知人の病気がきっかけで始めたヨガインストラクター

ヨガインストラクターの資格を取ってから20年以上というキャリアを誇るMinekoさん。スタジオやオンラインでのレッスン、メディア出演など、幅広く活躍されています。まずは、ヨガとの出会いについて伺いました。



自身のケガがきっかけとなって始めたヨガ。現在では20年以上のインストラクター歴に。 


「小学生から短大まで、陸上で短距離の選手をやっていました。短大時代にケガをしたときにヨガをしたのが最初の出会い。普段から体を動かしていた私にとって、どちらかというとあまり動かなくて、内側の静けさを感じるヨガに魅力を感じました。」


「今から20年以上前の話ですが、当時は社会情勢的にヨガに対するイメージは良くなくて、ひっそりと都内のヨガスタジオに通っていました。また、現在のようにヨガがしっかりと浸透していなくて、当時はどちらかといえばストレッチ体操・健康体操といった感じが強かったように感じます。」


ヨガに出会ってからは夢中で取り組み、いくつか資格を取り始めていたMinekoさん。インストラクターを目指すきっかけとなったのは、近しい人の病気がきっかけだったとのこと。


「親しくしていた人で、リンパ系の病気で腕が上がらなくなっていた人がいました。何かケアする方法はないかと思い、腋窩リンパを刺激するようなヨガを実践してみたら、みるみる改善。それまでは自分自身の心や体のケアのためにやっていたのですが、ヨガって人の役に立つんだな、と知るきっかけになりました。人って、身体が動くようになったら元気になるじゃないですか。これは、何かお手伝いができるのではないかと思って、持っている資格でヨガを教えたいなと考えるようになりました。」


最初は自宅にご友人を2~3名呼んでレッスンを始めたというMinekoさん。そのレッスンが好評で、自然と広まっていったとのこと。


「人が元気に、笑顔になれるのがこんなことでできてしまうのだと思ったら、もっと困っている人とか必要としている人にヨガを伝えていきたいなと思ったんですよね。」



心と体のつながりを知ってもらいたい

スポーツジムで気軽に受けられるレッスンや、オンラインでの資格取得など、近年は多くの人がヨガに触れやすい環境が整っています。その一方で、ヨガ本来の考え方や魅力が見失われていないか危惧をしているとのこと。



老舗旅館 箱根吟遊での『新月ヨガ』での一幕。ヨガの心に作用する部分を大切にしているのだそう。


「最近は、本来のヨガがアレンジされている気がしています。インドで発祥した心と体の健康のためのメソッドがアメリカに渡り、エクササイズ的になって日本に入ってきているのかなと。エクササイズの要素を含めると『ヨガは汗をかく運動』みたいな捉え方になってしまいます。スポーツクラブやジムなど、ヨガを実践する場所によって目的が変わってくることは理解していますし、いろいろなヨガがあってそれはそれで楽しいのですけど、ちょっと違うヨガだなと。」


「私としては、ヨガによって心が落ち着いて、安定して、そして身体が同時に動くようになっていくものだと考えています。生徒の皆さんには、心と体のつながりを知ってもらえると良いかなと思っていますね。」


内側の静けさに魅力を感じてヨガを始めたMinekoさんは、ヨガの心に作用する部分を大切にしているのだそう。そんなMinekoさんが普段のレッスンで心掛けていることは、ポーズの完成度ではなく、ポーズに向かっていく過程だと語ります。


「生徒さんからは『Mineko先生は他の先生が言わないことをたくさん言ってくれる』という声を頂きます。ヨガってスポーツっぽくなっちゃうと、どうしてもポーズに向かっていこうとするじゃないですか。ポーズがすべてではない、ポーズの完成度が100%じゃなくても、たとえ70%であったとしても、そのポーズに向かっていく過程での呼吸だとか、自分の心の気づきだとかが大切ですよね。」


