カラフル色の鉢に愛らしい植物。そんな「ミニ盆栽」の販売を行なうお店が新潟県新潟市江南区にある「ぼんさい屋とき」さんです。


お店では盆栽の販売の他、鉢もつくり素材の栽培も行なっているそうです。ミニ盆栽を求め、若者も足を運ぶというお店「ぼんさい屋とき」を経営している高橋星児さまにオンラインでお話を伺いました。


店内で作業に打ち込む高橋星児さん 手掛けた盆栽を海外の展示会に出展したこともあります。


2017年11月にオープンした「ぼんさい屋とき」。店舗では、盆栽、さらに盆栽鉢の販売も行われています。はじめに盆栽との出会い、お店を始めたきっかけを伺いました。


学生時代を含め、京都で21年間を過ごしたという高橋さん。大学では陶芸を学び、卒業後は陶器の雑貨を作る工房に勤め、そこで盆栽と出会ったそうです。


「90年代終わりから~2000年代にかけ和風雑貨のブームがあり、インテリア業界でも苔玉、ミニ盆栽が出回り始めた頃です。当時の勤め先が京都の山の中の工房だったのですが、建物の裏山には苔が豊富に生えていました。それを採ってきて苔玉や苔盆栽を作り、全国のインテリアショップさんや雑貨屋さんに卸す仕事をしていたのですが、それが自分にとって盆栽に携わるきっかけとなりました」


その後、盆栽とは別の業界への転職を経て2013年に新潟に帰郷。若いころはそれほど植物に興味が無かったという高橋さん。新潟でも最初は別の仕事に就き、生活をしていました。その中で、30代後半に差し掛かると、ふたたび盆栽への関心が芽生えてきたと言います。


「盆栽の業界は色々とあって、盆栽鉢は陶芸家、植物は盆栽園といったように分かれています。自分の場合、学生時代から陶芸を学んでいたので、どちらかというと陶芸・作家的な観点から、盆栽に携わり始めました。自分で鉢や器などを作り、実家がギャラリー(小さな美術館 季「とき」)をやっているのでそこで、個展を開き作家として開業したのが始まりです」




興味を持ったばかりの人も手軽に盆栽を楽しんでほしい 

2013年に作家としてデビュー、その後2017年に現在の「ぼんさい屋とき」の店舗を構えました。お店には、見た目からかわいらしさが伝わる「ミニ盆栽」の販売を主に手掛けています。高橋さんが抱く盆栽づくりのコンセプトを聞いてみました。


「これまで、盆栽ブームという感じの流行が数年周期で何度も訪れてきています。その際、ビギナーの方などは、昨今ホームセンターで販売されている鉢がプラスチックでできた、1000円前後の盆栽を購入される方も少なくありません。それ以外では、玄人の方が購入する伝統的な盆栽は、数万円から数十万円のものがあります。なかなか初めての人がそこから始めるのは大変であり、かといって、プラスチックの鉢のもので愛着が持てるかと言えば、それも難しいかなと思います」


高橋さんは常々、「伝統的な盆栽は素晴らしい物ではあるのですが、どうしても敷居が高くみられてしまう」との考えがあったと言います。「ミニ盆栽」を始めたきっかけは、興味を持ったばかりの人でも、手軽に盆栽を楽しんでもらいたいという思い、そしてそれは高橋さんならではの発想だったとも言えます。


「幸い僕は鉢も自分で作ることが出来るし、新潟では土地柄、植物も手に入りやすく、栽培の環境にも適している。盆栽は何年、何十年のスパンで楽しめる趣味ですし、誰もが敷居の高さを感じずに始められるようなものを提供できればと思っています。お店で扱っているものは3000円~10000円のものが殆どで、そのくらいから始めてもらうのが丁度いいんじゃないかなと感じています」


インタビューの画面に映っている店舗に並ぶ品々は、植物の色彩はもちろんですが、鉢のカラフルさが強く印象に残りました。明るい青や緑などの鉢もあり、またその「小振りさ」も相まって、一般的な盆栽とは一味ちがう、眺めるだけで心が洗われるような気分が味わえます。そして扱う商品には、高橋さんのもう一つのこだわりがありました。


