福岡市中心部の福岡市地下鉄七隈線天神南駅からほど近い距離にある飲食店「bound」。ギャラリーカフェ&バーという形態で営業している人気店です。昼間は若い女性客で賑わい、夜はお酒好きな人が集まります。


boundの魅力は、気軽にアートに触れながらお酒やカフェメニューを楽しめること。月毎に入れ替えながらアーティストの展示を行っており、来店者が新たなアートの魅力に気づけたり、お客さんやアーティストとの交流が生まれたりしています。


今回はboundのアート企画を担当している、キュレーターの内田愛里さんに話をうかがいながら、お店の紹介をしていきましょう。



福岡市の南天神に誕生したギャラリーカフェ&バー


お店へと続く階段の入り口に看板がある


福岡市の天神南駅6番出口から徒歩1分のところにあるお店「bound」。1階で営業している居酒屋「食堂うめぼし」の脇にある階段を上がると、オシャレな入り口が見えてきます。店の外装からしてオシャレなこの空間は、気軽にアートに浸れるカフェ&バーです。


boundが誕生したのは2022年7月7日。オープン当初から、現在の営業スタイルである「ギャラリーカフェ&バー」という形態をとっており、オープニングでは5人のアーティストが共同で出展する展示イベント「flowers」が行われました。 


オープニングの展示となった5人展「flowers」


どうしてこのようなコンセプトのお店が立ち上がったのでしょうか?アート企画担当の内田愛里さんに、お店が生まれた経緯を聞いてみました。


「もともとここのオーナーがずっと飲食業をやってきていた人で。新しい居酒屋の店舗を出すとなったときに、ビルを一棟貸しする契約となったんです。1階はもともと予定していた居酒屋をオープンさせることになったのですが、空いていた2階はまた別のコンセプトのお店を作りたいなとなったようで」


そこで話がいったのが、オーナーとのつながりがあった内田さん。内田さんはもともとアートに関心が強く、これまでイベントの開催を手伝ったり、アーティストとの人脈作りを続けていたりしていたそうです。


「ちょうど私が、知り合いのアーティストをサポートしたり、応援したりできる場所を作りたいと考えていたタイミングだったんです。そんな中、オーナーから新しいことにチャレンジできるお店にしたいと相談いただいて。じゃあ飲食とアートをコラボする場所にしようとなり、このお店ができました」



一方通行ではなく新たな調和が生まれる場所にしたい

そうして生まれた、ギャラリーカフェ&バーのbound。この店名の由来にも、ある想いが込められています。


「どうしてもギャラリーというと、ハードルが高く感じられる人もいます。そこでカフェやバーとして営業することで、気軽にお客さんに来てもらえると思ったんです。来ていただいたお客さん同士や、アーティストとの間で会話が弾むというのを、お店の名前からくる『バウンドする=跳ねる』という意味合いにかけています」


また、さらにアーティスト支援という視点でいうと、「bound」は「飛躍する」という意味合いにも捉えられます。アーティストが新しいお客さんと出会うことで、さらなる活躍をしていってほしい、という願いが込められているのです。


アーティストとお客さんとの交流が生まれるためにしている工夫の一つが、レセプションパーティーの開催です。当日はできるだけ作家が在廊し、来場者と話せるようにしています。


先に紹介したオープニング展示の際も、最初の3日間はレセプションパーティーが開催されました。筆者もそのイベントにお邪魔したのですが、作家とお客さんが会話を楽しんでいて、和気あいあいとした雰囲気を感じました。


「アーティストとお客さんが一方通行ではなく、お互いに交流して、新しい調和が生まれるような場づくりを大事にしています」


作家と話せる機会があることでお客さんは本人に作品の内容を解説してもらえ、その場で作品の見え方や捉え方が変わり、新たなおもしろさに気づけるのです。そして、それは逆も然り。お客さんからどう捉えたかの感想を直接作家が聞けることで、作家からしても新しい発見があることでしょう。



インスタ映えするメニューがカフェ好き女子の間で話題に

さて、ここからはboundのカフェメニューを紹介していきましょう。


インスタグラムによく投稿され、若い女性の間で特に人気となっているドリンクが、「スパイシーレモンスカッシュ」(550円)です。(以下、料金は全て税込みの値段を表記しています)スパイスを効かせたレモンシロップでつくる、bound特製のレモンスカッシュ。安心して食べられるようにと、防腐剤を熱湯で一つ一つ煮沸したレモンを使用しています。


スパイシーレモンスカッシュとバナナコーヒーパウンド


また、コーヒーに使われる焙煎豆の仕入れ先は、東京の蔵前にある人気店「LEAVES COFFEE ROASTERS」。「町のロースタリーから世界へ」をコンセプトに掲げているお店で、コーヒーの苦味が苦手な人でも飲みやすく、フルーティーで豊かな香りを楽しめるような豆を焙煎しています。


ハンドドリップコーヒー(500円)は数種類の中から豆を選ぶことができ、水出しコーヒー(550円)は数量限定のメニュー。他に、アメリカーノ(HOTは450円、ICEは500円)とラテ(HOTは550円、ICEは600円)もあります。