「ただポーズをとるのではなくて、関節1つ1つのポジションだとか、体の使い方を理解したうえで自分のヨガをしていくというか、今の自分に合う動き方をしていくことが、結果としてヨガの良さや心の気づきを得られるということを、レッスンで伝えるようにしています。」



箱根吟遊でのオンラインヨガへの挑戦

Minekoさんの主な活動場所の1つに、箱根の老舗旅館『箱根吟遊』でのオンラインヨガがあります。元々は宿泊客や日帰り客を対象にレッスンを実施していたものが、コロナ禍により中止を余儀なくされたことで始まったオンラインレッスンなのだそう。



箱根吟遊5階ロビーでのオンラインヨガの様子。


「2020年の5月は緊急事態宣言中でしたよね。緊急事態宣言で箱根吟遊のすべてのプランが中止になっただけでなく、箱根の町自体がクローズになってしまいました。ただ、5月の箱根は新緑がとてもきれいな時期で、若女将と『こんなに緑がきれいな時期に、お客様が来られないのはもったいないね』と話していて。それが、インスタライブでレッスンを配信するきっかけでした。」


「当初は5月の緊急事態宣言中だけ配信する予定だったのですが、これがものすごく好評で。毎週木曜日の朝の20~30分だけ、吟遊の景色を眺めながらヨガで軽く体を動かして、おうち時間を楽しんでいただくためにと思って始めたら、やめられなくなっちゃって今に至ります。」


若女将の語り口も魅力的な箱根吟遊のオンラインレッスン。現在ではとてもスムーズな配信ですが、開始当初はかなり試行錯誤をしたとのこと。


「オンラインレッスンを始めた当初は今みたいにスムーズにいかず、いろいろ難しかった。インスタライブを始めた当初は箱根吟遊のインスタグラムのフォロワーが2500人ぐらいで、知り合いに伝えて観てもらっていました。普段私がレッスンしている生徒さんからは『もっと動いてほしい』とか、逆に『もっとゆっくりじゃないと動けないわ』など、レッスンの強度についての意見もいろいろ入ってきて、とにかく試行錯誤しながらやっていました。」


「ただ、若女将と話していて感じたのは『いつもの箱根吟遊の自然を感じながらのヨガが、一番伝えられるよね』ということ。上級者も初心者もバランスよく楽しんでいただけるということで、レッスンは現在の強度に落ち着きました。」


箱根吟遊のインスタグラムを見ていると、5階のロビーからの景色がとても印象的。ただ、オンラインヨガでは箱根吟遊の魅力を伝えるために、毎週場所を変えているとのことでした。



表情豊かな自然が、箱根吟遊の魅力の1つと語るMinekoさん。


「吟遊のオンラインヨガは、毎週場所が変わるんです。スパでやってみたり、休館日には大浴場でやってみたり。箱根吟遊はなかなか予約が取れない宿なので、吟遊を知らない方にも、吟遊の中をいろいろ見てもらいたいということで、いろいろな場所から配信しています。お部屋の中も見ていただくこともあるんですよ。」


「吟遊は週に1回お花を生けていて、今は少し早めの桜を生けてあります(取材時期は2月中旬)。4月になれば山桜が咲いてきますし、11月下旬は紅葉がすごくきれい。12月には本物のもみの木を小田原から持ってきて飾りました。オンラインヨガをやっているところはたくさんありますけど、どうしても室内の閉鎖的な空間になってしまうじゃないですか。そのイメージを外したくて、吟遊にしかできない、四季折々いろいろな景色を楽しんでいただけるオンラインヨガにできればと思っています。」


箱根吟遊のオンラインヨガは、Minekoさんの丁寧な言葉のおかげで、初心者でも安心して参加できるプログラム。筆者も実際に参加しましたが、キレイな景色も相まって、すがすがしい朝となりました。



