大阪府池田市の駅前にある商店街「サカエマチ1番街」と、その周辺に店を構える商店主ら8人で、2021年4月に発足した活動グループ「しあえる」。


「協力しあえる」「応援しあえる」「紹介しあえる」を合言葉に、「楽しいこと、面白いこと」をするために集まったメンバーの方々に、「しあえる」とはどんなグループでどんな活動をしているのかを伺いました。



コロナ禍で世の中が暗くなっているから何か面白いことをしたいなあ

第1の目的は「まず自分たちが楽しむこと」。楽しいことをして周りを巻き込み、その輪を広げて池田市全体を盛り上げようという活動グループ「しあえる」は、大阪府池田市にあります。


メンバーは五十音順に「coffee P.S.」の上田章雄さん、「ロッソビーンズカフェ」の加藤健一さん、「リサイクルストア ビリーズ」の小笹佳紀さん、「Gallery 糸」の武田糸子さん、「池田麺彩」の原健二さん、「メガネの紫光」の藤田宏紀さん、「オアシス整骨鍼灸院」の三木高志さん、「池田市観光案所」の吉岡博充さんの8人で、阪急池田駅前にある商店街「サカエマチ1番街」とその周辺で働く商店主です。


月に一度ミーティングを開く(画像提供:しあえる)


「しあえる」が発足したきっかけや、なぜこの8人なのかを、「メガネの紫光」藤田さんが話してくださいました。


「2020年の暮れも押し迫った頃に、僕とロッソビーンズカフェの加藤さんと2人で話してたんです。コロナ禍の真っ只中で、街の雰囲気が暗くなっているから、何か面白いことをしたい。何かできないかなと」


その話が自然に広がっていき、いつしか世代が近い8人が集まっていたといいます。

「なんで、この8人か。特に意識はしておらず、自然に集まっていました」


コロナ禍で世の中は自粛ムードにあって、個人経営の商店が厳しい経営を余儀なくされていた時期でした。

「(お店のお客さんを)紹介しあえる」「協力しあえる」「応援しあえる」を合言葉にグループ名を「しあえる」に決め、2021年4月に発足。


余談ながら、「し」にアクセントを置くのが、正しい発音だとか。



「真面目にふざける大人たちの本気」を見せるおもしろ企画を次々に発信

「せっかく発足したんだから、何か企画を立ててイベント的なことをやろうじゃないかという話が出て、2021年8月に第1弾として『しあえるポスター展』をやりました」


これは8人それぞれ自分のポスターを制作して、武田さんの「Gallery 糸」に展示するというもの。


ポスター展、三木高志さんの作品(画像提供:しあえる)


「ただ展示するだけでは面白くないですよね。投票箱を置いて、見に来られたお客さんにお気に入りの1枚を投票してもらうのです。投票してくださった人の中から、抽選で8人に賞品を差し上げようという企画でした」


メディア向けにリリースを流したところ、読売新聞と産経新聞に取り上げられたそうです。また、産経新聞の記事で「しあえるポスター展」を知ったテレビ局も取材に来たとか。

「期待はしていなかったので、取材のオファーが来たときはびっくりしました」


こうして「しあえるポスター展」は成功しました。


武田糸子さんは自らメイクをして挑んだ(画像提供:しあえる)


「僕ら8人がワイワイ楽しめたし、街の人にも喜んでもらえました」


それから間もなく「第2弾をやろう」という話が進み始めました。


「ポスターは動きがない。次は動きをつけようということで、それぞれ自分のCM動画をつくって、YouTubeで配信することになりました。『Gallery 糸』にモニターを置いて、動画を流すわけですよ」


それぞれ自分のお店で1分程度の動画を撮るのですが、せっかくやるなら楽しく面白くやろうよと、ちょっと昔にテレビで流れていたコマーシャルを、自分たちの店に合わせてパロディ化した動画をつくりました。


