多くの観光客で賑わう京都市内で、焼き鳥をメインにした飲食店「京都炭火焼鳥アホウどり」を3店舗経営する株式会社アホウプロジェクトの代表・泉川武士さん(アホウネーム:ジャイさん)。安くてうまい焼き鳥はもちろんのこと個性豊かでドアホなスタッフたちが、訪れるお客さんに“アホ”を提供しています。



常連さんやリピーターさんたちが多く訪れるアホウどりには、アホになってもらう仕掛けがたっぷり。お客さんに「アホウネーム」というユニークなニックネームを付けたり、ジャンケンに勝ったらドリンクが半額になる「アホウジャンケン」を行ったり。店内はいつも、常連さんをはじめとするお客さんの楽しそうな声で賑わっています。もちろん、スタッフたちはいつも元気いっぱいです。


飲食店の他にも、最近では新たな業態に挑戦しているというジャイさん。2022年4月には、京都市の西部・西大路御池に月額2,980円という破格で楽しめる次世代スポーツジム「LifeFit(ライフィット)24h Smart Gym 京都西大路御池店」をオープン予定です。



今回は、飲食店にとどまらずスポーツジムへの挑戦を行う株式会社アホウプロジェクトの代表・ジャイさんに、アホウどりを始めたきっかけやこれからの目標について伺いました。



「京都炭火焼鳥アホウどり」を目指すきっかけとは

もともと、何かを作ることが好きだったというジャイさん。特に、京都精華大学在学中に行っていた文化祭は特別なものだったといいます。


「自分たちで作って自由に楽しめる文化祭は、すごく好きです。みんなが楽しんでいるから、みんなの果てしない底力が発揮されるじゃないですか。そういうアホなことをしているのがすごく楽しいです」



とにかくアホになって楽しめる文化祭が好きだったジャイさんは、飲食店にも文化祭に通じるものがあるといいます。チーム一丸となってお客さんを楽しませる空間を生み出す飲食店は、まるで文化祭のよう。もともと飲食店が好きだったことも相まって、学生時代のジャイさんは焼肉店や焼き鳥店など、さまざまな飲食店でのアルバイトを経験していきました。


「アホウどりのビジョンが決まったのは、初めて飲食店で働いたときのことです。そのお店は、焼き鳥をメインに提供するアットホームな場所でした。当時の店長は、よく常連さんと営業中にお酒を飲んだりしていて、たまに酔い潰れる時もあったりして。そういうのがすごくよかったんですよね」



常連さんとの距離が近かったというアルバイト先の店長さん。店長が酔い潰れたときには、ジャイさんひとりでお店を回していたこともあるそう。忙しいながらもお客さんと楽しく過ごすなかで、ジャイさんにはある思いが湧き出てきたといいます。


「カウンターの内側からお客さんと交流しているうちに、テレビを見ているみたいだなあと思ったんです。しかも、めちゃくちゃ楽しそうなテレビ。お客さんがすごく楽しそうに過ごしていて、そこに店長も混じったりして。当時は自分のお店ではなかったけど、ゼロからみんなが楽しそうな空間を作ったら、こんなに幸せなことはないなあと思ったんです」


ふと気づくと、目の前には楽しそうなお客さんたちの姿。いつか自分も飲食店を経営するときは、みんなが楽しそうな空間を作ろうと心に決めます。



人生のドン底を救ってくれたのは友人たち。彼らのためにも“アホ”な場所を作りたい


とにかくおもろいことが大好きなジャイさん。イカを持っているのは、噛めば噛むほど個性が出てくるスタッフたちのことを表現しているそう。  


京都精華大学を卒業後、焼肉をメインに提供する飲食店に就職したジャイさん。超体育会系だったという会社で、250人以上入れる大箱の店長を任されながらも、充実した日々を送っていたといいます。


中でも、ジャイさんにとって人生のターニングポイントだったのは、当時結婚を前提にお付き合いしていた恋人との結婚式。お互いの両親への挨拶を済ませ、結婚式会場も抑え、今までお世話になった人々や友人への招待状も送り、あとは結婚式当日を待つだけ。しかし、結婚式が1ヶ月後に迫ってこようとしたある日、ジャイさんは突然人生のドン底に突き落とされました。


「ホンマびっくりなんですけど、彼女の浮気が発覚したんですよ」


今でこそ笑って話せる出来事ですが、当時のジャイさんの精神はボロボロになりました。あとは結婚式を待つだけ、という状況の中で起きた悲劇だったため、彼女の浮気を許してそのまま結婚しようと思ったといいます。しかし、そんなドン底のジャイさんを救ってくれたのは周りで支えてくれた友人たちでした。


「結婚式はキャンセルして、友人たちが「泉川武士結婚式・告別式」っていうアホな会を開いてくれました。ドレスコードは、喪服。数珠をつけてきた人もいます。僕は、浮気した彼女の写真を遺影に見立てて、ユーミンの「春よ、来い」で登場したんです。もう、周りの友人たちがみんな爆笑してくれて、僕もアホになって泣きながら笑ってたんです」


