現在、BSNラジオ(新潟放送)にて平日昼の番組に出演。メインパーソナリティである男性アナウンサーの「パートナー」としての役割を担い、軽妙且つテンポの良い掛け合いを繰り広げている松本さん。リスナーからは「アイさん」と呼ばれ親しまれており、多様な話題をトークに織り交ぜ、時には歯に衣着せぬコメントなどでも楽しませてくれる存在です。今回はそんな松本愛さんをご紹介します。



思いがけず訪れた、マイクの前に立つ日々

ラジオとの最初の関わりは、かつて所属していた新潟県内のFM放送局から始まりました。そこでは開局時から事務のスタッフとして勤務しており、その後にパーソナリティとしての道を歩むこととなります。


「入社当時、社内で書類を作ったり、お茶を淹れたりといった業務を行なっていました。間もなく、会社からの『まっさらな新人を一人、喋り手として育てたい』という意向で、自分が起用されることになったんです」


ここから、リポーターとして、夕方のワイド番組内で街の人々へのインタビューを担当することに。元々、人前で喋ることが苦手な性格だったこともあり「毎日、一人でマイクの前で話すのは本当に大変で、上層部の方々から怒られたりすることもしょっちゅう」と語るように、戸惑いながらマイクを手に声を届ける日々が続きました。 


地道な努力は実り、悪戦苦闘しながらも人に向かって話すスキルは磨かれてゆき、またそのキャラクターも聴く側を惹きつけ、喋り手としての存在感は徐々に増してゆくこととなります。


放送中、リスナーからのメールを読む松本さん



感じることが出来たリスナーとの距離の近さ

「FM局に居たんですけど、洋楽の知識が乏しくて音楽番組は担当したことが無いんです」


そう言って笑いながらこれまでのエピソードを話す松本さん。ラジオパーソナリティとして成長を続けながら、いくつもの冠番組を任されてきました。その中では、2年前まで日曜夜に放送していたトーク番組に長く携わっており、老若男女、多くのリスナーからの支持を受けることに。


特に、リスナーから寄せられた悩みを聞くコーナーでは、さまざまな相談に対し松本さんが真正面から受け答えをするという、貴重なコミュニケーションの機会となっていました。


「当時は、ほんとうに多くの方からの悩みが送られていました。近しい人にも言えないけど、誰か聞いてほしい、誰かに話したら気持ちが整理できる、そんな思いを吐き出せる場所だったのではないでしょうか」


それぞれの生き方や恋愛といった悩みに対し、常に相手の心に寄り添いながら言葉をとどけてきた松本さん。根底にあったのは相談する側との「信頼感」だったと言います。


「私は相談者さんを信頼していました。私が何を言っても、最後に決断を導き出すのは相談者さんご自身であるのは変わらないと思っていましたし、私の意見を参考にしながらも、ご自身で考えてベストの答えを選択してくれるだろうという、そういった信頼感はありました」


また、松本さんは当時の放送について「私が担当していた番組は、あまり予算も掛かっていませんでしたし、他と比べても非常に内容はシンプルなものでした」と振り返りながらも、リスナーとの強い繋がりを感じていたと言います。


「リスナーのみなさんとの距離は他のどの番組よりも近い番組だったんじゃないかなと思っています。毎週、私と聞いてくれたみなさんが一体となれる時間でした。そして、みなさんの悩みを共有する中で、私とリスナーさんだけでなく、リスナー同士の距離も近かったと感じていました」


そして2年前、番組は最終回を迎えます。そこで紹介された最後の相談に対し一通りの想いを伝えた後、最後に以下のようなコメントを松本さんはリスナーに贈っています。


「あなたが真剣に悩んでいるということは、あなたが真剣に生きている証拠だから。自信をもっていいんだよ」


当時は、多くの人々が様々な想いを膨らませながら、松本さんの言葉に耳を傾ける時間を過ごしていました。



突然の閉局、番組も終了に

松本さんにとって、ラジオと関わる大きなきっかけとなり、長きにわたり活動の場となっていたFM局は、2020年6月をもって閉局を迎えることに。新潟県内の多くのラジオフリークにとっても衝撃だったこの閉局により、松本さんは一旦、放送の場から離れることになりました。


「青天の霹靂でした。閉局ということももちろんですが、リスナーのみなさんと続けてきた番組が終わることのショックも大きかったですね」


そう当時の心境を表現し、松本さんは自身のラジオパーソナリティとしての活動に終止符を打つことを決意したとも明かしています。


「開局から携わっていて、パーソナリティとしてのキャリアを始めた局でしたから、その場が無くなるというのは、もう今後ラジオや放送の仕事に関わることは無いだろうと。それまで他局での経験も無かったですし、自分のラジオ人生もここで終わるんだと思いました」


