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“地方だからできる”学生起業支援のロールモデルを大分から全国へ



SEKIYA.soでの共同生活から起業や生き方のヒントを得る


利用者であるイラストレーターのゴードンさん。お気に入りの作品は「太陽の塔」がモチーフ


SEKIYA.soのコンセプトは“起業家シェアハウス”です。前編では起業実現に向けてサポートをしている様子をお伝えしましたが、必ずしも、必ずしも起業することを後押ししている訳ではないそうです。


「必ずしもみんなに起業を勧めてはいません。起業の選択肢もあると知ってもらうこと。反対に起業ばかり考えてる人たちには、他の生き方や選択肢があることを知ってもらいます。例えば、私の恩師や幅広い分野の専門家を外部ゲストとして招き、さまざまな視点からそのことを伝えています」


何から始めていいか分からない人には、好きなことからはじめると成功しやすいと寺本さんは語ります。


「起業はいきなり会社を作るわけではないと思います。好きなことに没頭し、自分が無意識的にやってしまうことを進めていくとみえてくるものがある。好きなことで起業すると成功しやすいと思います」


好きなことを突き詰めていると、周囲に支援者も集まりやすくなり、いつの間にか仕事につながっていることもあるのかもしれませんね。


「いま、実際に好きなことを形にしている利用者がいます。古着と絵を描くことが好きな学生の利用者のゴードンさんです。ジーパンに絵を描いていて、今日も朝6時まで描いていたらしいです。好きなことって時間を忘れて没頭してしまう瞬間があるんですよね。そういう人だからできることがあります」


ゴードンさんの制作風景。下書きなしのマジックを使って描いていくことで、素敵な作品が生まれている


「自分の興味のあることや得意な分野の専門性を上げていくきっかけになります。もしビジネスにしたいのなら、じゃあ一緒にやってみようか!って挑戦できます。ビジネス以外の方向性でも、一緒に考えることができるんです。結論としては、起業という手段をどう使うかを一緒に考えていけるのがSEKIYA.soの強みです」


SEKIYA.soにはイラストレーターや専門的な研究をしている学生など“Z世代の才能”が集まっています。何気ない雑談の中からインスピレーションが起き、それぞれが自身のアイデアを膨らませています。


シェアハウスで共同生活をしながら、ともに学び、成長しあえる仲間が増えていく。SEKIYA.soには何かに没頭でき、それを生き方のヒントとして考えられる素晴らしい環境がありました。



SEKIYA.soの強み


1階の憩いのスペース。利用者の新年の書き初めがずらりと並ぶ


SEKIYA.soの強みは、寺本さん自身が学生起業家であるため、同じ学生起業家としての経験や失敗談を聞くことができること、寺本さんの人脈から専門的なメンターに助言してもらえることです。


「私はウェブ系のことが得意なので、わからないことがあればすぐに教えられますし、コミュニティ内の起業家メンバーや専門分野に精通した学生たちと一緒にチャレンジしてお互いを高め合うことも出来ます。実際に経験した人の話を聞けることが強みで、例えば投資なら、投資専門家にすぐに相談できる環境が整っています」


コミュニティでは毎週1回食事会を開催しており、シェアハウス利用者以外の一般参加もできます。食事会の内容は、同世代も含めた幅広い世代の起業家同士でノウハウ共有や意見交換の機会を作るのが目的だそうです。


参加者からは「同世代の志しのある人たちと出会う機会がなかったので、実際に頑張っている人に会えるのは、モチベーションアップになる」「つながりが増え、切磋琢磨していける」といった声が多く寄せられています。


学生にとっては実際に経験した人からの体験談やアドバイス、同世代の仲間を増やせる環境はとても貴重ですね。



相手を理解することやコミュニケーションを大切にしている

シェアハウス運営やイベント企画をする中で、マネージャーの立場になることが多い寺本さん。人と人をつなぐことが多いからこそ、良い信頼関係を構築する基本である“コミュニケーション”を大切にしているそうです。


「私はシェアハウスやイベントに来る人の管理や仲介役を務めることが多く、コミュニティマネージャーとしての立場にあると思うんです。そのため相手の話をきちんと聞き、頷き、理解することを大切にしていますね。わからないことがあれば聞くという基本的なコミュニケーションを心がけているんです。また、初対面の人が多いため、相手が緊張しないように明るく挨拶し、積極的に話しかけるようにしています」


持ち前の明るさや高いコミュニケーション能力には感服します。寺本さんのサポートのおかげで、新しい出会いやチャンスがますます広がっていくでしょう。



失敗をすぐに改善して居心地の良い場所に


2階の大広間から見える「別府タワー」


SEKIYA.soでは、常時5〜10名ほどの利用者がいます。表立ったトラブルはほとんど起きてないそう。しかし、一度だけルールが変わるきっかけとなったトラブルが起きました。