人生のドン底にいたジャイさんを、周りの友人たちが“アホ”になって救ってくれた「泉川武士結婚式・告別式」。ジャイさんを心配した友人たちが考案した会は、大爆笑の渦に包まれ大盛況。みんながおもしろおかしく笑っている中で、ジャイさんは沈んでいた気分が徐々に消化されていくような感覚になったといいます。


「正直、すごく辛かったです。結婚を決めた相手と描いていた夢が全てダメになってしまって。だけど、周りの友人たちが開催してくれた「泉川武士結婚式・告別式」を通して、楽になりました。コイツらのためにも、小さくてもいいから家族みたいな、アホになれるお店を作ろうと思うようになったんです」


当時の経験が「泉川武士結婚式・告別式」を通して、力に変わったというジャイさん。自分を支えてくれた周囲の人々のためにも、当時店長として任されていた大箱ではなく、お客さん一人ひとりとしっかりコミュニケーションが取れる小さくてアットホームな、そしてアホなお店を作ろう、と独立を決心しました。



アホウどりの強みは“常連さん”


こうして「京都炭火焼鳥アホウどり」をオープンしたジャイさん。立地にも恵まれ、オープンしてからわずか2年余りで京都市内に3店舗(白梅町店・一乗寺店・聖護院店)を経営するまでに成長しました。しかし、2020年突如やってきた新型コロナウイルス感染症の影響により、お店は休業。売り上げが急落していく中で、とある店舗だけ売上が安定していることに気が付きます。


「京都大学が近くの聖護院店だけ、コロナの間も売上が安定していたんです。どうしてかということを追求しているうちに、常連さんがコロナ期間中も毎日お店に来てくれていたことに気づいたんです」


売上がどんどん悪化していくなかで見えた一筋の光。それは、コロナ期間中でも毎日足を運んで“アホ”になってくれた常連さんの存在でした。


「アホウどりが大事にせなアカンのは、常連さんや!という本質が見えたんです。聖護院店だけではなく、白梅町店も一乗寺店でも常連さんを大事にすることが一番。既存の常連さんも新しくお店に通ってくれるようになった常連さんも、もっともっと大事にしていこうというビジョンができたんです」


アホウどりが大事にしなければならないことは「常連さんたちに居心地の良い空間を提供すること」。

アホウどりの本質が見えたのと時を同じくして、それなら飲食店だけではなく他の業態で居心地の良い空間=サードプレイスを作れるのでは?と、新たな思いが芽生え始めたといいます。


「それがスポーツジムだったんです。お客さんがアホになって楽しめる場所は、飲食店だけではない。それがスポーツジムでもいい。ジムは、毎月の会費で売上が固定されます。つまり、お店を支える常連さんですよね。じゃあ、僕が得意なことやんって思ったんですよ」


アホウどりを経営しながらも、新たな業態へと舵を切ったジャイさん。これからも、お客さんたちがアホになって楽しめる場所を作り続けたいと話してくれました。



コロナ禍で下がった飲食店のイメージを上げたい。アホウどりのこれから


竹炭を入れたオリジナル唐揚げ「火山唐揚げ」を作るジャイさん。(現在は提供していません)


2022年4月にスポーツジムのオープンを控えるジャイさん。これからのアホウどりについて、目標を伺いました。


「コロナの影響で、飲食業界全体の地位が低くなっているように感じます。もちろん、アホウどりをもっと増やしていきたいけれど、それは今ではありません。今は、イメージが悪い飲食業界の印象を上げていきたいと考えています」


感染対策が難しく、大好きな飲食店へのイメージがどんどん悪いように進んでいる状況に、悔しさを滲ませるジャイさん。しかし、立ち止まってばかりはいられません。


「もちろん、アホウどり以外にもお客さんにアホになって楽しんでもらうサードプレイス作りは、どんどん進めていきたいです。次にやりたいなと思っているのは、銭湯。京都の銭湯は450円というコスパの良さで、今流行りのサウナはもちろんのこと、電気風呂やジャグジーもついているんです。それも一つのサードプレイス。アホの精神をベースに、これからもおもろい社会を作っていきたいです」


現在、スポーツジムのオープン準備に取り組みながら、次に目指すサードプレイスの構想をすでに描いているジャイさん。「アホは地球を救う」というコンセプトを大事に、これからもお客さんがアホになって楽しめる場所をどんどん生み出してほしいな、と感じました。



泉川武士さん(アホウネーム:ジャイ)

株式会社アホウプロジェクトの代表。現在、京都市内に「京都炭火焼鳥アホウどり」を3店舗経営。2022年4月には、次世代型スポーツジム「LifeFit 24h Smart Gym 京都西大路御池店」をオープン予定。「アホは地球を救う」をモットーに、お客さんがアホになって楽しめる居心地の良い場所を提供し続けている。


株式会社アホウプロジェクトホームページ

https://www.ahou.co.jp/


公式Youtubeチャンネル

アホウどり【アホへの道も一歩から〜アホイチ〜】

https://www.youtube.com/channel/UCeGhL_OUJnrzwWaMekeq7Lw


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LifeFit 24h Smart Gym 京都西大路御池店

https://lifefit.tech/kyotoichijoji



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