兵庫県「香美町(かみちょう)」は、人口約1万7千人の小さな町です。小学校は1学年1学級の小規模校が点在。しかし、あえて統廃合をしないまま、日々の学習指導が行われています。その理由は何なのか?学校ではどのような学習指導が行われているのか?


「香美町教育委員会」のお2人にお話を伺いました。香美町の魅力や教育の特徴が分かる記事になっていますので、今後一家で移住をお考えの方は、ぜひご一読ください。



香美町はこんなところ

香美町は、日本海に面した兵庫県北部の町です。2005年(平成17年)に香住町、美方町、村岡町が合併して誕生しました。


香美町の魅力は、何と言っても豊かな自然環境と豊富な地元食材。


町内面積の約6割が「自然公園区域※」に指定されているほか、「ランクAA」の最高水質を誇る「三田浜海水浴場」や「香住浜海水浴場」、アウトドアもウィンタースポーツも楽しめる山々など、365日自然に触れ合える環境が整っています。


自然豊かであるからこそ、新鮮な海の幸や山の幸にも出会えます。特別な日でなくでも、夏はイカ、冬は香住ガニといった水産品が楽しめるほか、但馬牛や地場野菜など、さまざまな美味しい食材が楽しめます。


※自然公園区域…自然公園地域とは、優れた自然の風景地で、その保護および利用の増進を図る必要がある地域(引用:国土交通省)



香美町の教育の特徴を聞いてみました!

香美町のホームページの中で目を引くのが、「ふるさと教育」や「学校間スーパー連携チャレンジプラン」といった教育事業。豊かな自然を誇る香美町だからこそ、ふるさと教育でどのようなことが行われているのか気になります。また、学校間スーパー連携チャレンジプランという聞き慣れない事業にも、非常に興味が湧きました。


そこで、香美町教育委員会の清水さんと、丹後谷さんにお時間をいただき、詳しいお話を伺いました。



ふるさとの資源を生かした授業を行っている

まずは「ふるさと教育」でどのようなことが行われているか、尋ねてみました。


「香美町では、『ふるさと教育』と称して、ふるさとの資源を生かした授業を行っています。例えば小学3年生と中学校で行う『田植え・稲刈り体験』。地域の方の協力をもとに、1年かけてお米を育てます。たくさんの苦労を経て収穫するので、自然と食べ物を大切にする心が育つんですよ」


食に困った経験のない現代の子どもたちは、食べ物を粗末にしてはいけない理由がよく分からないという話を聞くことがあります。だからこそ、田植えや稲刈り体験を通して身をもって、食べ物の有難みや大切さに気付くことができそうです。


「スキー場の近くの学校では、年に3〜4回スキーの授業もあります。スキー場が近くにない学校でも年に1回(※香住小学校のみ小学校4年生で1回)は、スキーを楽しんでいます。そのほか、川の水中調査をしたり、町の産業や自然を調べて冊子にしたり、中学2年生で5日間の職場体験に行ったり、地域の伝統的な行事・事柄について詳しい人に講演してもらったりと、香美町でしかできない教育を行っています」ということも教えていただきました。


言葉ではなく、地域ならではの体験を通して、ふるさとのよさを伝える。そんな教育方法もまた、香美町ならではでしょう。地域の資源を生かし、普段の生活では養われにくい感性を養えるのが、香美町の教育の特徴なんですね。



小規模校だからこその取り組みがある

「香美町の幼稚園や保育所、小学校は少人数クラスがほとんどなので、一人一人の個性や学力に合ったきめ細やかな指導が受けられます。特に小規模の学校は、学力が高い傾向にありますよ」と清水さん。

小規模校を残し続けているのも、こうしたメリットがあるからなんですね。


しかし、1学年10人以下という小規模校ならではのデメリットもあるはず。例えば、音楽の授業で合唱ができなかったり、体育の授業でサッカーや野球の試合ができなかったり、さまざまなアイディアや考え方に触れ合えなかったり。これらに対し、どのように対応しているのでしょうか。


わくわく交流会

「実は香美町では、多人数と関わり合えるような取り組みも行っています。例えば『わくわく交流会』。香美町内の[幼稚園・保育所・認定こども園]がA・B・C・Dの4グループに分かれ、それぞれのグループ内で、仲良し遊びや体操、クッキングなどを月1回、年間10回程度行っています。小さな子どもたちは、この交流会でたくさんの友達と出会うことで、さまざまな成長を遂げているんですよ」


総園児数10人以下の幼稚園もあるという香美町。月に1度は知らないお友達に出会うことで、勇気を出して声をかけたり、違う価値観を受け入れたりしていくのだそう。町をあげてそのような取り組みを行ってもらえるのは、大変ありがたいです。