ぜひ、コーヒーと一緒に食べてほしいスイーツが、自家製のパウンドケーキ(500円)。今回取材でいただいたのは「バナナコーヒーパウンド」で、甘すぎないバナナと香りの効いたコーヒーの相性が抜群で、少しずつゆっくり味わいながら食べたくなるケーキです。ふわっとした食感ながら密度はぎっしり詰まっていて、ぜいたくな気分になります。boundではアルコールメニューも提供しているので、お酒と一緒に食べるのも良さそうです。


また、オープン当初からある「いちじくのラム酒漬けパウンド」もおすすめ。いちじくの上品な甘みを山椒の辛さが引き立ててくれるパウンドケーキです。他にも期間限定で、新たにパウンドケーキの種類が追加されることもあります。インスタグラムで情報更新されるので、ぜひチェックしてみてください。


boundで楽しめるナチュラルワイン


アルコール系のメニューは、ナチュラルワインやクラフトビールなどを取り揃えており、他の居酒屋やバーでは見慣れないお酒も多くあります。


「ナチュラルワインやクラフトビールも作家さんのこだわりが表に出ているものが多いと思います。パッケージ、作り方、味などにこだわりがあるから、ソムリエにそのあたりの話を聞きながらお酒を楽しむと、それも一つのアートに触れるきっかけになるのではないでしょうか」



人気イベントから生まれた特別メニュー

気軽にアートを楽しみながら、カフェ・バーを利用できるboundですが、今後はどのようにお店を展開しようとしているのか、内田さんに聞いてみました。


「今、月1回行っているパフェのイベントがとても好評で。今まではイベントでしか食べられませんでしたが、今月(2023年3月)から『夜のミニパフェ(1000円)』として通常のメニューとして提供することにしました」


パフェのイベントとは、旬のフルーツや珍しい食材を組み合わせて作ったその日限りのパフェと、ナチュラルワインのペアリングイベント。毎回人気で、イベント当日は、お客さんがインスタグラムのストーリーにパフェの写真を投稿しており、お店のタグをつけることによって多くの人がチェックしているようです。今回からイベントに行けなかった人も、いつでも食べられるようになるのでうれしいですね。


「展示の方は、もう既に今年(2023年)は内容が全て決まっています。アーティストはこちらから話をさせていただくことが多いですが、依頼が来ることもあります。この空間に合うようなアーティストや、企画内容を考えながら、毎月のラインナップを決めています」


boundではどのような展示内容を意識されているのでしょうか。その点について、もう少し詳しく聞いてみました。


「このお店は自然光が入る、きれいめなカフェという印象があります。なので、そことマッチする雰囲気にしたいなと思っています。『陰』と『陽』に分けるなら『陽』の作風の人たちですね。また、普段が『陰』の作風の人でも、『陽』なタッチの作品ができないかと提案させていただくこともあります」


筆者がお店を取材した時も、作品は全て明るめの印象で、穏やかなティータイムにとてもマッチしていました。この時の展示は、作家がまだ人生で2回目の個展だったとのことで、内田さんも設営に加わりながら、見せ方などを一緒に工夫ができて楽しかったそうです。



福岡のアート文化がより良くなるために……


boundでは展示だけでなく、販売も行っている


そんな内田さんはアートに触れるために県内外問わず赴く人物。さまざまな地域の文化を見てきた内田さんに、今後の福岡のアート文化へ期待するところも語ってもらいました。


「福岡にもアートが好きな人は増えてきている印象ですが、アートを買うという文化はまだ根づいていないと思うんです。東京や大阪だとコレクターもたくさんいるのですが、福岡では買う人自体が少ないですね」


そんな中、内田さんはboundでの企画を通じて、うれしかった経験があったと言います。


「これまではアートに関心がそこまでなかった人が、初めてギャラリーに来て、一目惚れして購入に至ったことがありました。他にも初めてアートを買うという例がちらほら出てきていて。そんなファーストショッピングに立ち会えたという経験は一番うれしいですね」


アーティストを後押ししたいと考えている、内田さんならではの素晴らしいコメントだなと感じました。boundで展示されている作品は、基本展示販売という形態をとっているので、気になったものはぜひ購入を検討してみてはいかがでしょうか。


なお、4月の展示は「Area8M(エリア八女)」という企画展が予定されています。こちらは福岡県八女市にある老舗のちょうちん屋・伊藤権次郎商店の8代目である伊藤博紀さんと、同じく八女市を拠点に活動しているアーティスト・浜武武士の2人によるコラボ企画です。今回はちょうちんをアートにした作品を展示し、宇宙をイメージした神秘的な雰囲気になるとのこと。どんな空間になるのか、楽しみですね!


2023年3月27日から福岡市地下鉄七隈線が延伸し、boundの最寄りの福岡市地下鉄天神南駅へは博多エリアからのアクセスも容易になりました。23時まで営業しているので、仕事終わりや飲み終わりなどにも立ち寄りやすく、一層お客さんも増えそうです。


多くの人がアートに気軽に触れる機会が増え、boundも福岡のアート業界もさらに飛躍していくことでしょう!皆さんも福岡に訪れた際は、ぜひ足を運んでみてください。



■ bound(バウンド)


住所

〒810-0004

福岡県福岡市中央区渡辺通5丁目25−11


営業時間

11:00-23:00

(17:00-bar time)


営業日

年中無休


Instagram

@bound.floor