ジムでのレッスンやメディア出演など幅広い活躍

Minekoさんは、様々な場所でレッスンを提供するフリーのヨガインストラクター。現在の主な活動についても伺いました。



スポーツジムでの青空ヨガの様子。


「吟遊のほかには、小田原のスポーツクラブのスタジオやホットヨガスタジオ、Ignite(イグニット、2022年3月現在は都合により休業中)というパーソナルジム、新松田のFITrain24(フィットレイン24)という24時間制のジムでのレッスンが主な活動です。小田原のサークルでのシニアヨガや、都内でのレッスン、鎌倉のスタジオのオンラインレッスンもやっています。」


「企業とのお仕事では、大塚製薬さんの女性向けのオンライン講座にも出演させていただきます。また、FM鎌倉では瞑想の話をさせていただきましたし、東京MXさんの番組がFITrain24で撮影をした際には、テレビ出演もさせていただきました。」


スタジオ内でのレッスンにとどまらず、幅広い活動をされているMinekoさん。神奈川県の健康寿命延伸の取り組みを推進する『未病アンバサダー』としての一面も。


ー「未病」とは?

 神奈川県では、心身の状態を健康と病気の二分論の概念で捉えるのではなく、「健康」と「病気」の間を連続的に変化するものとして捉え、全ての変化の過程を表す概念を「未病」としています。日常の生活において、「未病改善」により、心身をより健康な状態に近づけていくことが重要になります。

※ 神奈川県のホームページより引用


神奈川県の健康寿命延伸を推進する『未病アンバサダー』としても活躍。


「神奈川県には健康寿命延伸の取り組みとして未病改善の取り組みがあり、先ほどお話しした大塚製薬さんのオンライン講座もその一環です。県西地域(神奈川県西部)には自然がたくさんあるけれど、小田原や箱根が有名で、それ以外の場所にスポットが当たりづらい。そのため、未病の活動地として県西地域を強化しています。未病につながる食と運動と社会参加についてのコンテンツを、県西地域の施設や観光スポットを利用して撮影をしています。」


「また、コロナ禍前には社会参加の一環で、江の島周辺のゴミ拾いをしたり、SDGsに関連して、海で拾ったゴミでアートを作るという活動もしたりしました。私たちの日常の意外なところにSDGsがあるよっていうことと、未病ってつながるよってことをお伝えできればと思いながら活動しています。」


Minekoさんが現在お住いの南足柄市も県西地域の一部。県西地域では有名なお寺での『ご祈祷ヨガ』も素晴らしい活動だったとのこと。



最乗寺でのご祈祷ヨガ。現在はコロナ禍の影響で中止している。


「南足柄市には最乗寺という大きなお寺があるのですが、2016年~2018年には本堂でレッスンをさせていただきました。元々は神奈川県の黒岩知事から、大きい施設を活用していろいろとやってみたらどうかという提案があり、商工会の方が企画してくださり、ご祈祷とヨガと精進料理をセットにして2500円で開催しました。参加者は20名~30名の予定だったのですが、好評で70名~80名にまで増えました。現在はコロナ禍の影響で開催できていないのですが、また最乗寺での未病活動が再開できれば良いなと思っています。」



趣味の寺社仏閣巡りで日ごろの感謝の気持ちを再確認

日々忙しく活動されているMinekoさんの趣味は寺社仏閣巡り。「完全にマニアですね!」と語るほど好きな寺社仏閣巡りについてもお話しいただきました。


「寺社仏閣巡りは大好きで、週に4~5回は参拝してるんじゃないかな。東京でレッスンがあるときは目的地とは違う駅で降りて、近くの神社を参拝してから出勤しています。」


「参拝すると落ち着きますよね。ざわついていた心が落ち着くというか、その感覚がすごく好きで。日ごろから感謝の気持ちを忘れないようにという、誓いの参拝という意味合いもあるかもしれません。神社の御祭神、神様のつながりを把握してから神社に行っています。お寺であれば写経や座禅にも参加しますよ。」


