空き家問題に取り組む行政が増えている中、新築信仰の強い日本では中古住宅が多いにも関わらず、改善に時間がかかっています。少子高齢化により将来的にも空き家が増えていくものと予想されていますが、なぜ空き家が増えると問題なのか、どのような対策が行われているのかなどを知る必要があるでしょう。

空き家問題は個人が活用することで解決できる点も多く、活用方法によっては多くの利点が生まれます。利点も含めた空き家問題の様々な側面について解説します。



空き家問題の現状と対策とは




近年における空き家問題はどのような状況なのか見ていきましょう。


2021年までの利用状況

国土交通省住宅局が令和2年12月に発表した令和元年空き家所有者実態調査報告書によると、建物に人が住まなくなって空き家となってからの期間は「20年以上」が20.9%と最も高く、建築時期別にみた場合は、建築時期が古いものほど人が住まなくなってからの期間が総じて長くなっています。

また空き家の状態について、腐朽・破損があるものは合わせて54.8%、腐朽・破損がないものは39.2%となっており、半数以上の空き家に何らかの不具合が発生していることが伺えます。


参考:令和元年空き家所有者実態調査 報告書より


政府・行政の取り組み

空き家対策に関する政府・行政の取り組みを紹介します。


空き家対策特別措置法

空き家対策特別措置法によって空き家を管理しない所有者に対して、市町村が助言、指導、勧告、命令などの行政指導を行います。特定空家に指定された状況で改善の勧告を受けると、固定資産税の軽減措置が受けられずに従来の税金の6倍を支払うことになります。

勧告にも従わなかった場合にはもっとも重い命令が下され、その際50万円以下の罰金が科され、さらに建物などが解体される可能性もあります。


3,000万円特別控除

通常であれば不動産を売った際に発生する売却益には譲渡所得税がかかってきますが、条件を満たすことで3,000万円の特別控除を受けられます。3,000万円以内であれば全額控除され、それを超える金額であれば3,000万円まで控除されますが、下記の6つの条件を満たすことが必要です。


①自分が住んでいる家屋を売るか借地権を売ること。以前に住んでいた家屋や敷地の場合には、住まなくなった日から3年後の年の12月31日までに売る。


②売った年の前年及び前々年に3,000万円の特別控除やマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。


③売った年、その前年及び前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。


④売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。


⑤災害によって損壊した建物の場合は、住まなくなった日から3年後の年の12月31日までに売ること


⑥物件の売主、買主が、親子や夫婦、法人など特別な関係でないこと。


詳細は国税庁のホームページに載っています。

参考:マイホームを売ったときの特例 国税庁より



なぜ空き家が増えると問題なのか




そもそも空き家が増えることに何の問題があるのかと疑問がある人も多いのではないでしょうか。空き家が社会問題となっている理由を紹介します。


建物の倒壊・害虫の発生などの問題点が増えていく

空き家となることで人の手が行き渡らなくなり、定期的な掃除や換気、修繕などができなるなることで建物の劣化が早まります。シロアリをはじめとした害虫が発生した際に退治することができず、建物は損傷しいつかは倒壊するリスクが付きまといます。ある日突然に崩落するため近隣住民にとって不安が大きく、直ちに対策が必要にもかかわらず所有者以外手が出せないことなどが問題となっています。


犯罪が起こるリスクがつきまとう

空き家が増えることによって、家具や備品の盗難や、不法侵入者などの犯罪が起こるリスクが高まることや、詐欺に利用されてしまうこともあります。庭の草木は荒れてしまい、室内は常に薄暗く人の出入りもない空き家には地元の人も近づくことは少ないでしょう。人目につかなくなる場所として詐欺グループが空き家を利用するケースもあるため、早急に解決することが必要とされています。


資産価値が大きく下がる

空き家は人が済まなくなると劣化が早まることや、管理が行き届かないことなどで資産価値は大きく目減りします。

また地域の空き家が増えることによって需要と供給のバランスが崩れ、区域全体にある物件全体の資産価値が低下するリスクもあります。



個人で活用することで解決できる




参考:「空き家問題」はどうやって解決すべき?空き家活用の未来 未来創造WEBマガジンより

一般社団法人全国建物診断サービスより


空き家問題は所有している本人が活用することで解決可能です。


更地にして土地活用をする

解体には費用がかかってしまい、固定資産税と都市計画税は住宅用地の特例から外れるため適用外となりますが、土地を何らかの形にして活用する方法もあります。

駐車場にしたり、借地として人に貸したり、計画的に活用方法を検討することが必要です。


リフォームし賃貸として活用する

老朽化した空き家ではニーズは少なく賃貸として利用したい人を見つけることも難しいですが、リフォームをすることによって新たに価値が見出されます。賃貸として活用することで毎月の負債が収益と変わり、金銭的な負担や心配も無くなります。


