「鎌倉は地元愛のある方が多いんです。」そう語るのは鎌倉に住む現在高校3年生の渡邉すみれさん。学生団体Cominiaを立ち上げ、イベントや対談など鎌倉という土地で精力的に活動しています。

年末に迫る12月、鎌倉材木座にある古民家 琥珀で行われた学生団体Cominia主催の初イベント、「古民家イベント祭り」に参加してきました。



古民家「琥珀」は鎌倉駅から歩いて20分ほど、大町を抜け材木座海岸に出てすぐ、海沿いの住宅街にあります。当日の現場は古民家独特の落ち着いた雰囲気がある中で、イベントの"ワクワク感"が建物から飛び出してくるほど、学生の活気に溢れた空間になっていました。


初めまして!と元気よく挨拶をしてくれたすみれさん。 

たたきで靴を脱ぎ、古民家の共有スペースに案内されます。


イベントでは4つのワークショップが企画されていました。


・江戸の時代背景を考えながらビジネスをするワークショップ

・ビーチクリーンで拾ったゴミをスノードームにする体験

・規格外のみかんを使ったアロマ作り&対話と瞑想

・学生団体を中心とした鎌倉の学生と、鎌倉で事業をしている事業主とで考える「鎌倉の観光」


どの企画も、体験しながら地域を考えることができる内容で面白そうです。

今回、「江戸の時代背景を考えながらビジネスをするワークショップ」に参加してきました。


まず最初に江戸時代のマーケティング事情の解説があり、ワークショップの概要につながっていきます。解説を行なってくれたのは江戸文化に詳しいという、現在カナダに留学中の西村さん。



Cominiaの活動へ強く思いを寄せる西村さんはカナダからリモートでのイベント参加です。



実際の「古銭」を使用して自身の財産を設定し、仮想で土地を購入。得た土地や環境に合った商売を考えていくというワークショップ。現在の鎌倉の置き換えた時に、江戸のマーケティングはどう生きるのか?というものです。3チームで行ないましたが、チーム各々全く違う商売の提案となる面白い結果となりました。



ワークショップでは初めましての方と一緒にプランを考え、意見を交わします。


さて、このイベントは学生団体Cominiaが主催する初のイベントであり、新しい試みでした。学生団体Cominiaとは一体どの様な団体なのか?イベントを通して伝えたい事は一体何なのか?

代表を務める渡邉すみれさんにお話しを伺いました。



始まりは「発信できない環境」と「自分が出せない状況」

みんな明るく積極的な学生メンバーたち。


「学校の中で自由に発信したり表現することができない環境や、周りの目を気にして自分が出せないという状況を「校則」を通して感じていました。」


元々、主権者教育や民主主義に興味があったというすみれさん。気が付くと「学校の校則」というものに目を向けていたそうです。この問題を解決したい!と思ったすみれさんは生徒会長に立候補。

しかし現実は思った様に話が進みません。先生たちとうまくコミュニケーションが取れず、変革は頓挫に近い状況になってしまいます。


「ルールだから。」

この言葉がどうにも頭から離れないすみれさん。学生が学ぶための学校なのに「発信」ができないことに疑問を感じ始めます。


「学校で叶わないなら、外に作ろう。大好きな鎌倉で!」

動き出したすみれさんは、どんどん周りを巻き込んでいきます。



鎌倉に住む人々と生み出す、新たな「発信の場所」

古民家で何かを始めたいと思うようになって、まずは同級生の中里さんに声をかけました。

「古民家の世界観が好きな中里はすぐに賛同してくれました。その後、団体のサブマネージャーとして西村に入ってもらおうと、カナダにいる彼に声をかけたんです。」

活動計画を話すと、すみれさんが思っていた以上にコミットしてくれたという西村さん。早々に、3人で団体を立ち上げよう!という話が決まりました。


また、偶然中里さんの知り合いに、鎌倉農泊協議会の方がいらしたことで話が急速に進んでいきます。

「琥珀っていう古民家があるから、イベントやってみる?って農泊協議会の方が言ってくださったんです。その日のうちにイベントの開催が決まりました。(笑)」


鎌倉農泊協議会は、地元の鎌倉野菜や海産物などを活用したイベントを行う他、古民家再生宿で鎌倉野菜農園体験や海のアクティビティなどの提案・活動をしています。発信の場所を学生に提供し、一緒に地域活性の活動ができるなんて素敵ですね。


Cominia初となるイベントには、立ち上げの3人以外にも多くのメンバーが運営として参加していました。

「実はイベント当日に初めて会ったメンバーも中にはいます。イベントが決まってからメンバーを集めたんです。メンバー各々がいろんな思いがあって集まっています。学生と学生・学生と地域・学生起業家など、学生主体でコミュニティの場所を作ることが面白いので、対象はなんでも良いんです。」