「盆栽というと昔から和室で楽しむというイメージが強いのですが、最近の新築の家など和室の無いお宅が殆どだと感じています。そのため、マンションやアパートなども含め和室の無い環境、例えばベランダやリビングなどでも存在が浮くことのない、お洒落で現代的な雰囲気を感じられるものを心掛けています。


扱っている植物の種類も50種類くらいあります。花が咲いたり、実がついたり、紅葉したり、松とか真柏など冬でも青々としているものもある。それらに合わせて、鉢も明るい色のものや、松などは落ち着いた色の鉢を使うなど、植物との組合わせを考えて作っています」


店内や展示会などのイベントで盆栽を展示する什器も、白色など明るい色のものを使用していることから、全体的に鮮やかな印象が伝わります。植物の栽培、さらに自身でも鉢のデザインも手掛ける高橋さんこだわりの盆栽を求め、お店には幅広い年齢層のお客様が足を運ぶそうです。


「もちろん、ベテランの愛好家の方など年配のお客様もいますが、どちらかと言えば20代後半から40代の方ですね。その中でも割合、女性の方が多いです。本来、盆栽には『かわいらしさ』も含まれているのですが、いわゆる伝統的な盆栽ではその部分が見え辛くなっている様にも思います。うちで販売しているミニ盆栽からは、そういった要素も感じて貰えていることもあり、特に20~30代の女性のお客様から多く来ていただいています」




魅力は日常の中で、植物との関わりを感じられること

ここ10年くらいの間で、多肉植物や塊根植物の流行もあり、観葉植物も含め「園芸の多様化」が進む昨今。一方で、盆栽はすべて日本の植物(松、モミジ、サクラ等)であり、四季に応じた変化が楽しめるという点が一番大きな魅力だと、高橋さんは言います。その盆栽と他の植物との違い、管理方法についても聞いてみました。


「観葉植物などは日々においての見た目の動きは少ないですが、手入れが比較的簡単(水やりが1週間に1回程度)という利点はあります。それに対し、盆栽は日々の変化がわかりやすく、水やりは基本的に毎日行なうことなどから、植物との関わりが強く感じられるのも特徴です。


盆栽の管理方法では、もう一つ、日当たりや湿度なども、植物の種類によって変わります。例えば、葉っぱの堅い常緑樹は家の中でも日当たりのいい場所、桜やもみじ、カエデなど落葉する樹は日差しが強すぎると葉焼けなどが考えられるので時間によって置き場を変えるなど、それぞれに適した日当たりが必要になります。


とはいえ、日々の生活の中で問題なく管理出来ますし、水やりと置き場所、その二つだけ気にして貰えれば、それほど難しくはない手入れで楽しめると思います」




「都会に住む人ほど盆栽を求める反応が強いと感じています」

現在の店舗兼作業場で、自身が仕立てた盆栽の販売はもちろん、鉢づくりや植物や素材の栽培まで手掛けている高橋さん。もともと、店舗を構える以前からのスタイルだとして、県内各地域、さらに県外での展示会やさまざまなイベントへの出品といった活動も精力的に行なってきました。


2年前からの新型コロナウイルスの影響により最近は機会が減ったものの、今も可能な範囲で各土地での販売も続けています。幅広く活動してきた中でのお客様の反応も聞いてみました。


「関東圏、主に東京のお客様の反応が特に強くに感じました。東京・表参道にある新潟のアンテナショップで定期的に出店しているのですが、首都圏エリアといった大きい都市の方々から、盆栽を求められる切実さを強く感じています」


去年は他に、京都や長野でもイベントなどでも展示販売を行なってきたとして、一般的な盆栽園などでは少なくなっているという全国各地へ出向いての販売を、今後も世の中の情勢を見極めながら続けていくそうです。さらに、コロナ以前には販売だけでなく、ワークショップや盆栽教室も各土地で開催し、多くの人々が盆栽に触れる機会も提供してきました。


