「ここはただのリサイクルショップではありません。商品と一緒に思い出を売っている場所なんです」

「アデリアレトロ」という昔のグラスが、クリームソーダに使用されてインスタグラムで拡散されたり、若者が昔の服をオーバーサイズで着こなしたり、短い丈のワンピースが流行ったりするなど、一時期「昭和レトロブーム」のような状態になったレトログッズたち。

時代を感じる懐かしいグッズを取り扱うお店。「スマイル札幌店」の店主、嶋貫智樹さんにお話を聞きました。



おもちゃ屋からレトロリサイクルショップへ  

前職はレトロ雑貨ではなく、一般的なおもちゃ屋さんだった嶋貫さん。「これからずっと普通のおもちゃ屋さんを続けるのもどうなんだろうか」と悩み、次の事業をどうするか考えていた時、高校時代の同級生が道央の北竜に「スマイル」という、ブリキのおもちゃなどレトロな雑貨や珍しい商品を多数取り扱っているリサイクルショップを経営していた縁がありました。


それがきっかけで、嶋貫さんが個人的に昔懐かしいグッズを集めていたこともあり、札幌でも同じような店ができないかと考え、レトロリサイクルショップ「スマイル札幌店」をオープンしました。


「新たに0から別の仕事をするのは年齢的にも大変です。でも、こういうレトロな雑貨というのは、自分が生きてきて実際に触れて、その歴史を間近で見てきた記憶があるものなので、懐かしいって思ってもらえるような商品は分かります。だからおもちゃ屋の経験と自分の“これ懐かしい!”、“これ好き!”という感性を活かせるなと思ったんです」と過去を振り返りながら、しみじみと語ります。



「思い出のやり取り」レトロ雑貨の架け橋でありたい  

当初は自分が好きで集めていたものが商品として並んでいましたが、レトロ雑貨に魅せられた常連のお客様に「こういうのがあるんだよ」「今はこれがすごい人気あるよ」などと教えてもらっていき、いつの間にかどんどん商品が増えていったといいます。

ここまでになったのはお客さんのおかげですと笑顔で話す嶋貫さん。


この時、スマイル札幌店と通常のリサイクルショップとの違いを教えてくれました。

「普通のリサイクルショップはいらないものを売って換金する場所です。ですが、スマイルの場合は違います。持ってきてもらうものが、本当は手放したくないけど止むを得ない事情で泣く泣く手放すものばかりなんです。だから『次の人に大切に使ってもらえるだろうから、スマイルに持っていこう』というお客様の思いも一緒に持ってきてもらえます」


リサイクルショップのような金銭的なやり取りだけではなく、レトロ雑貨ファンから別のレトロ雑貨ファンへ、思い出のやり取りができる架け橋のようなお店であり、ずっとそんな存在でありたいと話します。



コロナ禍でも全国の昭和レトロファンが助けてくれた  

徐々に認知されるようになり、お店を移転しましたが、その矢先にコロナ禍へ突入。来客が大きく減ってしまいました。ですが、そんな時でも全国のレトロ雑貨のファンが助けてくれたといいます。


「今は通販ができるので、全国のお客様に商品を届けることができます。ありがたいことに、全国から商品の注文をいただいたので何とか経営は続けられています。本当に皆さんのおかげなんです」と、レトロ雑貨のファンへ感謝を口にしていました。

根強くというより“これを誰かが必要としてくれるはずだ”と信じ、どんな時もしつこくやってきたと、自信をのぞかせます。



また、今のスマイル札幌店に移転する前、北海道胆振東部地震で被災した際は「もう中身の雑貨は全てダメになっちゃったな」と諦めかけていましたが、入口付近にあって倒れたりた雑貨の面々を片付けて中に入ると、中にあったほぼ全ての雑貨は何も動いていなかったといいます。


「瓶とかは割れちゃったものもありましたけど、それ以外はほとんど無傷でびくともしてませんでした。雑貨って古いものなら、戦争を乗り超えてきたものも多いんですよね。だから地震くらいではそうそう壊れないぞっていう気合いを感じました。こういう“人の思い”って想像以上にすごいんだなぁと感じましたね」と、嶋貫さんは笑いながら話してくれました。



流行ってはいるけどブームではない  

近年では昭和レトロブームで注目されるようになったレトロ雑貨。

現在の10代や20代の若者が、親戚の家ですら見たことがないような1970年代に流行ったものが“見たことがない新鮮なもの”として受け入れられ、ファッションに取り入れられたり、インスタグラムに写真が多数投稿されたりするなど話題になりました。


実際にスマイル札幌店でも、昭和の雰囲気を作るために、店舗経営者の方がディスプレイとして懐かしいものを買い求めるケースも増えたのだとか。


ですが、嶋貫さん曰くこれはブームではないと話します。


「ブーム自体はすでに終わってるかなって感じますし、なにより私はブームという捉え方はしていません。ブームっていうのは一過性で、すぐに終わってしまうので。あくまで若者に興味を持ってもらえたいい機会だったなと割り切っています」と冷静に語ります。


これでレトロ雑貨を取り扱う店が増えたり、お店がもっと大きく発展したりする必要はなく、この世界観が好きな方々が増えてくれればそれでいいと思いの丈を語り、とにかくスマイル札幌店を長く続けていくことを第一に考えて嶋貫さんは行動しています。



昭和レトロの生き証人に  

最後に、スマイル札幌店の展望について伺いました。


「昭和レトロの生き証人になりたいです。たとえば小学生が興味本位で来て、これは一体なんなんだろうと疑問をもちますよね。そんな時、これは当時こういう風に使われていたんだよっていうことを伝えられる存在は絶対に必要だと思っています。そしてスマイル札幌店ならそれができるし、そういう存在でありたいです」と穏やかな口調で嶋貫さんは話します。


また、取材中に嶋貫さんは事あるごとに、来てくれる皆に感謝の言葉を述べている様子が印象的でした。


「このお店があるのはお客様のおかげですので、少しでも期待に応えられるようにしたいです。全国のレトロ雑貨ファンが欲しいと思えるものを見つけて、提供していきたいですね。今、日本は大変な状況ですけど、ここにある雑貨たちも日本の歴史を長い間見守ってきているので、その雑貨たちの前では私がつらいなんて思ってはいけないなと。おかげでコロナ禍でも店を何とか続けられているので、これからずっと恩返し営業です」


札幌市にひっそりとたたずむレトロ雑貨店は、たくさんの人の思い出と共に今日も営業を続けています。



■ スマイル札幌店


住所

〒001-0027

北海道札幌市北区北27条西3-4-7のりたマンション102


電話番号

011-717-2467

(現在コロナ禍により、入店が予約者優先となっています。事前に電話にて連絡するようお願いいたします。※2022年5月現在)


営業時間

11:00-18:00


定休日

不定休


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