「自分が楽しいと思えないなら、この仕事はできません。私は心の底からショーを楽しんでいます。それでお客様が楽しんでくれれば、これ以上の幸せはないです」


そう語るのは、札幌の歓楽街すすきのにお店を構える高木レナさんです。 ショーパブならぬ「笑パブ(しょうぱぶ)」を名乗る「笑パブBOWWOW」のオーナーであり、還暦を迎えた現在も、演者として舞台に立ち続けている芸歴40年のエンターテイナーでもあります。 


笑パブBOWWOWでは、ステージがあるわけではなく、店舗のスペース全体を縦横無尽に駆け回り、観客の目の前で様々な演目を繰り広げ、時には観客を巻き込んで進行する観客参加型のショーを披露するのが特徴。座席は20名~30名ほどのお店で、決して広くはないお店ですが、連日多くのお客様が詰めかける人気店で、バースデーイベントや年末イベントの時は、座席を追加で用意しても満席になるほど。


コロナ禍をきっかけに、飲食店の閉店が目立つ中、2022年11月24日には「笑劇場バウワウ2」という名前で2号店をオープンするなど、すすきのを盛り上げている存在です。


今回は、高木レナさんに、ショーに魅せられたきっかけや、高木レナさんの考えるエンターテイメントの在り方について伺いました。



ダンスに魅せられた幼少期。自分の店でショーをするという夢を叶える


アメリカ人の叔父に社交ダンスの大会に連れて行ってもらったのをきっかけに、ダンスに目覚め、社交ダンスを習い始めたという高木さん。


「学習塾、書道、そろばん、ピアノ、社交ダンスと自分の『やりたい!』と思った習い事をたくさんやらせてもらいました。その中でもダンスにのめりこんでいきましたね。ハチャメチャな目立ちたがり屋だったので、その当時から漠然と『自分のお店を持ってショーをやりたい』と思っていました」


自分のお店を持つという目標のため、社会勉強として高校卒業後、大手メーカーと、クラブに1年ずつ勤務し、話術や社会人としてのマナーを吸収し、満を持して20歳で自分のお店を神戸市にオープンさせます。自身初のチャレンジでありながら、殺陣(たて)や日本舞踊を取り入れた、今までの枠にとらわれないお笑いショーが好評を博し、順調に客足を伸ばすことに成功。神戸市で12年続く人気店へ成長し、充実した日々を送っていましたが、そんな高木さんを悲劇が襲います。


1995年1月17日、阪神・淡路大震災に被災してしまい、両親も災害に巻き込まれ急逝、実家も倒壊してしまい、親戚のいる北海道へ避難をすることに。


「当時、娘と息子も小さかったし、すこし落ち着く時間も欲しかったので、北海道の親戚のところに行きました。その時にすすきのでショーをしているクラブの社長と知り合って『永住してここ(すすきの)でやってみな』と背中を押してもらったのがきっかけで、すすきので笑パブBOWWOWを開くことにしました」


オープン後、神戸でショーパブをしていた時代のファンが高木さんを一目見ようと訪れ、ショーの面白さが口コミで広がったことで、現在は25年以上続く人気店になりました。



常に楽しむことが、何事も続ける秘訣     


コロナ禍で、飲食店の閉店が続く中、どのように乗り越えたのか伺うと「正直、特になにか困ったことはなかったですね」という言葉が。 高木さんに悲観的な考えはまったく無かったといいます。


「周囲には心が折れちゃって店を畳んだ人も多くいました。ですけど、悲観しても好転しないんですよね。お店が開けられない時期も“家でペットたちとずっと会える”という風に楽しんでいました。何事も笑って楽しむ心が重要だと思います」と笑顔で話す高木さん。


常に笑顔、常に楽しむ。 その心構えを持ち続けて、コロナ禍も楽しんだといいます。取材中、その場に居合わせた演者の方も、当時を振り返り「コロナ禍だからといって辛いと感じたことはなかったですね」と笑顔で語っていました。



自分が楽しければ周囲も楽しめる


高木レナさんに、エンターテイナーとして気を付けていることを伺うと 「自分が楽しければ、周囲も楽しめるんです。例えば、仕事のために作り笑顔をして舞台に立っているのと、心の奥底から『楽しい!』って思って自然と出てくる笑顔。この笑顔はまったく違います。そこに計算なんてないんですよね」 と、高木さんはきっぱり言い切ります。


「自分が心から楽しむ」という姿勢を常に崩さず、還暦を迎えた現在も、ステージに立ち続け、好きなことをして笑っていたいんだと熱く語る高木さん。


その後ろ姿を見て育ったからか、高木さんが強制するまでもなく、笑パブBOWWOWでは高木レナさんの娘と息子もショーに参加しています。また、孫も自ら興味を持ち、現在は劇団に所属しているんだとか。 そんな自らの意思でエンターテイメントの業界に入ってきた子供たちが育ったのは、高木さんのチャレンジ精神が背景にありました。


「誰でも、どんなことにもチャレンジすればいいと思うんです。お金が~とか、時間が~とか色々な言葉で理由をつけてやらないのは簡単ですけど、理由をつけずにチャレンジすれば、『どんな人でも、どんなことでも、できないことなんて無い!』って私は本気で思っているんです」と、真剣な表情で語ります。 



元気がもらえる店であり続けたいし、それは絶対にできる

最後に、高木レナさんと笑パブBOWWOWの展望を伺いました。


「何も難しいことは考えないで、やりたいことをやってるだけだからなぁ」と、言葉に困った様子でしたが、笑顔で笑パブBOWWOWのあるべき姿を語ってくれました。


「『笑パブBOWWOWに行ったら元気がもらえるよね』って、思ってもらえる店であり続けたいですね。『笑パブBOWWOWに来てくれれば、楽しい思い出を持って、笑顔で家に帰れます!』」っていうそんなお店です。コロナ禍も笑顔で乗り切ったし、心の底からお客様に感謝しているので、それをずっと続けていければと思います」


また、高木さんはこう続けます。


「ずっと演者には『お客様への感謝を忘れてはいけないんだ』と、常に伝えてきました。なのでこの店なら、お客様に楽しい思い出を作って帰ってもらうことが絶対にできます」


“辛い時だからこそ笑う”

“お金で買えないものをお客様からたくさんいただいている”


取材中、常にポジティブで、お客様や仕事で関わった人への感謝を忘れない、高木さんの素敵な人間性が垣間見えました。


芸歴40年を超え、今もなお心の底から楽しみ、そしてファンを楽しませ続けている高木レナさんは、今日も笑パブBOWWOWのステージに立ち、笑顔を届けます。



■ 笑パブBOWWOW


住所

〒064-0806

北海道札幌市中央区南6条西4丁目


定休日

日曜日


電話番号

011-520-2779(電話受付時間18:00-24:00)


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