「初めまして」の挨拶には欠かせないアイテム、それが名刺です。ビジネスにおいて、自分を知ってもらうためのツールとして、大事なものといえます。


デザイナー・イラストレーターであるfumikoさんは、名刺を通してその人の雰囲気や人柄を伝える、似顔絵イラスト名刺を制作しています。結婚や出産、秋田から山形への移住と、ライフスタイルが変化しても仕事を続けられるのはなぜなのでしょうか。“自分らしく働く”ことを模索し続けるfumikoさんに、仕事に対しての原動力やこだわりについて、お話を伺いました。



会社員としての多忙な日々。夫の転勤を機に専業主婦へ


2度の出産を経て、現在は幼稚園児となった男児2人を子育て中のfumikoさん。


秋田市内の高校を卒業後、地元の某ビジネスアウトソーシング会社へ入社。数年でスーパーバイザーに昇任し、チームの管理や運用、人材育成を担当していました。業務量や責任は大きく、日をまたいで仕事をすることも多くあったそうです。


結婚後、30歳を目前にし、今後のキャリアや人生について悩み始めたというfumikoさん。この頃、ご主人の転勤に伴い、11年勤めた会社を退社しました。引っ越し先は県内ではあったものの、見知らぬ土地に知り合いはおらず、どことなく寂しい日々。


そんな中、親しい友人が美容整体サロンを開業することになり、メニュー表やショップカードを作るお手伝いをしたfumikoさん。未経験の初心者でありながらも、友人と打ち合わせを重ね、四苦八苦しながらできたデザインを見た時に、喜びが湧きました。そんな思い出に残る経験をした後、fumikoさんは、結婚式場における衣装関係のパートタイム勤務を始めます。仲間にも恵まれ楽しく働いていたところ、第一子の妊娠が発覚し、体の大事をとり退職することに。出産後にはご主人の2度目の転勤により、地元である秋田市に戻ることができ、ほっと安堵したのです。



3度目の転勤で秋田県から山形県へ。

秋田市に戻った後は、元々勤めていた会社でパートをしながらも、育児をメインに生活をしていたfumikoさん。第二子を授かった後、ご主人の仕事の都合で秋田県から山形県に、住まいを移すことになりました。


「転勤族ということもあり、仕事に就いても長く働けないのではないかという不安と、退職するたびに会社に迷惑をかけてしまうという心配がありました」


いずれは手に職をつけて在宅で働きたいという思いを抱えながら、悶々とした日々を送っていたのです。男児ふたりの育児をしながらも、社会に出てもう一度頑張りたいという思いも沸いてきたそうです。



デザインとイラストとの出会い


山形県での暮らしに慣れてきた頃、友人のサロン開業の手伝いをした記憶をふと、思い出したfumikoさん。


「会社員時代に培ったパソコンスキルを活かして、デザイン関係の仕事ができるかもしれない」


SNSを通じて調べてみると、育児中の女性でも学べるデザインの講座があり「これならできるかもしれない」と、講座を受ける決心をします。



デザインの基礎を学び、奥深さや難しさ、そして楽しさを知った


コツコツと学び続け、知人から仕事の案件をもらい始めたとき。そろそろ自分の名刺を作ろうと、好みのデザインを探してみましたが、目を惹くものは見つかりません。それなら自分でデザインしてみようと、自分のことをイラストで表現してみたのです。


完成した名刺を見たご主人が「このイラスト名刺、売ってみてはどうだろうか」と、思わぬ言葉を掛けられますが、当時はまだ自信がなかったというfumikoさん。しかし前向きなご主人の後押しもあり、実際にクラウドソーシングで販売を始めたところ、似顔絵イラスト名刺は順調な売れ行きとなっていったのです。 



シンプルだけどリアル。今の時代に好まれるテイストを


繊細でありながら、その人自身の雰囲気が伝わる似顔絵イラストは、fumikoさんのこだわりが詰まっています。


「リアルすぎたら写真でいい。でも自分の名刺に写真が載るとなると、なんだか恥ずかしいですよね」


fumikoさんに名刺の制作依頼をするお客さんも、このように思われる方が多いそう。ショップのオーナーや美容師、フォトグラファーにセラピストなど、お客さんの職種も様々です。ナチュラルな色使いや優しい雰囲気のある似顔絵からは、まさにその人の“人柄”が伝わってきます。



お客様一人ひとりを、大切な友人のように近い存在と感じながら制作をする


クラウドソーシングでのやり取りは、顔の見えない取引。だからこそ、文面やメールで気持ちを丁寧に伝えることが、fumikoさんのポリシーです。感謝の気持ちを伝えるサンクスメールから始まり、入稿・発送まで、こまめな連絡を欠かしません。


「お客様が待っている間も、デザインが動いているというワクワク感を伝えたい。自分が大切な人だったら、こまめな連絡は当たり前のこと。お客様に対しても全く同じ感覚です」


無事に名刺が出来上がり、最後の仕上げは想いの詰まった手書きのメッセージ。お客様とのやりとりを思い出しながら、感謝の気持ちを伝えようと、必ず同封しているそうです。機械的な作業だとは思われたくない、嬉しいと思ってもらえることをやってあげたいという想い。そんな温かいお仕事スタイルから、fumikoさん自身の人柄がよく伝わってきます。



制作物を見たお客さんからのメッセージが、一番の喜び


fumikoさんの制作したイラスト名刺を受け取ったお客さんからは、感謝のことばが日々寄せられるといいます。


「制作物のお渡しから半年程経つと、私の名刺をリピート購入してくれるお客様がまた連絡をくれるんです。またお会いできたという喜びで、胸がいっぱいになります!」


自分自身で作り上げた制作物に満足してくれたという声が、今後の励みになっているそうです。


「今は似顔絵イラスト名刺を制作するのが、とにかく楽しいんです。イラスト制作を極めていきながら、コツコツと知識を積み重ねてきたデザインの仕事も、少しずつ幅を広げていけたらいいなと考えています」


女性ならではのライフイベントを経験し、一度は“働く”ことから遠ざかっていたfumikoさん。心のどこかで“働きたい”という思いがあっても、育児や家庭とのバランスに悩み、社会復帰を悩む女性も多いはず。 自身が培ってきたことや、興味のあることを深堀りすることで、新たな挑戦に挑むことができたのではないでしょうか。


「やってみたい!と思ったら、小さなことであってもやってみる。勇気を出して一歩を踏み出すことで、一気に世界が広がるんです」


会社員から専業主婦、そしてフリーランスのデザイナー兼イラストレーターに転身したfumikoさん。秋田から山形へ移住、そして今後も変わっていく住まいや生活に、以前のような不安はありません。なぜなら、彼女は日本のどこにいても、全国のお客さんにイラスト名刺を届けることができるからです。


人柄を伝えられ、コミュニケーションのきっかけにもなる、イラスト名刺。今日もfumikoさんは、その人のもつ雰囲気を引き出せるイラストを、描きつづけています。



fumikoさん


Instagram

@fumiko_design_illust



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