言葉の端々から、寺社仏閣への愛情が伝わってくるMinekoさん。寺社仏閣巡りの趣味は、普段のヨガインストラクターとしての活動にも通じるところがあるとのこと。



日ごろの感謝を忘れないために参拝。


「ヨガには体を動かすだけでなく座学もあります。ヨガ哲学はわかりづらい、つまらないという人が多いですけれど、私はヨガ哲学やインドの神様のお話が大好き。ヨガ哲学のお話をレッスンで伝えることもあります。レッスンで話すと、ヨガの哲学に興味を持ってくださる生徒さんもいるんですよ。」



もっとも好きな活動は、地域住民に寄り添ったプログラム

多彩な一面を見せてくれるMinekoさんですが、もっとも好きな活動は、地域住民に直接関われる活動とのこと。



「地域での活動が一番好きです!」と話すMinekoさん。


「地域での活動が一番好きですね。最近の活動では、中井町(神奈川県足柄上郡)在勤・在住の方を対象にした健康ヨガ講座があります。中井町の講座は全14講座、1回10名様で計140名様が定員だったのですが、ありがたいことにすぐに満席となりました。一番人気があったのが椅子ヨガ。膝が痛いとか、ヨガマットの上に座れない人がほんとに多い。それでも体のために何かしたいと思っている健康意識の高い人がたくさんいることがわかりました。」


「私のレッスンを受けてくださった生徒さんからお声がけいただいて、昨年度から保護者の方対象の講座『PTA 家庭教育学級』でも講師を務めています。普段なかなか時間をとれない子育て中のお母さんたちにとって、少しでも癒しの時間や気づきの時間になれば良いなと思っていて。新型コロナウイルスの感染状況を見極めながらですが、今も継続しています。」


地域の方々への気遣いの言葉があふれるMinekoさん。ヨガを通して、参加者の皆さんの後押しができたらと考えているのだそう。


「地域での活動では、ヨガマットがなければだめかしらとか、YouTubeを観るだけだとわからない、こういうところに参加するからやる気が出るなど、いろいろな声を頂きます。家は日常が満載な場所なので、日常から一歩離れてヨガをやりたいという方も多かったですね。初めてヨガをする方も多いので、呼吸をすると体がどんな感じになるかだとか、身体の気づきを得るという体験の良いきっかけに、私がなれればと思っています。そういう体験を通して、背中を押せたりしたら良いなと思って。参加者の皆さんが生き生きとなって、カッコ良くなって帰っていく姿がとてもステキでした。」



地域の方やヨガを必要としている方に寄り添い続けたい

インタビューの最後にヨガインストラクターとしての今後の展望を伺うと「今までと変わらないです」との答えが。



Minekoさんの言葉からは、様々な人に寄り添いたいという優しさが感じられました。


「大きい仕事というとおこがましいけど、メディアに出演させていただいたり、企業からお声をかけていただいたりするのももちろん嬉しいです。ただ、私が一番大事にしたいのは地域の方とのつながりとか、本当にヨガを必要としてくださっている方の手助けができればということ。」


「中井町の現状を見て最近スポーツクラブに提案したのは、椅子ヨガのプログラム。スポーツクラブも高齢者の利用が進んでいるので、椅子ヨガだったり、深く座らなくてもできるヨガを提案していったりしています。」


インストラクターを始めたきっかけである『ヨガが何かの手助けになるのでは』という想いを、20年以上経った今でも大切にしているMinekoさん。

「これからも地域の方や、ヨガを必要としている人に寄り添ったレッスンを続けていきたいですね。」



Minekoさん

神奈川県小田原市生まれのヨガインストラクター。学生時代に取り組んでいた陸上競技でのケガがきっかけでヨガと出会う。知人の病気のケアを通して「ヨガが何かの手助けになるのでは」と感じインストラクターとしてのキャリアをスタート。現在は地域での活動をはじめ、スタジオでのレッスンやメディア出演など、様々な活動を通してヨガの魅力を伝えている。


Instagram

@2417mineko


箱根吟遊 Instagram

@hakoneginyu



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