それが2022年1月に流されていた動画で、本稿の末尾にあるリンクからYouTubeで視聴できます。


「スマホで撮影して、編集とデザインは市内にあるデザイン事務所に協力してもらいました」

ポスター展の成功で地元では少しずつ認知度が上がっていた効果もあって、「『しあえる』のためなら」と協賛してくれる商店もあったとか。


まずは8人のメンバーが楽しんで、それを周りにも伝えて、街全体に笑顔を広げるという狙いが、少しずつ実現しているようです。



動画の次はライブ配信。メンバーが2人ずつ入れ替わってインタビューしたりされたり

CM動画の配信から2か月後には、早くも第3弾目の企画として「しあえるFacebookライブ配信」が決まりました。メンバーが2人ずつ登場してMCとゲストに分かれ、MCがゲストをインタビューするという内容です。


「インタビューされた人が、次の回ではMCになって、別のメンバーをインタビューするというように、MCとゲストを順繰りに入れ替えるんです」 


ライブ配信の様子(画像提供:しあえる)


インタビューでどんなことを聞かれるか、あらかじめ分かっている場合もあれば、予期していないことを突然聞かれる場合もあったとか。

「それを2カ月に1回、生で配信したんです。これもFacebookに動画が残っていますよ」


そして今、第4弾目として「365日インスタリレー」が、4月13日から始まっています。メンバーが1人ずつInstagramのリールで、お題に毎日答えるという内容です。


たとえば「旅行するなら、どこへ行きたい?」というお題に、毎日1人ずつ答える動画を撮ります。8日間で一巡したら、次のお題「仕事以外に夢中になれるもの」について答えていくというローテーションを1年間続けるといいます。1年分のテーマとローテーションは、すでに決めてあるとか。


加藤さん(手前)と藤田さん(画像提供:しあえる)


1人あたり1分に満たない動画ですが、撮影は基本的に自撮りで、しかも投稿も自分でしています。

「自分の出番が終わっても、間を7日空けてまた出番がまわってきますから、プレッシャーですよね。仕事の隙間を見つけて撮影しています。撮影しても、うまく投稿できないときは焦ります(笑)」


ところで、「しあえる」が行っている活動を、街の人たちはどう見ているのでしょうか。

「よく耳に入ってくるのは『何か面白いことしてはるなぁ』とか『明るく元気な感じがする』とかですね」


「しあえる」に参加したいという人も、時々いるそうです。

「ベースは、この8人なんです。しかも、リーダーがいないグループなんです。月に一度のミーティングで進行役はいますけど、いいたいことややりたいことを話し合って、いつの間にか話がまとまる感じです」


この8人だから、リーダーがいなくてもまとまっている印象を受けました。もし手伝ってほしいことが出てきたら、できる人に声をかけるのだそうです。



メンバーそれぞれ「しあえる」に抱いている想いとは

月並みな質問ですが、きっと心に刺さるコメントが聞けると期待して、尋ねてみました。

あなたにとって「しあえる」とは?


◇「メガネの紫光」藤田宏紀さん


池田の駅前にある「ステーションNビル」に店舗を構え、同じビルの別室で「藤田家(ふじたけ)」というレンタルスペースも運営している藤田さん。


「いろいろな人にレンタルスペースを利用していただいて、その中で人どうしの繋がりができていっています。この繋がりを『しあえる』のみんなで共有できるように、もっと大きくしたいです」


自分の店を宣伝するより、メンバーのみんなを紹介したり宣伝したりするほうが、より伝わりやすい気がするという藤田さん。「藤田家」が、お互いを紹介しあえる核になれば、巡り巡って自分のお店にもお客さんが来てくれるだろうといいます。もちろん、その輪が池田市全体に広がることも期待しているとのこと。


「メガネの紫光」藤田宏紀さん(画像提供:しあえる)


◇「coffee P.S.」上田章雄さん


8人の中で最年長の上田さん。「しあえる」を一言でいえば、利害関係のない居場所だといいます。


「商売をやっている人間は、お互いにライバルばかりです。でも、こうして集まるわけです。正直にいうと、ひとり還暦を超えて、初めは違和感がありました。ところが、集まって話をしてみると共感する部分が多いし、こんな変な時代というか閉塞感の中にあって、『しあえる』が自分の居場所になっていますね」」


かつては人間嫌いだったという上田さん。「しあえる」のメンバーは、貴重な仲間だといいます。

「coffee P.S.」上田章雄さん(画像提供:しあえる) 


