東京2020オリンピックから正式種目として採用された競技「3×3(スリー・エックス・スリー)」。


ストリートバスケとして発展してきた3人制バスケの3on3(スリーオンスリー)が発祥で、FIBA(国際バスケットボール連盟)がルールを決めたことで正式に生まれた競技です。


そんな3×3において、福岡を拠点に活躍しているプロチームが「LAST ONE FUKUOKA」。ベイサイドプレイス博多やJR博多シティなどで試合を開催し、徐々にファンを獲得しています。


福岡県はバスケットボールの強豪校として知られる高校がいくつも存在しているため、「バスケ王国」とも称されます。しかし、そんな中にあって、福岡のプロ3×3バスケットボールチームは廃部の危機に陥っていた時期がありました。


そんな状況を救った人物が、実業家の青野玄さんです。


現在、LAST ONE FUKUOKAの代表取締役を務める青野さんにチーム運営のやりがいや大変な点、さらにチームの魅力を聞いてみました。また青野さんのこれまでの活動内容についても深掘りしていきます。



福岡のプロ3×3バスケットボールチームを存続させたい


プロ3×3バスケットボールチーム「LAST ONE FUKUOKA」


LAST ONE FUKUOKA結成以前にもともと福岡には3×3のプロバスケットボールチームが存在していましたが、2022年シーズンは親会社がいない状態で活動を続けていました。シーズン終わりにはチームの消滅が決まっていたところ、選手たちからチーム存続の依頼を受けたのが青野さんでした。


「選手たちがなんとかチームを残したいと思っている中で、バスケつながりでいろんな人に相談している延長に僕がいて。そのとき、バスケのMCをしているU-LAWという人物と僕が同級生で仲が良かったので、既存のメンバーを引き継いで二人で新しいチームを作ろうかと話しました」


幼少期を福岡で過ごした青野さんは、鹿児島の中学高校に行き、バスケ部に所属。卒業して上京後も30歳の頃に、自分たちでチームを作ってプライベートでもバスケをして遊んでいたそうです。さらに3×3には運営側として携わった経験もあったといいます。


「中学と高校は鹿児島にいたのですが、その頃のバスケ部の先輩が鹿児島の3×3のチームを作ろうとしていたんです。そこで後輩の僕にも手伝ってほしいと声をかけてもらって、できることはやりますと返事しました。そうして、チームの共同オーナー兼運営会社の取締役の一人といった形で5,6年間くらい携わっていました」


そんな経験があったからこそ、福岡のプロチーム作りにも動いたのでしょう。


そうして青野さんは株式会社STILLを立ち上げ、2022年12月にプロ3×3バスケットボールチーム「LAST ONE FUKUOKA」を作ります。迎えた2023年シーズン。1年目は苦労の連続だと言います。


「福岡は小中高とバスケが盛んで競技人口も多いのですが、3×3チームをどれくらい応援してもらえているかと考えたときに、福岡の持っているポテンシャルからすると、思っているよりもまだ結びつけられていないと感じています。チームの認知度や人気をあげたり、スポンサーを獲得したりという点で、一歩ずつ課題をクリアしていっている段階です」



気軽に白熱した試合を間近で見られるのが3×3の魅力


2023年7月22日に福岡にて行われたホームゲーム「3x3UNITED FUKUOKA ROUND」


3×3の大会は、一日のうちに予選リーグから決勝までを行うケースがほとんど。


野球やサッカーだと地元のホーム試合とアウェイ試合を繰り返しますが、3×3では一つのリーグにおいて地元で開催するのは年に一回しかありません。2023年度リーグにおいて、福岡では7月下旬にホームゲームが開催されました。


「いろいろ準備が大変だったんですけど、一年目にしては結構お客さんも来てくれました。すごく盛り上がったし、子どもたちも結構見に来てて。それで、みんな試合を見て、選手をかっこいいと思ってくれたみたいで、試合が終わった後に選手のもとにサインの行列ができてました。そういう光景を見てると、まずはチームを福岡に残してよかったなと思いましたね」


3×3では、5人制バスケの約半分のコートで行い、1つのリングに対して双方が得点を狙います。スピーディーな展開で試合が進み、試合時間は10分間の1回のみ(5人制バスケは10分間のクォーターを4セット)です。


また、ストリートバスケの名残があり、正式競技も屋外で開催されるケースが多いのも特徴。


商業施設の一角や、公園や港の広場などに設置されたコートなどで行われます。そのため、買い物や散歩で訪れた人が3×3の試合をふと目にする機会も。白熱した試合展開に思わず立ち止まり、見入ってしまう人もいることでしょう。