しかし、かつての同僚や地元メディアからのオファーもあり、再びフリーアナウンサーとして放送の現場に復帰することとなり、現在に至っています。


「色んな方々から声をかけていただきました。大勢のみなさんが自分のことを覚えていて下さったことも本当にありがたかったですし、またラジオで喋っても良いんだと思えて嬉しかったです」


現在は、コミュニティFMでの冠番組や、音声コンテンツでのレギュラーコーナーも担当するなど、再び活躍の場を広げてきており、県内のラジオリスナーにその声を届けています。


閉局時、リスナーから送られたハガキ。感謝のコメントや似顔絵も



心の拠り所となってきた読書 本を紹介するコーナーも担当

松本さんは、過去の番組内や現在もラジオを通じて本を扱うコーナーを担当しています。自身が選んだ書籍を毎週一冊紹介する内容となっており、こちらもリスナーに人気を博しています。本を選択する上で拘っているのは新旧問わず、その時期や時代のシチュエーションに合うもの、そして松本さんの琴線に触れたもの。現在までラジオを通じて紹介してきた本の数は、驚くべき数字に上っています。


「以前担当していた番組から数えて、これまでで700冊以上にはなりますね。最近では夏なので、海の本とか、高校野球が題材のもの、また他に過去の伝染病を扱う内容のものなんかも取り上げています」

※インタビューは7月下旬に実施


小さい頃には家にあった週刊誌などにも目を通していたと振り返る松本さん。「子供の頃から、外に元気に遊びに行くという感じではなく、家で一人で本を読んで過ごすことが多かった」とも話します。早くから松本さんの日常において、本は無くてはならない存在となっており、本は自身の拠り所でもあったと教えてくれました。


「私の人生は本に救われることも少なくなかったですね。本が無かったら、今、生きてなかったかもしれないですね」


さらに、読書への想いとしてこんなエピソードも。


「以前、作家の林真理子さんの言葉で『一人でいることは恥ずかしいと思うかもしれないけれど、読書だけは一人でいることを辛いと思わない、カッコいい行為なんだよ』 と仰っていたんです。私はそれを聞いて号泣してしまいました。一人で悩んでいる人がいたら、その言葉を教えてあげたいです」



私たちが向き合うのはリスナー

手さぐりから始まったラジオパーソナリティとしての歩み、ファンとの繋がり、そして突然の閉局という経験を経て、再びマイクに向かうこととなった現在。電波を通じて声を届けてきたこれまでの歩みの中でも、特に強く意識していることとは何か、その問いかけに対し松本さんはこんな答えを返してくれています。それは「リスナーと向き合うこと」。


「例えばラジオというコンテンツは、局があって、営業さんがいて、製作・技術スタッフがいて、私たちパーソナリティがいて、放送が成り立っています。その中で、キャリアが長い人ほど会社やスポンサーさんに向かって喋っているように感じています」


経験や知識が増えていくと、番組構成の仕組みが解っているため、あらゆる方面を意識しなければならず、少なからずそういう場面もある、そういった放送現場の事情も付け加えた上で、松本さんは言葉に力を込めます。


「私たちが向き合うのはあくまでもリスナーのみなさんなんですね。私たちが声を届けるのはリスナーさんに対して。リスナーさんに面白いと思ってもらうこと、それを忘れたら絶対にいけないと思っています」



ラジオは気が向いた時に楽しんで貰えたら

「今後は、リスナーさんとより深く話せる場も増やしていきたいという夢もあり、ラジオを通じて、また、文章などでも自分の考えを皆さんに伝える機会も頂けたらいいなと思います」


インタビューの最後に伺った今後の目標を、そう答えてくれた松本さん。リスナーと向き合いたい、自分の言葉を届けたいという考えはいつまでも変わる事はありません。 そしてリスナーへのメッセージをお願いすると、ここでも飾ることのない、自然体の言葉でこう語ってくれました。


「今後も気が向いた時にラジオを楽しんでください。 人生で日々、時間が流れていく中でも、ラジオはゆったり聴いてもらうものだと思っています。その時々の環境によって好きな番組も変わっていきますし、私自身も偶然に聞いて下さったリスナーのみなさんとの出会いが殆どです。これまで同様、ラジオを通じて偶然に色んな方々と逢えたら嬉しいです」


マイクの向こうにいる数多くのリスナーの存在を感じながら、これからも変わらない想いで言葉を紡いでいきます。




松本愛さん

フリーアナウンサー。2020年までFMPORT(新潟県民エフエム放送)でナビゲーターを務めた。


現在の出演番組など

BSNラジオ「工藤淳之介3時のカルテット」月曜パートナー

燕三条FM「松本愛のやっぱり夜が好き」毎月第2土曜日

新潟日報デジタルプラス「愛ちゃん麻理ちゃんお悩み相談スタジオ」


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@ai.mats


Twitter

@aiaimats



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