仙台駅から徒歩10分ほど。アーケードを少し離れ、飲食店やセレクトショップ、美容室など仙台のオシャレが自然と集まってくるエリア「青葉区本町」。
アーケード街とは違った雰囲気のある本町。飲食店などの店舗だけではなく、オフィスビルも多いです。
2015年に美容室「AND hair atelier」を本町にオープンしたオーナーの只野 恵美奈さんは福島県出身で、美容師歴は16年。「美容師としても、経営者としても毎日が本当に楽しい」と笑顔で語る只野さんを見ていると、自然と楽しい気持ちになります。
「周りに気を使わず、サロンでは存分にリラックスしてほしい」
施術は完全予約制。来店されるお客さまのことを1番に考えてたどり着いたのが、完全予約制で1対1のマンツーマン施術。アシスタントもフロントスタッフもいないので、只野さんが店舗全ての業務を1人で行っています。
「朝はゆっくり出勤できるけど、帰りは毎日日付が変わる時間になることが多いです。ただ、働き方のベースは独立前からずっと変わっていないかも。でも、前よりもお客さまの情報は細かく残すようになりました」
座席はこの一席のみ。周りを気にすることなく自分の時間が過ごせます。
当時と今の大きな変化は、来店したお客さまの情報を細かく残すようになったと只野さんは笑顔で話します。1対1のマンツーマン接客だからこそ、来店時の施術内容や会話の内容は次の来店時の貴重な情報源。来店するお客さまは20代後半から50代まで幅広く、ターゲットとしている客層と合っているそう。 技術だけではなく、話し相手のような感覚でお客さまも来店されるので、前回履歴には会話内容も残すように心がけているとのことです。
「お店の雰囲気作りも大事にしているけど、お客さまがリラックスして時間を過ごすことができるように店内設備もできる限り充実させました。完全予約制で自分しかお客さまがいない空間だからこそ、好きなように時間を過ごしてもらいたい」
座席にはタブレット端末が設置されているので、施術中に動画を見て過ごすこともできます。只野さんが、お店に来店したお客さまの時間を大切にされているのが伝わりました。
座席には生花もあり、リラックスできる空間を演出しています。
美容師を始めた時からずっと独立は考えていた。あとは、タイミングを逃さないだけ。
只野さんこだわりの内装。生花とドライフラワーがオシャレです。
「独立に関しては、本当にずっと前から考えていました。そのために今は何をやらなくちゃいけないとか、常に先のことを考えて行動していましたね。やっぱり、美容師として経験を積んでいくと自分の中での美容師像がだんだんはっきりと形になっていって。本当に美容師を楽しむために独立は必要だと思うようになりました」
5年後、10年後のように長期的にプランを考えていた只野さんは、そこに到達するために「今やるべきこと」「やらなければならないこと」を独立前に常に意識していたそうです。美容師として、お客さまに提供する技術やサービスに自信を持つことができたタイミングで独立しようと考えていたとのことで「年齢的にもまさに今がその時だと、はっきり自覚しました」と独立当時のことを話してくれました。また、自分の直感を大切にしていて、自分がやりたいと思ったことはまずやってみるように心がけているそうです。
「独立後は正直言ってすぐに店を閉めてもいいって考えでした。それくらい、自分がやりたいって思ったことはやる。失敗して当たり前だし、逆に絶対に成功する保証もない。ただ、あの時やっておけばよかったとか、やらない後悔が本当に一番嫌いです。結局やりたいって思ったときにやらないと、絶対に自分がやりたいことはできない。新しいことを始める時の勢いとかノリは思っているより重要かも。だからこそ、仕事は趣味のようなものだと私は思っていて、本気度って大切だと思います」
仕事に関することは寝るとき以外毎日考えていて、特に独立した時の気持ちは忘れないようにしているとのこと。
「初心を忘れると、全てが崩れていってしまうから毎日仕事ができることに本当に感謝しています」
今も先のことは常に考えているし毎日が楽しいけど、来月も大丈夫だろうか、無事に終えられるだろうかと常に不安な気持ちもあると只野さんは話してくれました。毎日仕事のことを考えているからこそ、本気で仕事に対して向き合うことができる。「仕事は趣味のようなもの」と只野さんが話してくれた真の意味がわかった気がします。
新店舗のオープンで自分が更に成長できた
独立から7年目の2022年6月に、2店舗目をオープン。多店舗展開により、自身にも大きな変化があったそうです。
「今までは自分1人でやってきたけど、人を雇用することで視点とか考え方が今までとはだいぶ変わりました。一緒に働いてくれるスタッフのことを真剣に考えることで、自分自身も成長できる。新店舗をオープンするタイミングで丁度よくスタッフが集まって、本当に良かったです」
只野さんは、一緒に働いてくれるスタッフの意見は絶対に否定しないように心がけていて、受け入れてから提案する形を取っています。それが相手への伝え方の勉強にもなり、自身の考え方や視野を広くしてくれているそうです。また、コミュニケーションも大切にしていて、最低でも月1回はミーティングを兼ねて食事に行き、本音を聞き出すようにしているとのこと。お店でミーティングを行うよりも、本音で話しやすいような環境を用意することで、お互いに思っていることを伝えやすく有意義な時間になっているそうです。
今の時代に合わせた働き方を理解し、スタッフ全員が気持ちよく働ける環境を創ることも雇用には重要なポイントです。 美容師もフリーランスや、業務委託、パートなど働き方が多様化しているので只野さんは特に注視しているそうです。