シェアハウス内にはいくつかコミュニティがあり、当時は寺本さんがすべて一人で管理をしていました。一人で管理していると目が行き届かないことも。あるメンバーが、別のコミュニティに所属しているメンバーにきつい言葉を言い放ち、追放してしまうトラブルが起きたそうです。


「共同生活を送るうえで価値観の違いや、相手に言ってもなかなか聞いてくれないときや、理解してもらえないときは苦労しました。他の人たちを守るために、いい塩梅にルールを調整するのが難しかったです」


その後、コミュニティのマネジメント改善や、最低限のルールを提示するようになりました。それからは大きなトラブルもなく、スムーズな運営ができているとのこと。



共同生活からみえてきたこと


シェアハウスでの共同生活からみえてきたことがあると語る寺本さん。


「学生たちと共同生活をすることでみえてきたのは、セルフマネジメントができていないことです。具体的に、朝何時に起きていつまでに何を終わらせるというタスク管理ができてないんです。タスク管理ができると計画の見通しが立ちますが、学生の場合はやらなくてもいい状況にあります。社会に出る前にある程度身に付けておける環境に改善していくことが課題でした」


セルフマネジメントの第一歩である、タスク管理をすることは社会生活を送るうえで重要です。


学生がタスク管理から徐々にセルフマネジメントができるよう、寺本さんが独自のタスクツールを作成しました。そのタスクツールはシェアハウス利用者を中心に活用しており、自分が実行したいことの内容や理由、期限を明確にしてツール内に書き込むというものです。


「タスクツールを確認して、本当にやりたいのか本人に何回も聞きます。それでもやりたいなら、やってから後悔しようって声掛けをしています。その内容を私の方でメモしておいて、後からどうなったのか聞くんです」


このような取り組みのおかげで、タスク管理ができるようになった利用者は増えたそうです。


「作っても守らない人もいますけど、少しずつやる人は増えています。漠然と思いを話すだけじゃなくて、形作って可視化している人もいます。あとは周りの人がどう評価するかですけどね」



利用者が気づきを得られる瞬間がうれしい

シェアハウスが大好きで日々の暮らしを楽しく過ごしている寺本さん。やりがいを感じることは、利用者が何かに気づきを得られる瞬間だそうです。


SEKIYA.soでは、シェアハウスの他にも、イベントスペースとして大広間を1時間から一般利用できるサービスも行っています。


「イベント参加者や一般の利用者たちがふらっと来て作業したり、一緒に食事をして話したりします。『今はまだシェアハウスに住めないけれど、SEKIYA.soが好きです』って言ってくれますし、そんな短い時間の中でも気づきを得て帰っていくことがあります。その瞬間はすごくやりがいを感じますし、うれしいです。この場所を作ってよかったと感じます」


シェアスペースや食事会など気軽に集まって気づきを得られる場所。それがSEKIYA.soの魅力です。



“地方だから、できない”ではなく“地方だから、できる”

「地方だから起業できない、大分ではチャンスがないと学生にあきらめてほしくない。地方だから“できない”ではなく、地方だから“できる”を広げていきたい」と熱い想いを語る寺本さん。


「学生が孤立してしまうのは、大分だけでなく他の地域でも起きていることです。いかになくしていけるのか、試行錯誤しながら支援に取り組んでいます」


今後の展望につなげる第一歩がSEKIYA.soの運営です。


「今後の展望としては、学生が孤立しない環境づくりや起業支援の強化ですね。 地方だからできないという先入観をなくして“地方だから、できる”に周知させていきたい。“地方でも、大分でも起業できる”というロールモデル成功事例を作っていきたいです。いずれは全国展開していって、若者がいつでも何かに挑戦できるような環境を作っていきたい野望があります」


シェアハウス運営や支援を続けながらも、次の目標をしっかりと見定めています。すでに起業支援以外でも構想があるようです。


「今まではサポート側でしたが、私もプレイヤーとしてどんどん活躍していきたいですね。大分に眠っているような商品や歴史的なものを取り上げて、海外にリブランディングしていく、新たな付加価値を付けて販売するビジネスに興味があります。やはり大分は温泉や竹工芸が有名なので、そういったところから考えていきたいです」


熱い想いを形にして、自分らしく生きる。やりたいことを後押ししてくれる、素敵なメンターや仲間に出会えるSEKIYA.so。「SEKIYA.soは自分にとって一番欲しいものです。また、夢の形でもあるかもしれない」と締めくくりました。


利用者やイベント参加者から今も起業家が生まれています。寺本さんの野望が達成される日もそう遠くないでしょう。




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