​毎日の食卓には様々な野菜や果物が並び、その背後には農家さんたちによる日々の努力があります。農業ボランティアを行うことで自然の恵みや非日常を感じられ、農作物についての理解も広がるでしょう。農作物の栽培や収穫などに必要な、多くのアドバイスを受けながら実践できる農業ボランティアには多くの利点があります。農家さんによって扱っている農作物の内容に違いがあったり、短期間・長期間でのボランティア方法があったりするので、無理なく自分の環境や目的に合わせて行うことが重要です。



農業ボランティアの取り組み



農業ボランティアは援農ボランティアとも言われており、都市住民と農村住民の交流を深めていくことが目的の一つです。どのような取り組みが行われているか見ていきましょう。


日常ではできない体験ができる

一般的な会社へ勤めている人や学生であれば農業の名前や役割は知っていたとしても、実際どのように栽培が行われているのかまでは認知されていない現状があります。農業ボランテイアをすることは非日常に身を置くことになり、そこで得られる体験は土をいじる抵抗もあれば、農作物を育てる喜びや感動もあるでしょう。


農業ボランティアで人手不足問題を解消できる

農林水産省が発表した令和2年新規就農者調査結果によると新規就農者は5万3740人で前年に比べ3.8%減少しています。農業人口の高齢化や後継者問題などが大きな原因ですが、農業ボランティアを体験し農業に興味を持つ人が増えることで人手不足を解消する一つの解決策となることが期待されています。


農業ボランティアで専門技術を学べる

ベテランの農家さんに専門知識や技術を教わることは経験を通した学びです。土作り・種まき・選定・栽培・収穫といった一連の流れにはそれぞれの農作物に適した重要な要素があり、農業ボランティアをすることによって詳しく指導してもらえます。培った学びは家庭菜園でも使え、働く期間が終わった後も経験が役立つはずです。



農業ボランティアとして働く期間



繁忙期などに数週間以上行う農業ボランティア

数週間から数ヶ月単位で行うこともあるスタイルで、宿泊場所や食事が提供されるため、住み込みで働くことが多いです。活動期間が長いため、プロの技術や知識を多く取り込みたい人に向いています。お互いの信頼関係も構築され農家さんから様々なアドバイスを受けることが期待できるでしょう。特に、将来的に農業を仕事にしたい人や詳しく学びたい目的がある人に向いています。


イベント時などに行う農業ボランティア

イベント時に行われる農業ボランティアは田植え体験や収穫体験といった内容が多く、料金がかかる場合もあります。単発で開催されるイベントが多く無理なく行える利点があり、農業がどんなものか体験してみたい人や、楽しく体験をしたい人にも向いています。

一度単発のイベントで農業を体験し、興味を持ってから数週間働く農業ボランティアへ参加を検討するのも良いでしょう。



将来的に就農した際は有利になる



農業ボランティアを行うことは将来的に就農した際は有利な環境になります。


興味のある分野の生産・収穫体験ができる

畑作・稲作・果樹など自分が興味のある分野の農業ボランティアに身を置くことで、種類に特化した専門性を高められます。自分の作りたいものを育て形や味も気にする必要のない家庭菜園と違い、本業で栽培を行う場合に失敗は許されません。事前に生産・収穫体験の経験を積んでいることは短期的、長期的に見た場合でも有利な状況といえるでしょう。


農業のプロからアドバイスをもらえる

農業ボランティアでは何年、何十年も経験のある農家のプロの指導を受けます。何日も教わっていく中で良好な人間関係を築くことができれば農業ボランティアとしての期間が過ぎた後でも様々なアドバイスを受けることもできるでしょう。