「一緒に働いてくれる仲間がいるって、すごく心強いです。誰かと一緒に頑張れるのはいいなって。それに一生懸命頑張っている姿を見ると、自分ももっと頑張らなくちゃいけないって刺激にもなります」
自分1人では見ることができない景色を見ることができるのは、一緒に働く人がいるからこそ。美容師として切磋琢磨しあえる関係性は、美容師としても経営者としても成長できると話してくれました。
仙台は子どもの頃からよく遊びに来ていた思い入れのある場所
只野さんの出身は福島県ですが、子供のころから仙台には遊びに来ていたそうで、深い思い入れがあると話してくれました。
「学生時代から住んでいるから、もう20年くらいは仙台にいます。仙台は居心地が良いというか、色々と丁度いいところが好きですね。食べ物も美味しいし、住みにくいって感じたことが今までないし。逆に東京とかは生活するってなると私は疲れるかもしれません。あと、仙台というか、東北の人は優しい人が多いと思う。それから、こだわりが強いけどすごくフレンドリーで気に入ったお店ができたらずっとそこに通う人が多いと感じました。だから、独立して最初にお店を出すなら仙台にしようって決めました」
新幹線や飛行機で都心部や関西圏などへは数時間。空港まで直通の電車もあり、交通アクセスが良いのも仙台の魅力です。少し街中を離れれば温泉街や自然も多く、観光も楽しめます。地方都市の程よい都会感とのバランスが好きと仙台の魅力を語ってくれました。
お店そのものが広告。来店したお客さまは必ず次回も来店してくれる。
店内はもちろんですが待合スペースも広く、ゆったりと過ごせます。
「もちろん広告も大事だけど、私にとってはANDというお店そのものが一番の広告です。新規で来店したお客さまは、必ず次回もお店に来てくれています」
実際に店内に入ってみると、その理由にも納得できます。完全予約制というシステムにより、来店時に自分以外のお客さまはほとんどいません。もし、他のお客さまがいたとしても会計時など、退店前の数分間だけです。例え入れ替わりになったとしても、自分がANDを貸切っているかのような感覚になります。何よりお店のスタッフも只野さん1人なので、来店から退店まで安心して過ごすことができます。
「お客さまが来店する時に皆さんが言ってくれるのが、周りに気を遣わずにキレイになれるのは本当に助かるということですね。他の美容室だと、他のお客さまも店内にいるのが普通だから、そういう意味ではお客さまにとっても特別な場所になっていると思います。それから、小さいお子さまをお連れの方にはお子さまカットも希望があればやっていて、お客さまと一緒にお子さまの成長を見ることができるのも面白いです。ちょっと前まであんなに小さかったのに、来年小学生になると聞くとびっくりします」
お子さまを連れている方は、美容室だけではなく飲食店など、自分たちの他にも人がいる場所はどうしても気を遣ってしまいます。特に小さいお子さまの場合は、なおさらです。美容室は、自分の外見をキレイにするだけではなく、気分転換もできる場所。他人の目を一切気にすることなく、リラックスして過ごすことができる環境を創り出せるのは、只野さんの優しい人柄もあるのかもしれません。
「新規で来店してくれるお客さまが増えるのはとてもありがたいことだけど、今来店してくれているお客さまがずっと来店し続けてくれるほうが嬉しいです」
意外だったのが、既に来店したことがあるお客さまから紹介されてANDに来るお客さまが少ないということ。その理由は完全予約制ということもあって、自分のお気に入りの場所だからこそ周りには秘密にしたいというお客さまが多いからと只野さんは話してくれました。お客さまのことを1番に考えているからこそ提供できるサービスがあり、その想いがしっかりとお客さまにも伝わっていると感じました。
やりたいことはまだまだある。美容業の幅を広げたい。
只野さんの想いが詰まった「AND hair atelier」
美容師でよかったと思える毎日が本当に楽しく、やりがいも日々感じているけど、やりたいことはまだまだあると只野さんは今後の展望も話してくれました。
「家族も地元で美容室をやっていて、いずれは自分で家族の店舗も管理したいです。その前に、仙台市内で3店舗目を出店したいし、マツエクとかネイルとか美容室以外の美容業の幅を広げていきたいかな」
只野さんの地元は東日本大震災の影響を大きく受けた南相馬市で、そこで家族が営んでいる美容室の名前も「AND」。実際に「AND hair atelier」の店舗名もそこから取ったそうです。
「やりたいことがあるけど、なかなか思うように進められない。進んでいたとしても、速度が遅いときに時間が足りないって感じます」
美容室の新規出店以外に、マツエクやネイルといった美容業全体に今後は関わりたいと楽しそうに話す只野さん。そのためにもスタッフは必要で、募集は常に行っているそうです。
自分の直感を大事にしながら、後悔しない人生を楽しむ只野さんは話していて本当に素敵な人でした。現役の美容師としても経営者としても、これから自分のやりたいことを実現するため前へ進み続ける只野さんの活躍に今後も注目です。
■ AND hair atelier
住所
宮城県仙台市青葉区本町2-9-3 第3産伸ビル3F
電話番号
022-224-3880
営業時間
11:00-21:00
カット最終 20:00
定休日
水曜日・第3月曜日・他不定
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