クラウドサービスが増えてきたことによって、働く場所や環境に左右されない新しい働き方が注目されており、バーチャルオフィスはまさに今の時代に合ったビジネススタイルといえます。 従来の賃貸オフィスや貸し家などとは形態が全く異なり、これから起業を考えている人や個人事業主にとってもバーチャルオフィスを利用することは多くのメリットがありますが、デメリットも存在するため利用にあたっては事前の情報収集が必須です。
バーチャルオフィスって何?
バーチャルオフィスとは何か
バーチャルオフィスはもともとは海外から始まり、日本で大きく広がりを見せたのは2006年頃からです。
言葉が示すように仮想の事務所のことで、物理的な場所を借りるわけではなく住所や電話番号などの情報を借りることができ、サービス内容には郵便物の転送や電話転送および電話代行サービス、FAXサービス、レンタル会議室などがあります。
昭和や平成初期の頃は仕事といえば働くオフィスや場所ありきの考えでしたが、ネットが普及し様々な働き方が可能となる中で、通常の賃貸オフィスのようなスペースや設備を必要としない業種や仕事が増えた結果、一部の機能だけを借りることのできるバーチャルオフィスが注目を浴びることになったのです。
他のオフィスとの違い
レンタルオフィス
レンタルオフィスは事務所に必要な備品や通信設備などがあらかじめ備えられた場所であり、バーチャルオフィスとの違いは実際に利用する点です。 オフィスを自社で立ち上げするには多大な費用と労力が必要ですが、レンタルオフィスには始めから必要な設備が備わっています。
シェアオフィス
もともとはシェアードオフィスという名称で、共有する事務所という意味があり、フリーアドレスのスペースを好きなように使える点が大きな違いです。複数の企業が専用のスペースを借りて利用できるため、様々な業種の方と交流できる点からシェアオフィスを選ぶ人もいます。またオフィススペースだけでなく会議室も設置されていることが多いです。
バーチャルオフィスのメリット
一等地の法人登記ができる
売上が少ない会社であれば、東京都や大阪、横浜といった都会の一等地に会社を構えて法人登記をすることは金額的に問題が出てくる可能性もありますが、バーチャルオフィスを利用することにより、費用を少なくして法人登記することができます。
会社の住所が誰も知らない田舎にある場合と、東京の中心部にある場合では社会的信用度が大きく変わっていくので、大手との取引など後々のことを考えれば経営的な視点において費用対効果は非常に高いです。
初期費用を削減できる
バーチャルオフィスを利用する場合、事務手数料や保証金が発生する所もありますが、多くの場合月額料金は数千円〜1万円程度で抑えられ、他のオフィスサービスと比べて最も安いことが大きな魅力です。
売上規模の少ない会社にとって恩恵は多大で、バーチャルオフィスが急速な広がりを見せた大きな要因は初期費用を大幅に抑えられる点にあります。ITインフラが成長した近年では実際の事務所を所有せずビジネスを行うことが可能となり、今後その流れはさらに加速していくことが見込まれます。
会議室を使用させてもらえる
全てのバーチャルオフィスにレンタル会議室が設置されているわけではありませんが、ビジネスを続けていれば来客や打ち合わせなどの機会が訪れることもあるため、契約の際には会議室付きのバーチャルオフィスを選ぶと良いでしょう。
また取引先が限られることも多い地方の会社にとって、都会へ足を運ぶことは新たな取引先の開拓ができるチャンスでもあるため、将来都会への進出を考えるのであれば会議室があることは大きなメリットです。
郵便転送サービスがある
請求書や取引先からの重要書類など、郵便物には重要なものが含まれているため通常であれば自分から出向く必要がありますが、郵便転送サービスではレンタル住所に届く郵便物を受け取り、登録した住所に転送をしてくれます。
時間や手間が省けるためバーチャルオフィスを利用することにおいて必須ともいえるサービスです。
バーチャルオフィスのデメリット
融資や開業の条件に満たないことがある
バーチャルオフィスを利用しているという理由から銀行で融資が下りないということはほとんどありませんが、事業を始めるために必要な官公庁への許認可が下りない可能性はあり、結果として融資を受けることができなくなることは起こりえます。
