古民家再生(リフォーム)は現在の空き家問題を解決する重要な役目を背負っており、国や各企業が一丸となって取り組んでいます。様々な補助金が用意されているため、費用を抑えて古民家を購入しリフォームを行える利点がありますが、一般には浸透していない面も多い実状があります。記事内では古民家再生における現状や補助金制度、リフォームの種類や費用などについて解説します。古民家再生の様々な事例を知ることで満足のいく活用ができるでしょう。



古民家再生における現状とは




近年の古民家再生の市場はどのような状況か見ていきましょう。


リフォーム市場の現状と評判

2016年まで増加傾向だったリフォーム市場は横ばいで推移しており、年々増している空き家の総数と比較して需要が低い現状です。リフォームを行う中心層は50代〜60代といわれており、その世帯数は2030年にはおよそ140万世帯増加すると見込まれていることから将来的にはリフォーム業界はさらに拡大すると予想されています。

リフォームについては業者選びが重要で、古民家のリフォーム実績のある工務店はそれほど多くありません。古民家リフォームを専門としている工務店で依頼しなかったために満足いかない結果となったケースもあるため、業者選びは慎重に行うと良いでしょう。


自治体からの補助金制度がある

各補助金制度を利用するにはリフォーム着工前に申請をする必要があります。


介護・バリアフリー

階段やトイレに手すりをつけるなど、建物をバリアフリー化させた介護に必要なリフォームを行うことで受けられる補助金制度です。要支援・要介護度に関わらず補助金の対象となる可能性がありますが、介護保険と併用できない場合もあるため事前に自治体に確認をする必要があります。


省エネ・エコ

省エネや断熱に関する性能を高めるリフォーム・リノベーションを行い、条件を満たすことで補助金を受けられます。


耐震補強・改修

耐震診断や既存住宅の性能向上など、補強工事に関すリフォーム・リノベーションを行うことで補助金を受けられます。



古民家再生の種類




一般的なリフォーム

一般的に古民家の再生リフォームでは梁や柱といった建物の構造体は残し、水回りの設備や外壁、床の補修を中心とした工事を行います。このリフォームでは古民家の良さを残していくことが大切です。


半解体再生リフォーム

半解体再生リフォームは壁や床・屋根などを外して、柱と梁の組み手のズレなど建物の不具合を修正・改修します。

工事の過程で傷んでいる土台が見つかった場合は、コンクリートの基礎を造り土台全てを替えることにより建物が長寿化し、良い結果へと繋がるでしょう。古い箇所や痛みがある部分を最新の素材を使って改修することで、長期的な目線で古民家を活用できます。


全解体再生リフォーム

建物を解体し、柱や梁などの建築材を洗って新しいものに交換するリフォームのことで、全てを解体するため大規模な工事となります。強度が落ちている部位がある場合は新材を使った補強しながらリフォームを行います。

新材で補強することで古民家の寿命を伸ばせることが大きな利点ですが、耐震基準を満たす必要もあるため、理解した上でリフォーム会社に依頼しましょう。


移築再生リフォーム

古民家を他の場所に移す移住再生リフォームには3つの方法があります。


①「完全移築リフォーム」

古民家の部材のほとんどを活用して再生する方法です。


②「部分移築リフォーム」

建築する内容によって、古民家の部材を選択し移築する方法。


③「構造体移築リフォーム」

古民家の太く強度があり、趣きもある柱・梁だけを移築する方法。


移築再生リフォームは、古民家を解体後、他の地域に運ぶ過程があるため他のリフォームよりも時間や費用がかかりますが、自分の気に入った建物を好きな場所で利用できます。一般的に入手可能な材料ばかりであれば、この方法をとる必要はないでしょう。


古材リサイクルのリフォーム

古材センターなどで販売されている民家の部材を使用したリフォーム方法で、一般の住宅やマンションを古民家風に魅せられます。古民家でない建物をレトロな雰囲気へと変更するため、壁や床、天井を木目調にしたり、色合いや家具などを昔ながらの物を利用したり、前もって計画すると良いでしょう。



物件を自分でリフォームする




DIYによって自分の手でリフォームする方法もあります。


DIYでリフォームを行う事例

DIYでのリフォームは誰でもできる簡単な方法から難易度の高いものまで様々ですが、その一例を紹介します。


アクセサリーやパーツを変更する

100円ショップやホームセンターなどで気に入った柄や形のアイテムを購入し、手軽に部屋の雰囲気を変えられます。ハンガーや引き出し用の取っ手など、室内の一部分を変更するだけでも違いを感じられるでしょう。


