日々の食卓に欠かせない野菜、トマト。生のまま、丸かじりやサラダとして味わえる他、ジュースやケチャップにも姿を変え、豊富な栄養と共に人々の食生活に彩りを加える存在です。


トマトと言えば、春から夏にかけて栽培・収穫が行なわれるというイメージを持つ人も多いのではないでしょうか。そんな、夏野菜の1つとしても知られているトマトですが、新潟県新潟市の曽我農園では、冬のイメージが定着したトマトを販売しています。新潟県内では珍しいといわれる冬季間のトマト栽培を行ないながら、同農園のブランド品である『越冬トマト』の生産を手掛けており、瑞々しいトマトの美味しさはもちろん、私たちの知らないトマトの魅力を日々、SNSなどを通じて届けてくれています。


今回は曽我農園の代表・曽我新一さんに、新潟県内で行なうトマト作りへの意気込みや、商品へのこだわりなどを伺いました。


曽我農園 曽我新一代表  



冬季間の栽培を経て収穫は4月~6月  

「曽我農園では、他の地域ではできない美味しさを出すために、あえて新潟の冬の期間に低温で栽培するというトマト作りを行なっています」

曽我さんは自身の営む農園のトマトの特徴を、そう説明してくれました。曽我農園の『越冬トマト』は読んで字の如く、冬を越えて作られます。秋の種蒔きに始まり、冬期間ビニールハウス内での栽培を経て、4月~6月に収穫されます。


「トマトはもともと1年中栽培できるものなんです。新潟以外では冬に出荷されている場合も多いですね。 その中でも『越冬トマト』はフルーツトマトとして、夏に作られるものとは甘みや風味も全くちがうものができます」

曽我農園では、実が生る1月頃から、水分調整などによりトマトにストレスをかけるという栽培方法が行なわれます。そうすることで成分が整えられ甘みが増したものが6月頃にかけ収穫され、『越冬トマト』として販売に至ります。


しかし、日によっては氷点下を記録する新潟県の冬。ハウス内で行なうとはいえ、トマト栽培にはやはり厳しい条件が揃っていると、曽我さんは語ってくださいました。

「新潟という土地では冬季間、気温が下がることはもちろん、太陽の日差しが少なくなることで、トマトにとって病気が出やすくなります。それを如何に抑えるか、またハウス内の暖房で費用も掛かるなど、冬場を乗り越えるのはやはり大変なことが多いです」


温暖な気候が栽培に適しているトマトをあえて冬の気候で育てる。曽我さんをはじめ、農園の皆さんの努力もあり、『越冬トマト』は2012年に野菜ソムリエコンテストで2部門で金賞に輝き、その知名度は全国区のものとなりました。



冬の間、ビニールハウスで栽培されている『越冬トマト』  



規格外品から生まれた『闇落ちトマト』  

かつては海外に渡り、青年海外協力隊として野菜栽培の技術指導にも携わってきた曽我さん。新潟県に帰郷後、祖父の代から続いてきた実家の農園を引き継ぎ、自身が代表となったことをきっかけに、さまざまな取り組みを行なってきました。曽我さんは長年にわたるトマト作りの中で、常に抱き続ける考えがあると言います。


「スーパーなどの店頭に並べられて販売されているトマトも、もちろん大事です。そのような規格を通ったものがある一方で、栽培の過程では見た目などが異なる『規格外品』も多くできるのですが、それらもお店での販売は可能であり、美味しく食べられます」


その言葉通り、曽我農園では規格外品を集め、商品化しています。人気の『闇落ちトマト』です。栽培過程で、カルシウム不足などから『尻腐れ』(トマトの表面の一部が黒く変色し、かさぶたのような状態になる生理障害)が生じたトマトを商品として、昨年、直売所に並べました。すると、テレビ番組でも取り上げられたこともあり、問い合わせが殺到するほどに大きな話題となったのです。


ネーミングセンスも感じられる『闇落ちトマト』  


尻腐れによりヘタの反対側、お尻の部分などが黒くなると、鮮やかなトマトの表面とのコントラストがくっきり。ひと際、黒ずんだ箇所が目立ちますが、その部分のみカットすることで、問題なく食べることができ、尚且つ通常のフルーツトマトよりも甘みが増しているものも多いとのこと。


「そういった知識や、トマト栽培の世界を知っていただくことで食に対する意識を広め、高めていってもらえたらなと思っています」


曽我農園ではこの他にも、個性的な外観のトマトが商品として販売されています。それらも『闇落ちトマト』同様、部分的に除去するだけで、大半は美味しく食べることができるものばかり。可能な限り廃棄やロスすることなくトマトをより多くの人々に届けたい、そんな曽我さんの思いが個性豊かな商品には込められています。



トマト作りを通じて広めていきたい、食への関心、さまざまな知識  

昨年の販売以来、各種メディアで取り上げられた『闇落ちトマト』は今シーズンも販売予定ではあるものの、もちろん計画された数量が穫れるものではありません。「商品となる量はごく僅かなので、希望される全ての皆さんが購入できない場合もあることを、ご理解頂ければと思います」と、曽我さん。


また『越冬トマト』も、4月より新潟市の直売所にて販売が行なわれていますが、店頭には行列ができ開店直後に売り切れるほどの人気を誇っています。


曽我農園の商品では他にも、『越冬トマトフルーツトマトジュース』や『越冬トマトケチャップソースプレミアム』などを販売しており、こちらは通年で曽我農園ホームページから購入できる人気商品。ジュースは喉越しも良く自然な甘みを感じることができ、ケチャップもフルーツトマトの風味が口の中に広がります。


越冬トマトジュース・ケチャップの瓶に貼られているラベルには、真っ赤な熊が描かれており、まん丸の姿で眠っている熊の商品ロゴはまさにトマトそのもの。眺めているとこちらまで癒してくれるような雰囲気のデザインには、県外からも多くの反響が寄せられているそうです。


「冬眠する熊と『越冬トマト』を関連付けることで、新潟の冬をイメージしています。新潟県内のみならず全国の皆さんからもよろこんでいただいていますね」


冬眠するクマのロゴ。曽我農園のロゴ「そ」の字も優しいデザイン  


また、twitterやインスタグラムといったSNSでは、私たちが知らなかったトマトの特徴などが紹介されており、栽培途中だからこそ出会うことができる個性豊かなトマトの画像に加え、曽我さんのユーモアあふれるコメントも必見。商品ロゴなどブランディングデザインや、SNSを通しての情報発信にも力を入れることで、多くの消費者はより一層、曽我農園のトマトを身近に感じることができます。


食への関心、トマトへの想い。様々なことを感じることができた今回のインタビュー。最後にもう一度、曽我さんにトマト作りを通じて、消費者へ伝えたいこととは何かを聞いてみました。


「トマトは栽培する人間の個性が非常に出やすい食べ物なんです。例えば栽培の仕方によって、獲れる量を増やしたり、より甘くできたりと、栽培方法によって変えることができる野菜ということもなかなか知られていません。消費者の皆さんに私たちのトマトを通じて、そういった知識を知ってもらいながら、より良い食事を共有できたらいいなと思っています」


新潟の地で半年以上に渡り栽培され、冬を越えて収穫されるトマトの味わい。間違いなく、曽我さんのトマト作りへの情熱が凝縮された味と言えるでしょう。



■ 曽我農園直売所


ホームページ

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住所

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新潟県新潟市北区木崎1799


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