たとえば中古品の売り買いをする古物商の場合、商品や在庫の保管場所や出荷場所のある住所を提出する必要があるので開業許可が下りません。事業によって実際の勤務場所や電話などの設備が必要であるため、事前に所轄の官公庁の担当部署へ確認をした方が良いでしょう。
住所検索ですぐバーチャルオフィスだと判明する
住所を借りられることがメリットではありますが、バーチャルオフィスは複数の企業が同一住所を利用することができるため、検索した場合他社の情報も出てしまうことが起こりえるうえ、直接会社の住所まで訪ねられた場合もバーチャルオフィスであることが判明してしまいます。
お互いの信頼関係を損なわないために、取引先や金融機関、公的機関へは前もってバーチャルオフィスであることを伝えておくと良いでしょう。
勤務するスペースがとれないこともある
バーチャルオフィスの運営会社によってコワーキングスペースや会議室を利用できますが、前もっての予約が必要であることが多く、状況によっては満室で利用できないケースもあるため、緊急の利用には適さない場合もあることを念頭におきましょう。
バーチャルオフィスはこんな人におすすめ
個人事業主
場所に縛られず自分1人で事業を行うことも可能な個人事業主であれば、初期費用を抑えられるバーチャルオフィスを運用することが向いています。
レンタル登録した住所に請求書や金融機関などからの重要書類が届くことがありますが、バーチャルオフィスには郵送物を自宅住所に転送するサービスがあるため、わざわざ受け取りに出向く必要はありませんし、急な来客があった際には来客対応サービスを使うことも可能です。
これから起業する人
これから起業する人にとっても、物理的にオフィスを借りることに比べ初期費用を大幅に抑えることができる点や、一等地の法人登記をすることで本社の住所を自社のHPや名刺に表記できる点は大きなメリットです。また自宅とオフィスを兼務している場合には自宅の住所を知られずに済むためプライバシーが守られます。
しかし注意すべき点として、行政の認可が必要な業種の場合はバーチャルオフィスを利用しての登記ができず、利用が違法となる可能性があるため、前もって確認した方が良いでしょう。
バーチャルオフィスを利用するときの注意点
サービスが充実した会社を選ぶ
バーチャルオフィスを利用する際、スタートアップのための会社選びは重要な項目です。
・郵便物受け取りや転送サービスはあるか
・電話の転送や受付サービスがあるか
・急な来客があった場合の対応サービスはあるか
・会議室が使えるか
・登記はできるか
上記はバーチャルオフィスでのサービス一例ですが、会社や場所によって内容の有無や違いがありますので事前に確認を取りましょう。
支払い方法を確認する
主な支払い方法は現金、銀行振込、口座振替、クレジットカード決済などが挙げられますが、運営会社によっては銀行振込やクレジットカード決済不可であったり、クレジットカードのみ可能であったりする場合もあります。
アクセスが良いところを選ぶ
都会などの一等地にバーチャルオフィスを構えることのメリットは紹介しましたが、アクセスの良い場所選びも重要です。例として千葉の一等地といえば、東京ディズニーランドが近い新浦安ですが、駅から近いオフィスを選ぶことで名刺の魅力はさらに良い印象となります。
また会社へ訪問予定のある来客にとっても、駅から近い場所であれば負担をかけることはなく、今後会議室を使うことを考えてもアクセスの良い場所を選んだ方が得策です。
登記する場所についてよく知っておく
バーチャルオフィスは住所だけを利用できることがメリットですが、それを悪用し詐欺に使われてしまうケースも存在します。登記するために借りたオフィスが犯罪に使われていた過去がある場合、法人登記ができない可能性もあります。
ネットで評判について調べるだけでなく、安全のため本人確認や審査による厳重なチェックを行なっている会社選びをすると良いでしょう。
まとめ
バーチャルオフィスのメリットはオフィス開設における初期費用を大幅に抑えられることや、一等地の法人登記をすることで社会的な信用性を高くできることなどが挙げられますが、運営会社によって設備やサービス、値段に大きく異なるので、希望条件に合ったものを選んでいきましょう。
行政庁で許認可が必要な業種の場合では、バーチャルオフィスでの登記や利用が認められず違法になることもあるため注意が必要ですが、一般の法人登記であれば問題ありません。
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