学力向上ステップアップ授業


「小学校では、『学力向上ステップアップ授業』を行っています。これも、わくわく交流会同様に香美町内の小学校を2つのグループに分け、各グループ内の同学年同士で合同授業を行っています。年に10回程度(約30時間)行われるこの授業では、小規模校ならではの人間関係の固定化を崩し、コミュニケーション能力を養ったり、大勢の前で意見を述べたり、聞いたりする力が育まれています」


学力向上ステップアップ授業は、子どもたちからの期待感も高いほか、90%もの保護者が理解を示しているのだそう。いずれ中学校で一緒になるメンバーと交流しておくことで、「中1ギャップ※」も起きづらくなります。子どもたちにとって、非常に意義のある取り組みと言えるでしょう。


※ 中1ギャップ…小学校を卒業して中学校へ進学した際、これまでの小学校生活とは異なる新しい環境や生活スタイルなどになじめず、授業についていけなくなったり、不登校やいじめが起こったりする現象のこと(引用:新興出版社)



ふるさと給食を通して食育をする

子どもたちは学校給食でも、ふるさとのよさを味わっています。というのも香美町の給食は、地産率が非常に高いのが特徴。米と味噌においては100%、牛肉は但馬牛が80%、魚介類は80%、野菜は30~35%、地元産を使用しているというのだから驚きです。毎日美味しいものが食べられるわくわく感だけでも、学校に通うのが楽しくなりそうです。


移住を希望する方は試食もできるとのこと。移住先を選ぶ際の一助として、食べに行くのも1つの手です。


「香美町の食育の中でも特徴的なのが、中学校での『魚の3枚下ろし体験』です。皆が魚をさばけるようになってから、卒業していくんですよ」ということも、清水さんから教えていただきました。


いまや検索ひとつで魚のさばき方が分かる時代。それでも、中学生のうちに本物の生魚を触り、実際にさばく経験は、動画からは得られない価値があります。また、海の命をいただいていること、普段自分たちが食べている料理には手がかかっていることなど、子どもたち自身もたくさんの学びを得るでしょう。食を通してこうした感性を育んでいるところも、香美町の魅力の1つです。



土曜日だって大切な学びの時間

香美町では、土曜日にも遊んで学べる「土曜チャレンジ学習事業(小学生対象)」も、年10回ほど開催されています。町内2つの公民館で行われるこの事業では、地域資源を活かしたアウトドアやスポーツ・環境体験などができます。


地域の人々をはじめ、地域活動やアウトドアスポーツに取り組む地元・村岡高校の高校生も参加しているため、異年齢の人々とつながれる点も大きな魅力。兄弟姉妹がいない子どもにとっても嬉しい時間になりそうです。



特色ある2つの高校がある

香美町で特色あるカリキュラムを展開する2つの高等学校についても伺いました。香美町には「香住(かすみ)高校」と「村岡高校」があり、香住高校では、県下唯一の「海洋科学科」として海洋実習など多彩な教育を行っています。村岡高校では「地域アウトドアスポーツ類型」の中で、冒険教育やトレーニング理論などが学べます。


どちらの学校も、地域で活躍する力が育まれるほか、志した分野でグローバルに働く力も身につきます。特色ある高校を目的に、香美町へ移住する方もいるそうですよ。



移住をお考えの方へ

ここまでたくさんのお話を聞かせてくださった香美町教育委員会のお2人から、最後にメッセージをいただきました。


「香美町には、遊園地のような施設はありませんが、海や川で泳いだり、山に登ったり、スキーやキャンプをしたり、ものすごく楽しいです。あとは食べ物が本当に美味しいですよ!」「香美町では、次の時代を担う子どもたちに焦点を当てた教育を今後も続けていきます。まずはぜひ遊びに来ていただいて、香美町のよさを味わってみてください」


香美町には移住に関する相談窓口が用意されているほか、学校見学等も受け付けているとのこと。気になる方はぜひご相談してみてはいかがでしょうか。



まとめ

今回の取材を通して香美町には、自然の中でのびのびと子育てできる環境と、特色ある教育体制が整っていることが分かりました。「子ども時代にしかできない体験をたくさんさせてあげたい」とお考えの方は、香美町を移住先の候補に入れてみてはいかがでしょうか。


また、この記事でお伝えしきれなかった香美町の魅力は、まだまだたくさんあります。まずはホームページから魅力を発見してみてください。子育て支援施設や教育の情報についても詳しく掲載されています。


香美町との出会いが、皆さまの人生の一助となりますように。



・香美町移住定住ガイド

kamicho-ijyu.com


・香美町ホームページ

town.mikata-kami.lg.jp



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