空き家を売却する

空き家の状態が長く続くほど建物は老朽化し、資産価値も大きく下がります。負の遺産となってしまっては買い手がつかないことはもちろん、リフォームにも多額の費用が必要となるため、どこかで見切りをつけて売却することも検討する必要もあるでしょう。需要の高い立地や建物であれば想定以上の値段で売却できることも考えられます。


ビジネスを行う場所として使う

立地や地域性などを考慮する必要はありますが、カフェにしたり、コワーキングスペースにしたり、空き家をリノベーションすることでビジネスとして有効利用できます。

働き方改革によって様々な場所で仕事をすることが可能となったため、空き家を活用したビジネスは非常に相性が良いといえるでしょう。



空き家を探す主な方法




ここからは空き家を探す方法の一部を紹介します。


不動産サイトから情報を得る

インターネット上にある不動産サイトを利用することで物件を見つけられます。検索対象を中古物件のみに絞ることで手早く情報を得られますが、取り扱っている物件に大きな違いがあるため、いくつかのサイトを見比べる必要があります。建物の外観や内観写真がしっかり記載されているサイトを選ぶと良いでしょう。


空き家バンクを利用する

20年以上前から続いている空き家バンクは自治体や委託された団体がホームページ上などで空き家の物件情報を提供する国が始めた制度です。

不動産会社との大きな違いは行政が行なっていることと、直接取引の際に仲介手数料が不要となる点です。間接的な取引であれば仲介手数料がかかりますが、問題が発生する可能性は少なく宅建業者を通さない直接取引ではトラブルも多いため一長一短があります。

空き家バンクを利用することは様々な補助金や助成金が受け取れる点が大きなメリットです。


自分で探し所有者と直接交渉する

住みたい地域を周りながら自分で空き家を探す方法も良いでしょう。売却用の物件として看板が立っている場合もあり、大家と直接売買をすることで仲介手数料もいらず、交渉によっては安価で購入できる可能性もあります。自分で探す以外にも知り合いから空き家に関する情報を得るという選択肢もありますが、どちらにしても直接取引で契約する際は法律面を知らなければならないため、不動産売買に関するノウハウがなければ難しいでしょう。



理想の空き家探しのポイント




空き家数は多いですが、その値段や条件は様々なので前もってポイントを押さえると良いでしょう。


あらかじめ予算を決めておく

空き家を探す際はあらかじめ予算を決めておくことで、リフォーム費用も含め無理なく希望に沿った物件を探せます。予算を決めていなければ予想以上に支出が多くなってしまい、金銭的な負担が増えることで泣く泣く物件を手放してしまうか、満足にリフォームできずに老朽化したままの建物を使うことになることも考えられます。


建物や設備の修繕が必要な場所を確認する

修繕が必要な場所を確認することでリフォームにかかるおおよその費用や工事日数が予測できます。空き家を購入後トラブルとなるケースの多くが、物件に何らかの大きな不具合が見つかったという点です。全てが100点の空き家を探すことは難しいですが、自分が許容できる範囲の物件を選ぶことが重要です。


助成金があるか確認をする

補助金・助成金は自治体によって種類や条件も違います。助成金目当てのみで物件を選ぶことは好ましくないですが、希望物件の候補がいくつか見つかった場合には助成金があるか調べた上で検討していくのも良いでしょう。


成功事例・失敗事例を参考にする

空き家を活用したビジネスは成功の報告もあれば失敗の報告も多いです。それぞれの事例にはいくつかの共通点があるため、先駆者たちの声を参考に空き家選びに活かせます。企業の場合ではホームページで情報が記載されており、個人ではSNSやブログなどで空き家の情報発信をしている人が目立っています。



まとめ

空き家問題についての解説でした。空き家問題を解決するため、国や行政が様々な企業や団体と連携し対策を進めています。空き家対策特別措置法によって少しずつ改善の兆しは見られていますが、実際にはまだ多くの改善が必要な状況です。

空き家の多くが腐朽・破損しているため、購入の際にはリフォームありきの考えを持つと良いでしょう。内見を行い、不具合が見られた場合には自分が許容できる範囲のものか、そうでないか検討することが必要です。



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