照明器具を変更する

レトロタイプの電球に変えることで部屋全体の雰囲気が変わります。値段は1000円以内の手頃なものから高級感あるビンテージ照明など、演出したい用途によって使い分けると良いです。


壁紙の張り替えをする

壁に傷みが目につく場合はリフォーム会社に依頼して張り替えてもらうことが望ましいですが、シール状になった安価な壁紙を使うことで自分の手で簡単に張り替えできます。種類も豊富で値段も手頃なため、簡単に行えます。


フローリングの張り替えをする

壁紙同様に床を張り替えることで部屋の雰囲気は大きく変わります。既存の床板をはがしてから新たに張る方法と、はがさず上から重ね張りをする方法の2つがありますが、表面の材質や機能を確認した上で作業を進める必要があります。


DIYの利点と注意点

自分の手でDIYを行う利点は材料費や人件費などを抑えられる点と、好きなデザインを自らの手で行えることです。注意点として業者に依頼することに比べ時間がかかりすぎる可能性があることや、正しく工事ができなかった場合には不具合が生じ、再度自分の手でリフォームするか、リフォーム会社に依頼することが起こりえることです。

DIYは自分の力量に見合った範囲を選択することが望ましいでしょう。



リフォームに必要な予算は




古民家リフォームの費用規模や方法によって変動し、よくある失敗事例として当初の予定より予算オーバーしてしまう点があります。ここからはリフォームにかかるおおよその予算について紹介します。


耐震工事にかかる費用

古民家は現在の耐震基準をクリアしていない物件が多く耐震工事をしなければならないケースがほとんどで、基準を満たしていた場合でも老朽化などによって新たに工事をする必要があります。柱・壁・基礎の部分を工事し、約50万円からが相場です。


水回りの取替えにかかる費用

リフォームをしていない古民家に住む場合では、水回りの取り替えが必要です。キッチンであれば約50万円、トイレは約10万円、お風呂場は50万円程度が相場です。


断熱性を高めるためにかかる費用

古民家の利点は夏場に風通しが良く涼しい点がありますが、冬場は厳しい寒さに耐える必要があります。過ごしやすい環境にするため、古民家に住む際には断熱材を取り入れたリフォームを取り入れることが望ましいです。

費用の相場は約50万円からですが、規模によって費用が大きく変動します。


バリアフリー化にかかる費用

古民家では段差や高い階段などがあることも多く、バリアフリーを考えたリフォームを検討する必要があります。

階段に手すりを設置したり、傾斜の少ない階段に替えたりと、建物や敷地の状況に合わせたリフォームが必要です。費用相場は約20万円からですが、他と同様に規模や内容によって費用が変動します。



組織や企業の取り組み・プロジェクトの紹介



古民家再生のため、実際にどのような取り組みが行われているのか一例を紹介します。


全国古民家再生協会

全国古民家再生協会は内閣府から認可されている一般財団法人職業技能振興会の古民家鑑定士資格を有する優良リフォーム事業者にて構成される全国組織です。

長期耐用性を持った構法や資材の活用と住む人の意識の改革を重要視しており、公益社団法人全国シルバー人材センター事業協会と提携し、登録されている人を対象にした木造住宅簡易鑑定士の講習をしており、参加された人は鑑定士としての活動をしています。

古民家の所有者に対し相談受付などもしており、リフォームや活用方法など様々なことを相談できます。


参考:一般社団法人全国古民家再生協会より


岩手ハウスサービス

岩手ハウスサービスでは昔ながらの住宅を活かすための「断熱リフォーム」や「古民家再生」の活動をしています。

断熱と同時に不可欠なものが気密です。厚い断熱を施しても、隙間だらけでは配管や開口部など常に外からの風が入ってきます。外張断熱工法、基礎断熱工法などをはじめとした様々な技術を駆使することによって高断熱・高気密の快適な住宅を造っています。

岩手ハウスサービスでは、築100年以上の古民家を解体し、別の土地にその古材を再利用した移築再生リフォームを行なった例もあります。


参考:断熱リフォーム・古民家再生|岩手ハウスサービスより



まとめ

古民家再生については国や自治体が主体となって取り組んでいることも踏まえ更なる拡大が予想されていますが、満足のいく結果を得るためには補助金制度やリフォームの種類など様々な知識が必要です。予算からリフォームに関しての計画を立て、物件選びやリフォーム会社選択に失敗しなければ良い結果へと繋がる可能性は高いでしょう。また自分にできる範囲のことはDIYを駆使することによって節約に繋がります。また多くの企業で相談受付を行っているため、古民家について不明な点があれば相談をすると良いでしょう。



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