​働き方改革の推進のため、さまざまな働き方を導入する企業が増えています。

また、近年は新型コロナウイルスの流行の影響を受けたことで、企業が働き方について改めるきっかけとなりました。働き方改革の推進として企業が考えるものの1つにサテライトオフィスがあります。

当記事ではサテライトオフィスがどういうものなのか、また支店とサテライトオフィスの違い、導入のメリットやデメリットについても詳しく説明します。



サテライトオフィスについて




サテライトオフィスとは何か

サテライトオフィスは、企業の本拠地と離れたところに設置されたオフィスのことです。

サテライトというのは、英語で”衛星”を意味します。惑星の周りに衛星があるのと同じように、企業の中心となる本社の周りに点在する小規模な事務所のようなものをサテライトオフィスと呼びます。

また、遠隔勤務ができるようにと通信設備を整えたオフィスのことでもあり、コロナ禍で活用されているテレワークの一種です。

大手企業はもちろんのこと、中小零細企業もサテライトオフィスに注目し、導入を目指す企業が増えてきています。


支店との違い  

支店というのは、本社とは全く別の場所にあるのが一般的です。 通常、その地域の営業拠点の中心である場所を指します。

支店を営業するには法務局に申請が必要ですが、この際に必要となる商業登記には「支店名」と「住所」の記載が必須です。申請することにより、本社とは別に独自の決裁権や納税義務があるなど、支店独自の裁量をもつことができます。

また、営業所とも異なります。営業所は企業において営業拠点の1つであり、支店のように法務局に登記する義務はないため、決裁権や納税義務はなく、あくまでも企業の拠点の1つです。

サテライトオフィスは、営業所よりもさらに小さい規模で事業を行うオフィスのことです。

その地域の営業の中心である支店、営業の拠点である営業所とは違い、事業範囲も狭いことが多く、リモートで働けるような環境をつくることにも役立っています。


シェアオフィスとの違い

シェアオフィスというのは、オフィスの中に企業がいくつもあり、共有するオフィスのことで、フリーランスの人などが、個人でレンタルすることもできます。

サテライトオフィスは、企業が社員のために働きやすい環境を提供するために導入するものですが、シェアオフィスは企業そのものが営業するため、個人が仕事をするためにあるものなのです。



種類別のサテライトオフィス




サテライトオフィスには「都市型」、「郊外型」、「地方型」の3つの種類があります。立地によって変わるサテライトオフィスの種類について詳しく紹介します。


サテライトオフィスの種類


・都市型

本社とは別の場所かつ都市部に設置するオフィスを「都市型サテライトオフィス」と呼びます。


・郊外型

本社のある都市ではなく、社員が多く住むベッドタウンに設置するオフィスを「郊外型サテライトオフィス」と呼びます。


・地方型

人口の少ない地域に設置するオフィスを「地方型サテライトオフィス」と呼びます。

企業自ら設置することもありますが、自治体の誘致や地方創生によって設置されることも多いです。


それぞれのサテライトオフィスのメリット


・都市型

本社に行き来しやすいところにサテライトオフィスを設けることで、新規事業の拠点としやすく、本社の機能も損なわれません。新しい部署のためにオフィスを作ることも可能です。


・郊外型

郊外のベッドタウンにサテライトオフィスを設けることで、社員の通勤時間の短縮が図れ、育児中の社員や介護をしている社員が仕事を両立しやすい環境が作れます。


・地方型

人口の少ない地方にサテライトオフィスを設けることで、リモートワークを推進することができます。また、災害が発生した際のリスクヘッジとしても役立ちます。


こんな人におすすめ


・都市型

本社と行き来しやすいため、営業や打ち合わせなど、多岐にわたる業務がある社員にも向いています。また、新規部署の新しいスペースを設けることで、活気のあるチーム作りにも役立ちます。


・郊外型

都市部は家賃が高いため、社員はベッドタウンに住む選択をすることも多いです。郊外型サテライトオフィスは、ベッドタウンに住む社員を置くことで通勤時間や交通費を減らし、より効率よく社員に働いてもらうことができます。

また、育児休暇明けの社員や介護をしている社員、持病を抱える社員などに新しい働き方を提案できます。


・地方型

地方に住んでいる人でも採用することが可能であり、即戦力となる人材を採用できるのは大きな強みです。また、リモートワークを併用できる環境を整えることで、より多様な働き方を推進できます。