佐賀県の商業施設「モラージュ佐賀」にて試合が開催されたときの様子


基本的には3×3の観戦は無料。コートサイドの前列に有料の指定席が設けられるケースもありますが、ほとんどが無料で気軽に見られるのが魅力です。また、青野さんは他にも3×3の見どころがあると言います。


「選手たちのプレイを間近で感じることができるのも魅力ですね。5人制バスケと比べて、1対1や2対2などの『個』が重視されるので、けっこうぶつかり合いもあって激しく白熱しやすいんです」


試合を見た人が熱狂する理由が分かりますね。MCが試合の模様をかっこよくその場で実況中継したり、ノリの良い音楽がDJでかかっていたりと、多くの人が楽しみやすい工夫がされています。



当日まで出演アーティストが非公開の野外イベントを開催

ここ一年は主にLAST ONE FUKUOKAの運営に力を入れている青野さんですが、多岐に渡り活躍する実業家でもあります。そんな青野さんの活動を紹介しましょう。


GGBCの様子。原っぱに座ってリラックスした状態で楽しめる


一つ目は野外イベント「GGBC」の共催。


2022年春に初めて開催され、2023年で2回目を迎えました。音楽ステージや飲食ブースが用意され、ピクニック感覚で楽しめる野外イベントで、「おっきめの豪華なホームパーティ」をコンセプトとしています。


「フェスや興行というより、パーティーを作ろうっていう気持ちがありました。みんなが仲間で集まって、コミュニティとして広がっていくようなものをやろうというのがきっかけで。そういうのがあれば是非自分も行きたいし、周りの仲間も来てくれるだろうと考えました」


GGBCの大きな特徴は、当日まで出演アーティストを非公開としていることです。ホームページ上で関連するアーティストのプレイリストを配信することで、こんなアーティストが来るのかなと期待感と、当日まで誰が来るか分からないドキドキ感を抱けるでしょう。


GGBCに出演した大分のアーティスト・baobab


「例えばうちでバーベキューパーティーするよって言った時に、たまたま誰かが歌っていてよかったみたいな感覚ですかね。アーティスト軸で行く行かないじゃなくて、楽しそうなパーティーがあるらしいから行きたいというところを大事にしたかったので、アーティストについては名前を伏せておくことにしました」


そこには感度の高い福岡の人たちへの信頼が垣間見え、またそんな人たちに新たなアーティストとの出会いを喜んでもらいたいという、青野さんの気持ちが感じられました。



幼少期を過ごした福岡に戻ってきて感じること

青野さんが展開する主な活動の二つ目は、キャンプ場の運営。


長崎県平戸市にあるプライベートビーチ付キャンプ場「WEST END CAMP」では、マリンアクティビティやオーシャンビューを楽しみながらキャンプができるスポットです。


平戸市のプライベートビーチ付キャンプ場「WEST END CAMP」


こちらは青野さんが代表取締役を務める会社「QOLL JAPAN」における事業内容のひとつ。「QOLL」とは「Quality of local life」の略で、地方の生活に焦点をあてたコンセプトとなっています。


「東京で働いていたときに、地方の良さをすごく実感してました。一方で地方が抱える課題もたくさんあると感じていたので、その地域に住んでいる人と一緒に会社を作って、地域でやるべきことを解決していきたいと思って活動してきました」


そういった活動の一環で、古民家をリノベーションしたゲストハウスや、市営キャンプ場のリニューアルなどを行ってきたそうです。


このようにさまざまな活動を展開している青野さん。今後はどのようなビジョンを考えているのでしょうか。


「いろいろなことがコロナでリセットされて、正直今は試行錯誤している段階です。ただ幼少期を過ごした福岡に戻ってきて、やはり地元の良さを少しでも広げていきたいとは思います。GGBCもその延長の活動ですし、3×3のチームでもバスケを通して福岡をもっと盛り上げていき、魅力的な街にしようというのがゴールにあります」


LAST ONE FUKUOKAとの混合チームで3×3を楽しむ子どもたち


例えば青野さんは3×3の裾野自体を広げていく活動として、学生向けの無料クリニックを定期的に開催しています。クリニックとはバスケのワークショップや選手たちからの指導を通して、バスケの楽しさを学べる活動です。


「学生からすると、すごく特別な機会だと思ってくれているなと感じました。みんなすごく輝いてたし、終わったらTシャツとかにサインしてくださいと、列ができていたりして。そういう小さい頃の思い出が、今後に何かに生きてきてくれるかなと、期待感を持てました」


こういった活動を通じて、青野さんが描く未来のビジョンがどんどんまた切り開かれていくのではないでしょうか。




■ LAST ONE FUKUOKA


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