リッツカールトン福岡の開業など、福岡県の新たな経済拠点として期待される福岡大名ガーデンシティ。その中のカンファレンスルームでは、なんとも心地いい香りが漂っています。実はこの香り、福岡の「市の木」として制定されているクスノキ。森林浴をしているようなリラックスした香りで、会議にも集中できそうです。


今回紹介するのは、この香りのプロデュースを託された人物。「CARTA(カルタ)」というクラフトフレグランスブランドのオーナー・矢田部美里さんです。



前職や地域おこし協力隊の活動でまちづくりに興味を持つ

矢田部さんが立ち上げた「CARTA」とは、日本の地域の素材を使った香りのブランド。


現在はルームフレグランス商品を中心に取り扱っており、公式サイトやポップアップで購入できます。


地域の素材を使用したフレグランスオイルやディフューザーなどを商品展開している


まずは矢田部さんにCARTAを立ち上げたきっかけについて聞いてみました。


「東京出身でもともとはDeNA、リクルートに勤めていました。当時の夫の仕事の都合でよく鹿児島県に訪れていたのですが、そこでまちづくりに興味を持つようになりました」


いつか自分で何か事業をしてみたいという思いがずっとあったという矢田部さん。


しかし、具体的なアイディアがなかなか思いつかない中、移住のイベントが転機となり、宮崎県の日南市で「地域おこし協力隊」として活動するようになります。矢田部さんは古民家のまちづくり再生プロジェクトなどにかかわり、地域づくりへの関心が深くなったと言います。地域おこし協力隊の任期が終わり、いよいよ本格的な事業立ち上げに向かいます。


実ははじめは「香り」にかかわるとは決めていなかったと言います。どのようにして現在のブランド立ち上げへとつながっていくのでしょうか。



コロナ禍で人々のライフスタイルが変わってきていた

矢田部さんは地域をテーマにすることだけは明確に決めていたそうです。彼女自身、東京出身で幼少期はアメリカに住んでいたので、いわゆる“ふるさと”がないというコンプレックスのようなものがあったとのこと。そこで地域らしさを体現できる事業がしたいと考えるようになります。


サービスをつくるのか、プロダクトをつくるのか、なにを事業でするのかを詰めていく中で、コロナで人々のライフスタイルが変わってきたことに着目しました。


「香りものの商品が流行り始めていると感じました。しかも、地域らしさというテーマでみたときに、お酒とか食べ物とか化粧品とか洋服とかはたくさんあるけれど、香りものはほとんどないなと気づきました」


新規事業の柱を“香り”でいこうと思った矢田部さんは、日本全国のエッセンシャルオイルや生産者さんを調べていきます。サンプルを取り寄せて、最初にやりたい香りは何かを探していたそうです。そんな中、たどり着いたのが、鹿児島の喜界島で栽培されている花良治ミカンでした。


「エッセンシャルオイルのサンプルを取り寄せたのですが、それまで嗅いだことがなかった山椒を思わせるいい香りでした」


しかし、実はこの花良治ミカン。現地では栽培している人が少なく、「幻のミカン」と呼ばれていました。畑を作るのが難しく、虫にも風にも弱いという一面を持っており、商品化に向けた栽培に長いこと苦戦していたそうです。



喜界島に通い、生産者との出会いで、想いが形になっていく


喜界島に通う矢田部さん


花良治ミカンの栽培について調査する中で若い生産者と出会います。その方は祖父の代から続くミカン畑を引き継ぎ、町おこしにも力を入れており、その想いに共感した矢田部さんはそこから活路を見出していきます。


畑を拡充する取り組みを行うことで、そのまちの魅力を引き出し、地域の担い手の伴走者となるという気持ちが膨らんでいったのです。高価なためなかなか買い手がいない花良治ミカンですが、仕入れる量をCARTAで増やすことで、お互いの循環をよくして、産業を活性化させようとしました。


ちなみに喜界島とは、奄美大島の近くにあり、サンゴが隆起してできた小さな島。サンゴの石垣が島内に残るなど、島の暮らしとサンゴが密接に関係しています。


そこで矢田部さんが目をつけたのが、サンゴの化石でした。島の了承を得て、採取したサンゴの化石をディフューザーの原料としたのです。そうして、サンゴにエッセンシャルオイルを垂らして楽しむルームフレグランスが完成しました。売上の一部はサンゴの保全活動に当てられます。


「まずはクラウドファンディングを行いました。ネットでは香りが分からないので、プロジェクトは成功しないんじゃないかと言われることもありました」

クラウドファンディングで発表したSleepy Islandコレクションのコンセプトムービー


担当者の予想は2,30万いけば良い方だと言われ、香りのオイルだけで販売するのは厳しいと思われました。しかし、喜界島への思いや、目新しいコンセプトなどが多くの人の心を動かしたのでしょう。プロジェクト応援者は増え続け、結局目標の1000%売上となる200万円を超える支援額が集まったのです。



いろんな楽しみ方ができるルームフレグランス

クラウドファンディングで一つ大きな実績を作ることができた矢田部さん。現在は日本各地でのポップアップをはじめ、ホームページで商品を販売しています。


取り扱っているフレグランスオイルは2種類。先に紹介した花良治ミカンを使った「01 KERAJI / フレグランスオイル10mL」(税込7,700円)と、同じく喜界島原産の柑橘・シークーを使用した「02 IJICHI / フレグランスオイル10mL」(税込6,600円)です。


また、珊瑚ディフューザーとフレグランスオイルがセットとなった「【MASU / 珊瑚ディフューザー】フレグランスオイル 10mL付き」(税込22,000円)も販売しています。


有田焼に分類される肥前吉田焼の陶磁器の中にサンゴを入れ、そこへフレグランスオイルを垂らすという使い方です。使用可能期間は、使う頻度や量により個人差がありますが、毎日垂らして使うと2,3か月程度が目安となります。


珊瑚ディフューザーとフレグランスオイルのセット


就寝前のリラックスしたいとき、在宅ワークなどの集中したい場面、知人が訪問してきた際のおもてなしとして、などなど。いろんなシチュエーションでその香りを楽しめます。


また、もう一つ商品としてラインナップされているのが、「CARTA meets Fukuoka」という名のルームスプレー100mL(税込6600円)。


こちらは冒頭で紹介した、福岡大名ガーデンシティの「DAIMYO CONFERENCE(大名カンファレンス)」に採用された香りを自宅でも楽しめる商品です。福岡の市木でもあるクスノキの爽やかでリラックスした香りが感じられます。


ルームスプレー「CARTA meets Fukuoka」



地域の担い手の伴走者となり、産業をつくっていく

最後に矢田部さんに今後の展望をお聞きしました。


「最終的には観光事業を展開すると決めています。わたしたちの商品はニッチな地域を取り扱うので、手に取る方はクリエイターやデザイナーなど、フレッシュな発想を求める方が多いです。CARTAの商品を通してその土地を知り、この香りのする場所に行くきっかけにしたいと考えています。宿や飲食店、観光ツアー等のコンテンツをつくり、訪れた方がまたそこでしか買えないプレミアムなCARTAのお土産を購入する。CARTAと地域のファンをつくっていきます」


CARTAのサイトには、「日本の地域社会に根ざした香りづくり」がブランドの命題として掲げられています。


香りという身近なテーマから広がる地域社会への貢献活動を、これからも応援していきたいですね。




■ CARTA(カルタ)


公式HP

https://carta.website/


Instagram

@carta_fragrance