導入するメリット・デメリット




企業のメリット  

サテライトオフィスを導入する企業側のメリットは大きく分けて2つあります。

1つ目はBCP(事業継続計画)対策です。サテライトオフィスをかまえることで、自然災害やテロ、今回のような新型コロナウイルスの流行などの影響を受けても事業を継続して行うことができます。

また、万が一そういった事態になってしまってもサテライトオフィスを拠点とし、早期復旧を目指すことができます。

2つ目は採用に有利に働くことです。人口の少ない地域に「地方型サテライトオフィス」をかまえることで、地元で働きたい、地方に移住したいという社員の要望を叶えることができます。

また、サテライトオフィスがあることによって、本社勤務ができない新しい人材を確保することもできます。


企業のデメリット

サテライトオフィスを設置するにあたってのデメリットは、社員の管理が難しいことです。責任者は必要ですが、目が届きにくい環境となるため、自己管理が基本です。

業務が遂行されていれば問題ないですが、進捗状況を確認する作業が必要になるなど、業務が完全に減るわけではありません。

また、企業にとって情報漏洩は大問題となるため、セキュリティに関しても厳しく行っていく必要があります。サテライトオフィスやリモートワークでの業務にはしっかりとマニュアルを設け、セキュリティーに対する意識を高めていかなくてはなりません。


働き手のメリット

サテライトオフィスで働く社員には大きく分けて2つのメリットがあります。

1つは通勤時間を短縮できること、また、それに伴う交通費を抑えられることです。

郊外にあるオフィスに通うことで毎日1時間以上の時間を作れるようになることもあり、空いた時間を有効に使うことで、より効率よく働くことができます。

もう1つは、自分の好きな地域で働くことができるということです。

地元に戻らなくてはいけない、結婚して田舎に引っ越すことになったなど、転職を考える場面でもサテライトオフィスがあれば、そのまま継続して働くことができます。


働き手のデメリット

サテライトオフィスは事業内容の範囲が狭くなるため、仕事面での成長機会が減ります。

また、サテライトオフィスは小規模となるため、多くの社員とコミュニケーションを図るのも難しくなります。



サテライトオフィスの導入について




サテライトオフィスの導入を考えている企業は多いですが、上手く活用できるのかどうか不安だという人もいるでしょう。

サテライトオフィスの導入で成功した企業の例を紹介し、総務省が実施している「おためしサテライトオフィス」も併せて紹介します。


サテライトオフィスの導入が成功した企業の例

りそな銀行は、各地に支店店舗を持ちますが、拡大している支店の分、ランニングコストがかかるため、支店の中にある空きスペースをサテライトオフィスとし、有効活用しました。

支店の中にある空きスペースを有効活用することで、コストをかけずに、社員が自ら希望した勤務先で働きやすくなりました。

また、サテライトオフィススペースのインターネット環境を整え、セキュリティを高めるなど、テレワークを可能とする環境にすることで、より仕事のしやすい環境が整いました。

富士通は「有限な時間の中で社員ひとりひとりが価値を創出できること」を目指した働き方改革を推進しています。テレワーク環境を整え、2017年4月より全従業員を対象に自宅、移動中、任意の場所でオフィスと同様の仕事ができるようになりました。


サテライトオフィスの体験ができるプログラム

”地域での新しい働き方や仕事を生み出す”をコンセプトに総務省が実施しているプログラムが「おためしサテライトオフィス」で、働き方改革の推進のため、サテライトオフィスの導入を検討している企業のためのお試しプログラムです。

実際に執務を体験してもらうプログラムで、どういった働き方ができるのか?という部分が明確になります。

また、総務省の選定した団体での執務となるので、安心して体験が可能です。


引用元:総務省「おためしサテライトオフィス」



まとめ

サテライトオフィスの導入は、大きな自然災害や新型コロナウイルスの影響を目の当たりにした日本の多くの企業が注目しています。

また、働き手もリモートワークなどの経験を経て、自由の効く職場を望む声はどんどん高まっていきます。そういった点から見ても、今後、サテライトオフィスを導入する企業は増えていくのではないかと予想されています。

さまざまなことに多種多様性が認められるようになった今、働き方に関しても、大きく変わろうとしている時期なのです。​ 



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