就農した際に培った経験が発揮され、1からスタートする同期と比べ、専門性を持った人の元で経験をした状況で開始できることは大きなアドバンテージです。


様々な農家さんと関係を構築できる

何年も農業をしている農家さんには様々な横の繋がりがあり、一定期間の農業ボランティアを行うことで他の専門性を持つ農家さんを紹介してもらえることも多いでしょう。

隣の畑を所有している人や、同じ作物を栽培している人など、様々な人たちと関係を構築することで更なる知識やアドバイスをもらえることも期待できます。



大学生にも農業ボランティアはおすすめ



大学生はボランティアの有無が重要となるケースも増えます。


長期の休みを利用して住み込みでも行える

夏休みなど長期間の休みを利用することで住み込みで数週間の農業ボランティアを行えます。単発でも十分な学びはあり、長期間の実践をすることはさらに大きな財産となり知識や経験と共に自信にも繋がるでしょう。住み込みのための宿泊地や食事に関して無料で提供してくれる場所が多く、金銭的な負担は交通費や娯楽費などが主となるため、必要以上にお金の心配をすることはありません。


体験することで農業が自分に合うか判断できる

農業に興味を持ったとしても、自分に合うかどうかは実際に体験するまでわかりません。人によっては農業ボランティアをした結果、農業の道を諦めるという可能性も考えられるでしょう。それでも就農する前に自分に合うか合わないか試すことは重要で、学生時代に農業経験をすることで継続できるか否か判断できる材料になります。


農業ボランティア経験は就職活動にも役立つ

近年では就職活動においてアルバイトやボランティアの経験があるか、重視している企業も多くなっています。ボランティア経験があれば企業側から自らの意志で奉仕活動へ参加している、社会経験を積んでいる、と好意的な目で見られることから就職活動のために紹介している学校も多いです。日本の未来を委ねる農業ボランティアを実践することにおいては、印象良く受け止められ、就職活動に大いに役立つでしょう。



各都道府県での取り組み一例



各都道府県・自治体で行われている取り組みの一例を見ていきましょう。


大阪府

「南河内ぶどう塾援農隊」は大阪のぶどう産地を守る取り組みを行なっています。ぶどう栽培に興味のある住民を募り、ぶどう農家と共同してぶどう栽培に関する講義や実習を実施することで種無しぶどう品種「デラウエア」の担い手不足を解消し、産地を守る活動内容です。


愛知県

名古屋市では平成13年度から「農業ボランティア育成講座」として市民を対象にした講義と実習を行なっており、市内の農業応援団として活躍する人材の育成を目的とし定期的に開催されています。


神奈川県

神奈川県が開講している新規就農者育成研修では農業に関心のある将来的に神奈川県で就農を検討している人向けに農業の現状や魅力を伝え、2日間に渡って農作業を体験できる研修を行なっています。


千葉県

ちば農業支援ネットワークでは農業経営の支援活動や広報・啓発活動、栽培に関しての支援だけでなく就農希望者など次の世代となる農業担いを支援など様々な分野の活動をしており地域住民の農業・農村に対する理解を深めていくことを趣旨として、設立されました。


茨城県

茨城県つくば市が主催する「つくば市農業サポーター制度」では農家さんと交流を楽しみたい方や、農業に興味のある方などを対象に農家が人手不足で困っている際、農業ボランティアとして農作業の手伝いができる人材を育成するセミナーを実施しています。



農業経験を活かし実際に畑を借りる



農業ボランティアの期間が終わった後、実際に畑を借りることを検討するのも良いでしょう。


サポート付き農園シェア畑を利用する

シェア畑は畑の一画をレンタルして野菜を育てることのできるサービスです。家庭菜園ができる環境ではない場合や畑で野菜を育てたい想いがある人におすすめです。シェア畑には菜園アドバイザーと言われる経験豊富なスタッフが定期的に来てくれるので、わからないことや疑問があれば質問しましょう。化学肥料は全く使わず安心して収穫のできる環境で、採れたての旬な野菜をその場で食べることもできます。

レンタルをする畑の規模や場所によって違いがありますが、料金体系も非常に安いことが利点の一つです。


参考:シェア畑



まとめ

農業ボランティアについて紹介しました。農業ボランティアでの働き方は短期間から長期間までありますが、自分の生活や環境に合わせた働き方を考えることが重要です。農家さんと直に接点を持つことで農業への理解が深まり、就農が自分に適しているか判断できるでしょう。将来的に農業へ従事する予定のない学生にとっても、農業ボランティアを行うことは就職活動において企業側から好意的な目で見られる傾向にあります。非日常を感じられる体験を通し農家のプロと接することで、学びも深いものとなるでしょう。



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