男女の出会いを応援する、合コン専門のバー
個性的な飲食店が多い福岡において、一際面白いコンセプトを売りにしているお店を発見しました。それが恋活・婚活専門の飲食店「Dining85（ダイニングハコ）」です。「出会いに困ったらDining85へ」そう語るのはオーナーの緒方勇大さん。今回お店に直接うかがって、話を聞いてみました。
お店があるのは、福岡市の中心街である天神駅から歩いて5分ほどの場所。1階に 「立ち飲みの気楽」が入っている、茶色い雑居ビルの7階で営業しています。
ー まずはどんな形でお店を営業しているのか、簡単に教えてください。
「今は完全に恋活・婚活専門の飲食店としてやっていますね。普通に飲む目的で来ていただいたお客さんには申し訳ないですが、入店をお断りしています。一部、事前予約の貸切営業で、大学生たちの卒コンやゴルフ企画の打ち上げなどで利用していただくことはありますが、それ以外は合コンだけをやっている形式です」
ー 合コンはお店側で企画しているのですか？
「はい、基本的にはそうです。恋活や婚活をしたいと思っている人に専用のフォーマットから応募申し込みをしてもらい、その情報をもとに合コンを企画しています」
ー ホームページを見ると、おもしろそうな合コンを企画されているなと思いました。
「はい、こちらで事前にイベントのような形で合コンを告知しているので、そちらに応募してもらうことも可能です。いろいろこちらも趣向を凝らしながら、さまざまな企画を提供しています」
コロナ禍のなか、生まれた企画「マスクコン」
ー 特におもしろそうだと思うのが、「マスクコン」。地元テレビ局が放映する人気の深夜番組にも取り上げられ、話題になりました。今のご時世を象徴しているようなイベントですね。
「はい、コロナ対策を万全にして行っている合コンです。参加者同士は常にマスクをしている状態で会話してもらいます。食事は提供せずに飲み物だけを出しています」
マスクコンはコロナ対策として「非接触体温計」「オートディスペンサー」「サーキュレーター」「飛沫防止シート」「アクリル板」「換気」の六つを実施。参加者はとても安心した状況で、会に臨めます。
万全のコロナ対策のもと行われる、マスクコン
しかしマスクをしていると相手の表情がなかなか分からないもの。そんな中で合コンをするというのは、障害にならなかったのでしょうか。緒方さんによると、こういった状況が逆に良い効果を生み出したと言います。
「相手の容姿がはっきり分からないことで、逆に先入観なく話せます。見た目や年齢って意外と付き合ってみたら気にならないんだと、気づくことが実は多いんですよ」
こういった効果は、「年齢伏せコン」という企画にもよく表れています。その名の通りお互いの年齢を言わずに行う合コン。会の途中に年齢を聞くのはご法度で、探るの自体NG。例えば「ミニモニっていつ頃流行ってた？」や「学生の頃にカラオケで何歌っていた？」などの会話をしてはいけません。
「合コン企画をやっていく中で、意外と年齢って気にならないと気づいた人が多かったんですよ。それまでは自分は年下としか付き合えないと思っていたのにもかかわらず、いざ年上の人と付き合ってみると長続きして結婚まで至ったなんて人も珍しくないんですよね。だから付き合う前に勝手にフィルターをかけてしまうのがもったいないと感じたんですよ」
そこで始めた年齢伏せコン。第一回目の企画で成果があったカップルがそのまま結婚したという成功事例ができ、その後も精力的に開催するようになったそうです。自分の年齢にコンプレックスがある参加者が気軽に参加しやすいという点でも、良いイベントになっています。
成婚のお知らせが一番のモチベーションになる
ー 合コンがどんな形で進行されているか、詳しく聞かせてください。
「まずは一対一で5分間ずつトークをしてローテーションします。一周したら2回目のトーク時間が3分。その後、マッチングカードを渡して、気になった人を3位まで記入してもらいます。集計してマッチングしたカップルを発表していく流れです」
成立したカップルはその場に残り、それ以外の方は退席します。ただし、カップル成立とならなかった人でも、会の途中で気になる人にはLINE IDなどを書いた連絡先カードを渡せるので、会が終わってから参加者同士が連絡を取り合うことができます。
お店の様子
ー 詳しくありがとうございます。実際にカップルが成立してからその後に結婚まで至る方ってどれくらいいらっしゃるのですか？
「こちらが把握できているだけでも40組はいます。わざわざ報告してこない方達もいると思うので、そういった方々も含めるともっと多いでしょうね。多少は日本の少子化対策にも貢献していると思います（笑）」
ー 多いですね！やはり結婚を報告してもらった時は、主催者冥利に尽きるのではないでしょうか？