◇「ロッソビーンズカフェ」加藤健一さん


みんないい人で、居心地がいいという加藤さん。言葉の端々に愛があるといいます。

「みんな変やけど、いい人なんですよ。紹介しあえる、協力しあえる、応援しあえる、それが実践できています」


販売業で毎日いろいろなお客さんと接していますが、いいお客さんが多いため、ストレスを溜めることはないそうです。


「それでも、やっぱりちょっと仕事を離れて、気を遣わなくていいメンバーに恵まれて、自分たちが楽しめることをやりたいメンバーが集まって楽しい。僕らが楽しんでいるのを見た人たちも楽しんでくれたらいいし、その楽しさが周りに広がっていって、池田市全体が楽しい街になってほしい」


「ロッソビーンズカフェ」加藤健一さん(画像提供:しあえる)


◇「リサイクルストア ビリーズ」小笹佳紀さん


小笹さんも上田さんと同じく、「しあえる」が落ち着く居場所になっているようです。


「僕はもともと人見知りで、自分から他人に声をかけられないんですね。でも『しあえる』に参加してからいろいろな人と知り合えたり、お客さんを紹介してもらったりして、また月に一度のミーティングでメンバーのみんなと会って話をするのが心地いい。いうなれば、仕事場と家庭以外の居場所として、いい刺激になっています」


「リサイクルストア ビリーズ」小笹佳紀さん(画像提供:しあえる)


◇「Gallery 糸」武田糸子さん


「1人で絵画教室とギャラリーをやっていますが、お互いに異業種で、個性と癖の強い人ばかりで刺激になります。考え方が違うからこそ想像もつかなかったアイデアをもらえたり、発想の転換ができたりするのが、すごく素敵なことだと思っています」


異業種の仲間たちと交わることで、いい刺激を受けているという武田さん。見返りを求めない関係性がいいとのこと。 


「商売もあるのに、さほど自分に返ってこないことでも『面白いことをやろうぜ』という感じが面白い。自分たちが面白がって、楽しいのが一番かもしれない」


「Gallery 糸」武田糸子さん(画像提供:しあえる)


◇「オアシス整骨鍼灸院」三木高志さん


武田さんと同じく、日々の生活の中で「しあえる」が刺激になっているという三木さん。8人の中では最年少(43歳)のメンバーです。


「個人で開業している整骨院は、すごく狭い世界なんです。異業種の人たちのお話を聞いていると良い勉強になるし、やっぱり刺激を受けます。皆さん、いろいろなことにチャレンジされていて、自分も頑張らないといけないと思うんです」


お客さんを紹介したりされたりすることに関しても、自分が紹介したお客さんが喜んでくださることが、地域貢献に繋がれば嬉しいといいます。


「オアシス整骨鍼灸院」三木高志さん(画像提供:しあえる)


8人のうち「池田麺彩」の原健二さんと「池田市観光案所」の吉岡博充さんは、取材の席におられなかったので、後日コメントをいただきました。


◇原さん


「私にとって『しあえる』とは、この先楽しいことが減っていく年代に入っていく中で、賑やかになれば良いなぁと思う存在であり、そんな仲間たちです。ずっと笑っていたいです」


「池田麺彩」原健二さん(画像提供:しあえる)


◇吉岡さん


一言「いつも勇気と元気をもらえる大切な仲間です」とのことでした。


「池田市観光案所」吉岡博充さん(画像提供:しあえる)


皆さんそれぞれの想いを抱きながら、「楽しい」「面白い」「居心地がいい」という共通の想いをもっておられます。


さて、4月13日から「365日インスタリレー」が始まりました。それだけで1年過ごすのはもったいないと、並行して別の企画も考えているとか。

「具体的な中身は決まっていませんが、ひとつかふたつ何かやりたいよねっていう話はしています」


「しあえる」にはすでに熱心なファンがいて、ライブ配信をしたときは欠かさず見てくれていたとか。


どんな「楽しいこと」「面白いこと」を展開してくれるのか、今後の「しあえる」が楽しみです。




【街おこしイベント】~しあえるわらえるCM展~大阪府池田市の商店主たちが街を盛り上げるために動画を作っちゃった(2022.1月)




■ しあえる


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