日本は世界各国と比べ、ワークライフバランスが大きく遅れている国です。有給取得率は先進国30ヶ国の中で最も低く、労働環境を早急に改善する必要に迫られています。そこで近年注目を浴びている働き方の一つがワーケーションです。

政府が推進している働き方改革によって、これまでにない働き方が可能となりました。ワーケーションを行うために、まずはその制度を理解することが大切です。今回の記事ではワーケーションを行なう際の費用と経費について詳しく解説していきます。



ワーケーションとは何か  




ワーケーションでは観光地やリゾート地、自然豊かな田舎など、好きな旅行先を決め、休暇を楽しみながらリモートワークで仕事を行うことができます。

テレワークでは自宅を就業場所にする在宅勤務、移動の合間や移動先などで行うモバイルワーク、企業のサテライトオフィスを利用するサテライトオフィス勤務があります。ワーケーションはそこから派生した新しいテレワークスタイルです。行きたい旅行先を自分で決めることが可能です。

リモートワークをする場所は違っていても、今までテレワークの主目的は仕事を行うことに焦点を置いていました。ワーケーションの主目的は仕事にも、休暇にも適用可能で、ここが決定的な違いと言えるでしょう。仕事と休暇を両立することができる新しい働き方であり、ワークライフバランスを改善する上でも重要な役割を担っています。

環境省はワーケーションに補助金を出しており、社会の閉塞感の解消、地域経済の再生などを目標に掲げています。



ワーケーションにかかる費用  




ここからはワーケーションで必要となる費用についての説明をします。


交通費について  

交通費は出発地や旅行先、滞在日数によって費用が大きく変わります。ワーケーションにおいては距離が遠い場所を滞在地に選ぶことが多いため、交通費はある程度かかる傾向にありますが、利用する交通機関によって値段を抑えることが可能です。

電子マネーを利用する際、チャージした領収書のみでは経費として認められない可能性もありますので、履歴を印刷しておきましょう。


宿泊費について  

宿泊先選びはワーケーションにおいて最も重要と言えるでしょう。ホテルや旅館に泊まることが多いですが、予約する時期や宿泊施設によって値段は様々です。ワーケーションを推進している地域によっては長期宿泊割引を実施している宿泊施設もあります。地域によって相場に違いがありますので、旅行先の平均的な相場を調べてみるのもよいでしょう。




参考:おもてなしHR


通信費について  

​​電話やインターネット回線使用料などが含まれます。Wi-Fi環境の整っているホテルや旅館もありますが、セキュリティ面に不安があるため、不正アクセス防止として持ち運びできるルーターを用意した方が良いでしょう。

海外でワーケーションをする場合にはSIMカードを購入するか、空港でWi-Fiをレンタルする必要があります。日本国内で海外のWi-Fiをレンタルすると値段はかなり割高ですが、現地でレンタルをすればその分節約できます。


食費について  

  滞在地によって物価にも多少の違いがありますが、観光地付近の飲食店は少々割高です。外食ばかりを続けてしまうと高額な費用になってしまう可能性があります。電子レンジや冷蔵庫、調理場などのキッチン設備のある環境であれば自炊で食費を抑えることができます。


観光費について  

滞在地でレジャーを楽しむためにかかる費用で、観光スポットによって入場料やアトラクション利用料などが必要です。自然豊かな田舎をワーケーション滞在地に選んだ場合は、観光費は少なくなる傾向にあります。


その他雑費について  

仕事で利用するコワーキングスペースなどの施設利用料や滞在地での買い物など、他の勘定科目に該当しない費用のことです。

雑費は消耗品費と混同されやすいため注意が必要です。他の勘定科目に該当しない少額で一時的な費用を雑費にあてましょう。



経費とは




ここで経費について説明していきます。

経費とは事業が利益を得るために使用した費用のことで、支出した費用を経費として計上することで節税ができます。しかし全ての費用に対して経費にできるわけではありませんので、前もって何が経費となるか、ならないかを知っておきましょう。

