げる活動を  

伊集院さん夫婦に、今後の移住先での活動について伺いました。


「まだ思考段階ですが、恵那市に存在する空き家を買い取って改装し、移住してみたいと考えている人たちに貸し出したいと思っています。私たち夫婦が移住先で家を見つけるときに苦戦したのが、賃貸の家がないことだったんです。どの空き家も売却という形で出していて、私たちも恵那市に通っていたとはいえ、やはり住んでみないと分からないという気持ちは大きかったです。家を買うよりも、まずは賃貸で移住できた方が、移住を考えている人の一歩を後押し出来るかなと思っています」


一から空き家をリノベーションし知識が増えたことから、自分たちが移住する時に抱えた悩みと、同じ悩みを持つ方を助けられるサービスを作りたいと語る伊集院さん夫婦。

今後も恵那市で、自分たちや恵那市に住む方々、移住を検討されている方にとって良い方向へ進むよう、うまく循環できたらと意気込んでくれました。



■ アトリエ・イジュウイン


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