教育で感じた疑問があったすみれさん、

動画クリエイターで古民家の世界観が好きな中里さん、

日本古来の江戸文化が好きで、起業やコミュニティ作りに興味がある西村さん、

Cominiaメンバーの思いは、一つではありません。

他にも、難民支援やジェンダー平等、ボランティア団体の立ち上げや、ビーチクリーンなど仲間の興味や思いがまとまって、イベントにつながっていったといいます。



オンラインもオフラインも

近く、鎌倉に空き家を購入予定の方から、古民家の運営を一任されるかもしれないというCominia。コワーキングスペースやイベントスペース、地域の交流の場所を作るチャンスが早くも訪れています。4月を目処にクラウドファンディングを行う予定もあるそうです。


「ここ数年はコロナの影響もあり、日本全国や海外に友達が増えました。コンゴで日本語を学んでいる友達とは所属する別団体のSNSで繋がり、私も英語を学びたい事もあって毎日の様に連絡を取り合っています。お互いシンガポールやフィリピンにも友達がいたりもするんです。」


古民家を持てる様になったら、オフラインで古民家に集まる以外にもオンラインでの活動も考えているとのこと。オンラインだけに限るとリアルなものが失われ、オフラインだけだと会えなかった人と会える可能性がなくなってしまう。両方のいいとこ取りをして、色々な人と関わりながら活動の場所を作って行きたいと話します。


お話を伺う中で感じたのは「学生の発信の場を作っていきたい」という強い気持ち。みんなの発信のプラットフォームとなる古民家を、場所を作っていきたい!という思いを強く感じました。



Cominiaが考える地域コミュニティの形と地域活性化

海も近く、自然との距離も近い環境の鎌倉


観光、豊富な食材、地元愛、学生が多いなど様々な地域活性コンテンツがそろい踏みの鎌倉。全国には地域コミュニティの薄い地域が多くあると言われており、鎌倉の様に主要なコンテンツが揃わない地域が大半を占めます。しかし、鎌倉のパターンを「型」として当てはめることで他の県や地域でもコミュニティを作るきっかけになるのではないか?とすみれさんは考えます。


「メンバーの橋本と山梨にある160年の古民家へ行ってみたり、県外の古民家とも繋がるなどの活動もしています。その山梨の古民家は、餅つきやサマーキャンプの時にだけ人が集まる古民家なんです。鎌倉は観光やアクティビティがあるので古民家以外にもその土地を訪れる理由が見つかりますが、山梨の山の中に定期的に集まる古民家があるっていうことが、面白いなって思ったんです。」


観光産業がなくても、人が集まる山奥の古民家。鎌倉の「型」があるからこそ、その良さに気付き、見えてくる面白さがある。地域創生には様々な形があり、各々の答えがあることが自ずと見えてきます。



「余白」を楽しむことができる、「つなぐ場」作り

Cominiaのメンバーには、渡邉すみれさん、中里さん、西村さんの他にも、防災士の橋本さんの様に「やりたいこと」を実行しているメンバーがたくさんいます。


「活動していく中で、ワクワクしていることが、大事だなと思っているんです。私だけじゃなくて他のメンバーも楽しめる、みんなが学生でありながらもタメになる経験ができてる!って思える環境作りをしていきたいです。」


学生が「やりたいこと」と地域と掛け合わせることで、「つなぐ場」として機能していきたいと考えるCominia。防災士と地元をつないで民家の防災に取り組んだり、ボランティア活動の拠点にするなど可能性は無限だといいます。


実際に伺ったイベントには学生さんたちだけでなく、地域に根差した飲食店の方々が出店をされていました。地域に根差した活動をされている方にお話しを伺いたい私たちが、出店されていた「鎌倉龍神コーラ」さんと知ることができたのもこのイベントのおかげです。

Cominiaはすでに「つなぐ場」を提供し始めています。



出店されていた「鎌倉龍神コーラ」さん。ホットコーラとても美味しかったです。


都内から1時間ほどの距離にある為、二拠点生活やワーケーションなど、観光以外の利用も増えることが予想されている鎌倉。それに伴い、シェアハウスの需要が高まる事を視野に入れ、Cominiaでは考えていることがあるそうです。


「古民家シェアハウスやコワーキングスペースを作ることで、県外の方が私たちの様な活動をしている学生と出会ったり、地元愛に溢れる地域の人たちとも交流ができる空間を作りたい。イベント等を手段として、“余白”を楽しむ場所を作っていきたいと思っています。」



「今日、Cominia行こうよ!」


「理想論で言えば、『今日、Cominia行こうよ!』それくらい身近なものにしていきたいです。そして学校現場に、落とし込んでいきたい。"前向きな意味で"心を癒す場所になりたいです。」




様々な社会問題の多い現代で、色々な環境の子供や大人、高齢者が存在します。地域コミュニティの薄くなりがちな昨今、そんな人々に常に受け入れられる様な、そしてそこで交流が生まれる様な明るい場所作りを目指したいと、すみれさんは話します。


まずは活動拠点が欲しいというCominia。第一歩になる古民家の運営も近く訪れそうです。持ち前の明るさで多くの人を巻き込んでいくすみれさんと、発信したい多くのメンバーの強さ。

Cominiaはこれから多くの地域や人々を巻き込む学生団体になっていきそうです。



■ 学生団体Cominia (コミニア )


ホームページ

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Instagram

@cominia103



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