経費で落とすことが可能なものであれば、税金を抑えることができ、経費で落とせない場合は、税金を抑えることには繋がりません。

間違った使い方をしないために、正しく理解していきましょう。



ワーケーションの費用は経費にできるか  

ワーケーションにおいて利用した金額すべてを経費として落とせる訳ではありません。各勘定科目の費用について経費と認められるかどうかは、各会社や法人によって基準が違います。実施されて間もない新しい働き方で国税庁からの見解はまだありませんが、今後整備が行われていく中で一定の水準が求められるようになることが予想されます。


交通費は経費にできるか  

休暇が主目的のワーケーションであれば、交通費は経費と認められないケースがほとんどです。仕事が主目的であれば業務上必要であると判断されるためテレワークと同様に経費として計上することができる可能性はあります。

ワーケーションを海外で行う場合では、業務の従事割合が90%以上なら全額経費として使え、50%以上90%未満であれば日数で按分することになります。


宿泊費は経費にできるか  

交通費と同様に、休暇が目的のワーケーションであれば経費として使える可能性は少ないでしょう。業務上必要と判断される明確な理由がある場合には経費として計上できる可能性はありますが、会社側が経費として宿泊費を負担してくれるケースは現状ごく僅かです。


通信費は経費にできるか  

Wi-Fiの利用料などの各種通信費は、遠隔で仕事を行うためにどこでも必要となるため経費として認められる可能性が高いです。しかし、仕事用とプライベート用の両方で同じ機器を使っている場合には、業務時間をベースとして一部負担となる可能性があります。


食費は経費にできるか  

個人的な食事であれば経費には該当しませんが、取引先との打ち合わせや顧客との面談であれば経費として認められるでしょう。その際勘定科目は交際費として計上します。プライベートでの会食や家族との食事は経費にあてることはできません。


観光費は経費にできるか  

観光については仕事と関係性がなく、休暇として楽しむケースがほとんどであるため経費として扱われる可能性は非常に低いです。取材など正当な理由があれば経費として認められるでしょう。


雑費は経費にできるか  

コワーキングスペースなど、仕事を行うための施設を使うのであれば必要経費として認められるケースが多いです。業務に関係のない滞在地での買い物については、経費として扱うことはできません。

雑費は経費の5~10%が目安と言われており、雑費が高額になると税務署の調査理由となることもありますので注意しましょう。


会社員の人に向けて  

会社員である場合は、会社側の指示によって業務を行うために必要な費用であれば経費として認められます。個人的な休暇のためだけに使う費用については経費として認められません。

交通費に関して、ワーケーションは個人的な休暇として使う割合が多くなるため経費として認めていない会社が多く、自己負担となるケースがほとんどです。宿泊費についても同様で、食事代に関しても取引先との打ち合わせなどでなければ認められません。会社によって規定の違いがあるので、どこまで経費が降りるか事前に調べた上でプランを考えることが望ましいです。


フリーランス、個人事業主の人に向けて  

経費を考える上で、ワーケーションを行う際に普段の就業場所を離れて仕事をする必然性があるでしょうか?この点に注目する必要があります。理由に正当性がなければ、交通費や宿泊費などを経費として扱うことは難しくなるでしょう。

現地で取材をする、セミナーに参加するなどといった理由であれば経費として計上することが可能です。時間や場所を選ばず自ら考え仕事を行うことができるフリーランス、個人事業主はワーケーションに最も適した働き方といえるでしょう。



まとめ  


今回はワーケーションにかかる費用と経費が中心の内容でした。  ワーケーションを実施するには様々な費用が必要になるため、計画性をもって旅行先や宿泊地、交通手段などのプランを決めていきましょう。

会社員か、フリーランス、個人事業主、あるいは滞在する目的などによって計上できる経費に違いが出てきます。ワーケーション実施に伴う経費項目に関してはまだ未知である部分が多く、これから少しずつ整備が進んでいくことが予想されます。



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