「ワークショップや教室は、店舗を構える前の2014年くらいから行なっています。内容としては、鉢と植物をそれぞれ好きな組み合わせを選んでもらって、鉢に土を入れたり、植物の植え付けを行ないます。鉢も私が作ったものなので、色・形とも違います。そのため、全体的な形もそれぞれ違うものが出来ることもあり、その部分も楽しんでもらえたかなと思います。


またコロナ以前には、地元で鉢づくりから植え込みまで全て行える盆栽教室を開いたこともあります。他にも東京・赤坂アークヒルズでの『桜まつり』でもワークショップを開催し、多くの外国の方からもご好評をいただきました。現在は新潟県の新聞社主催の教室を県内全域、数カ所でやっています。3月には桜の植え込みの教室として、朝日山桜の樹を用いてやる予定になっています」




新潟の環境だからこそ盆栽づくりを行なうことが出来ている

高橋さんの盆栽づくりの拠点は、作業場や栽培所も兼ねている新潟市の店舗です。季節の移り変わりが色濃くみられる新潟という地域は、盆栽づくりという点においてどのような影響があるのか伺いました。


「意外と知られてないのですが、かつて新潟という土地は、園芸における農業はかなり盛んでした。盆栽に関しても、形になる前の、植物などの素材を種をまくところから作っていた農家さんたちが非常に多かったこともあり、関東でも盛んといわれる埼玉などよりも、新潟は規模が大きかったのです。


そういう土地柄であり、私自身、盆栽の素材作りも行なっていることから、現在も多くの農家さんにお世話になっています。一般的な盆栽園では知ることの出来ない知識やノウハウなども、農家さんとのつながりから得られる機会も多いです」


その一方で、盆栽業界は現在、大きな問題に直面していると言います。それは業界の未来にとって切実な問題であり、高橋さんが自ら盆栽の栽培も手掛ける理由がここに含まれているようです。


「園芸のジャンルも多様化が進んでいることもあり、盆栽に携わる絶対数の人口が減っていて、本格的な盆栽は衰退していっていることも事実です。とくに新潟で素材を作る農家さんは今、数えるくらいしかなくなってきていて、跡継ぎがいらっしゃらなくなってきています。現在も新潟市内の農家さんから植物を分けて頂いているのですが、そういった農家さんも70~80代の高齢の方が殆どで、これは全国的に同じ傾向にあります。


2017年の開店後、最初は素材を入れたり、農家さんからも分けてもらっていたのですが、現在は素材も手に入りにくくなってきています。先々のこと考えると、植物も自分で作っていかないと、今後、自分の仕事が出来なくなってしまうことも考えられるため、自分でも栽培を行なうようになりました。


ゆくゆくは現在も行っている素材の販売を、拡充していけたらと思っています。現在、店舗は栽培所という面が強くなっていて、そういった理由からも、栽培も行なう上では新潟という環境はとてもやりやすい、むしろ新潟でなければ出来なかったと思っています」




新しいアイデアとともに、より楽しんでもらえる盆栽づくりを

これまで、新潟で、そして全国各地で盆栽を通じての活動を行なってきた、作家という視点や、生産者としてなど色々なお話を伺う中で、ご自身の盆栽への想いも強く伝わってきました。インタビューの最後に今後の展望を伺いました。


「営業・販売活動においては、コロナの状況次第ですが、東京、横浜など、広く都市部へ展開していきたいという願望があります。植物では、これまで行なってきている素材の栽培を、さらに充実させていきたいと思っています。


また物づくりの部分において現在、構想としてあるのが、植物と鉢、さらにプラスアルファの素材を加えた『作品的な』盆栽を手掛けたいと考えています。例えば流木などを組み合わせ、陶芸的な部分もより目立つような、小さいながらもさらに観賞を楽しめるオブジェ的なものを作られたらいいなとも考えています」


盆栽の魅力を伝えるため、歩み続ける高橋星児さん。だからこそ「ぼんさい屋とき」では人生を豊かにしてくれる素敵な盆栽に出会うことが出来る、そんな気がします。



■ ぼんさい屋とき


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