鎌倉駅から御成通りを歩いて3分ほど。世界各国のクラフトビールとアートを販売する酒販店「バナバサ」があります。一見するとおしゃれな立ち飲み屋さんのよう。しかしそれだけではない魅力がここにはあります。今回は美味しいビールをいただきながら、バナバサができた経緯やここから広がる文化のこと、オーナーの想いを伺いました。
まずは一杯。
「お話を始める前にまずは一杯どうですか?」とオーナーが勧めてくださいました。
バナバサには約100種類のクラフト缶ビール、クラフト瓶ビールが冷蔵されているほか、3種の樽生クラフトビールも用意されています。
私がお邪魔したときは、
・YOROCCO IPA SKYWALKER(5.5%)
・YOROCCO(5%)
・FOUR WINDS SOUR NECTAROUS(5.5%)
・OIZUMIKOJO KOMBUCHA YUZU(0%)
というラインナップ。アルコールだけでなく、ノンアルコールも提供されているところに、オーナーの優しさを感じます。
「コンブチャ=昆布茶」かと思いましたが、そうではありませんでした。コンブチャは、お茶を発酵させた爽やかな酸味が特徴のドリンクなのだそう。酵素、ポリフェノールといった栄養素が凝縮されていて腸などにとてもいいのだとか。大泉工場さんがつくるコンブチャは、人工甘味料や人工香料、着色料も使っていないということで、なおさら体によさそうですね。
アルコールもノンアルコールも魅力的ですが、私はお酒が大好きなので、アルコールをいただくことにしました。クラフトビール初心者であることをお伝えすると、鎌倉のブルワリーで作られている「YOROCCO(ヨロッコ)ビール」がおすすめだと教えてくれました。飲んでみると、すっきり・さっぱりとした味わいで苦味が無く、なんとも爽快感のあるビール!私はこれまで、ビール独特の苦味があまり得意ではありませんでしたが、このビールはとても好みに合っていて、ゴクゴク飲んでしまいました!
お店に置くビールの基準とは
ほかのタップのビールもさぞ美味しいのだろうなと思いつつ気になったのが、ビールの選び方。世界に数多あるクラフトビールの中から、オーナーはどのような基準で選定し、お店に置いているのでしょうか?
「ビールを選ぶときは“つながり”を大切にしています。なかなか手に入らないような、有名どころのビールを仕入れるという選択肢もありますが、顔と顔を見て、お互いのお店に行ったり来たりして、関係性をもったところのものを中心に置きたいと思っています。
インポーター(輸入業者)さんともつながりがあったり、仲が良かったりするんですよ。だからこそ、彼らが仕入れてくれるビールは信頼できるんです。」
人気のビールを売って話題性をもたせることもできますが、オーナーはあえてそれをせず、信頼関係で結ばれたものだけを店頭に並べているのだそう。このお話を聞いたら、バナバサ全体が生産者の愛に包まれているような感じがして、温かい気持ちになりました。
ビール専用マイボトル「グラウラー」との出会い
オーナーとしばらくお話を続けていると、大きな水筒のようなものを持ったお客様がご来店。なんとバナバサでは、生クラフトビールの持ち帰りができるのだそうです。
輸入代理店を経営しているオーナーは、世界最大規模のアウトドアの展示会で、ビール専用のマイボトル「グラウラー」に出会います。大きくて、ハンドルがしっかりしていて、モデルによっては45時間もの間ビールを冷やしておくことができるグラウラー。コロナ禍の今でこそ認知度は広まりましたが、当時はグラウラーを扱う国内メーカーがなく、ビール業界にさえも知られていなかったと言います。
そこでオーナーは、「自分でお店を持ち、ショールームのような感じでビールの持ち帰り文化を広めたい」と考えました。
2019年にバナバサを開業してから約3年。ご近所にはビールの持ち帰り文化がすっかり浸透しています。中には、グラウラーを2個持ってくる方もいらっしゃるそう。こんなに美味しいビールが家庭でも飲めたら、おうち時間やアウトドアの時間がより一層楽しくなりそうですものね。人とのつながりを大切にするオーナーがいるからこそ、また買いに行きたくなる方も多いことでしょう。
“つながり”を大切にしたギャラリースペース
バナバサには、ビールだけでなくギャラリースペースが存在しているのも特徴です。置かれている作品は、ビール同様、オーナーとつながりのあるアーティストのもの。約1ヶ月ごとに入れ替えているという作品の種類はさまざまで、絵画のときもあればミニチュアフィギュアのときもあります。
アートをつまみにお酒をいただくのも、なかなかおしゃれでいいですよね。展示作品は販売も行われているので、お気に入りのビールと一緒にお持ち帰りするのもいいかもしれません。
しかしオーナー、アーティストの方々ともつながりがあるとはすごいですね。
「アーティストの方々は、前職でのつながりや、アウトドア、サーフィンでのつながりで出会った方々が多いですね。お店のロゴもそうですし、2周年記念のグッズなども制作してくれたんですよ。」
このお話の最中も、お店の前を通るご近所さんに優しく声をかけるオーナー。私はそんな姿を見て、誰もがこのお店を好きになる理由が分かった気がしました。アーティストの方々も、単なるつながりとしてではなく、1人の友人として、オーナーやこのお店に関わっているのでしょう。
必ず買って帰りたくなるクラフト缶・瓶ビール
バナバサに置かれているクラフト缶・瓶ビールについても伺いました。5段ある冷蔵庫の中に並べられているものは、どれもこれも珍しくてアーティスティックなジャケットばかり。見ているだけで心が踊ります。
「生産者は、中身だけでなくジャケットも一生懸命作っているポイントなんです。どのビールを買うか迷ったら、“ジャケ買い”してみるのも面白いですよ。」
バナバサは居酒屋ではなく酒販店なので開栓料がかかりますが、この中から“ジャケ買い”して、あれこれ飲んでみるのも楽しそうです。さっぱりした味のものからしっかりした味のものまでいろいろな種類があるので、自分に合うものを探してみたいですね。もちろんお土産用にも喜ばれそう。飲み終わったあとも、瓶や缶を捨てずにコレクションしておきたくなります。
バナバサのこれから
最後に、これからの展望を伺ってみました。
「バナバサは今のままがいいですね。この地で暮らして、この地の人たちとつながって、この地でいいことをして。“サポートローカル”的なことがずっとできればいいなと思っています。本当は鎌倉だけではなくて、日本全国がそうなっていければいいですよね。
あとは、グラウラーがもっと浸透していったらいいなと思います。その地に根ざした素敵なブルワリーが日本にはたくさんあります。しかしながら、カンニングやボトリングには非常にコストがかかるんです。そこでグラウラーが浸透して、カンニングやボトリングをしなくてもビールを持ち帰れるようになれば、みんながいい関係になりますよね。」
バナバサは街の一角にある小さな酒屋さんです。しかしそこには絶えず、さまざまな人やモノが行き交っています。鎌倉を訪れた際は、バナバサに溢れる想いを感じながら、美味しいクラフトビールを嗜んでみてはいかがでしょうか?
■ ビール+ギャラリー バナバサ(VANAVASA)
住所
〒248-0012
神奈川県鎌倉市御成町2-9-1B 1F
電話番号
0467-73-7076
営業時間
月-土
12:00-20:00
日
12:00-18:00
定休日
年末年始
アクセス
JR鎌倉駅から徒歩約3分
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