「はい、その通りで、一番うれしい報告ですね。店側としては結婚されたらお客さんは二人減っちゃうことになるじゃないですか。それでもめちゃくちゃうれしいですね。 それにご結婚された人は、だいたい知り合いを紹介してもらうことが多いんですよ。会社の同僚や、姉妹だったり。その紹介してくれた人も、結婚してもらえるまで応援したいとさらに思えますね」
合コン専門バーが生まれたルーツとは？
満面の笑みを浮かべながら語る緒方さん。ここで彼がなぜ合コン専門のバーを開くようになったのか、そのルーツを探ってみました。
福岡市の中心部である天神エリアにおいて「Dining85」を開く前は、もともと福岡市東区箱崎でカフェ＆バー「85cafe（ハコカフェ）」を経営していました。その頃、お客さんから言われた一言がきっかけになったそうです。
「お客さんとマスターの僕がゆるーく話している雰囲気のバーだったのですが、その時お客さんから『合コンを開いてよ』と言われて。当時、独身のお客さんに聞いたら、東区なのに糸島や久留米や宗像から来ている人もけっこういたんですよ。だから繁華街の天神に店を構えれば、もっと遠くからいろんな人が集まりそうだなと感じました」
福岡市東区は、中心の繁華街からはやや離れた場所。天神からは車で20分ほどかかり、JRは快速が止まらないような場所に店を構えていました。緒方さんのインタビューで出てきた、糸島、久留米、宗像はそれぞれお店から車で一時間近くかかる場所なので、それほど遠くてもお客さんがやって来ていることに可能性を感じたのでしょう。
そこから合コン専門のバーを、繁華街の天神駅から徒歩5分ほどの距離にある天神北で開業します。最初はなかなか人が集まらなかったそうですが、口コミなどにより徐々に人が集まるようになっていきました。
Dining85の店内
しかしそんな中、襲ってきたのが新型コロナウイルスによる被害。対面で知らない人同士が話す形式をとっていたこともあり、キャンセルが相次いだと言います。2020年春からは全キャンセルレベルになり、お店は一時休業状態となりました。
我慢の時期が続きましたが、だんだんとコロナ禍による規制が緩和されていく中、始めたのが先に紹介したマスクコンだった訳です。このユニークな取り組みが功を奏し、徐々に話題になっていきます。
より注目されるようになったのは、地元テレビ局の人気深夜番組「ドォーモ」にて「福岡のコロナ禍での婚活事情」と題して特集されたこと。2年以上前の放送にもかかわらずいまだに反響があるようで、応募する際に「番組を見て存在を知った」と言う人が多いそうです。
緒方さんは頼もしいお節介マスター
自らお店に立って接客する緒方さん
合コン専門のバーというと、真剣な出会いを求めている人がいる一方で、そうじゃない人もいそうなイメージがあります。しかしあくまでマジメな出会いを応援するお店が運営できているのには、しっかりした管理体制に要因がありました。
「明らかに違う目的で来ているお客さんは出禁にしています。例えば既婚者であることを黙って来てそうな人は、しっかりチェックしていますね。左手の薬指に指輪の跡がないか調べたり、待ち受け画面を赤ちゃんにしていないかなどをチェックしたり。 もしその人が既婚者だった場合はもちろん帰ってもらいますし、連れてきた友人にも厳重に注意します。これまで会の途中でそういったことが発覚した場合は、女性側全員に返金したこともあります」
こういった厳しいルールを徹底するからこそ、女性は安心して参加できるのでしょう。緒方さんは毅然とした態度を取りながらも、普段はとても朗らかで陽気な性格です。逆にマジメに参加してくれている方たちには、良い結果が生まれるように、懸命に「お節介」を働きます。
「合コンが盛り上がっていなさそうな時は、僕が積極的に場を盛り上げようとします。お節介なくらいがちょうどいいのかなと思いますね。あと、盛り上げる際に使っているのがコレです」
トークのお題が書かれたメッセージカード
見せてくれたのは、いろいろなお題が書かれたメッセージカード。「結婚する前に同せいは、賛成派？否定派？」「付き合った期間が一番長くてどのくらい？」「告白したい派？ されたい派？」などの恋愛系の質問が並びます。
「ぎこちないグループにはこの恋愛トークカードを使って、話のお題を振っています。カードを使うことで聞きにくいことにもズバリ突っ込めるので、とても役立っていると思いますよ」
出会いに困ったらDining85へ
合コン企画の際、マスターで司会進行を務める緒方さん。その傍らに毎回いる女性スタッフは、彼の奥さんです。緒方さんは会を進行する中で、参加者に必ず伝えることがあると言います。
「ぜひフィーリングを大切にしてください。僕は嫁さんの顔はそこまでタイプじゃありません（笑）。でもそれは向こうも同じで、僕の顔はタイプじゃないと言います（笑）。でもお互いに『一緒にいて楽しい』『安心できる』『ふと寂しいと思った時に一緒にいたいと思える』存在なんです」
そう言うと、お客さんに共感してもらえるのだそうです。このスピーチの背景には、緒方さんが最近の恋愛事情について常々考えていることがあります。
「最近はマッチングアプリが普及して、出会うこと自体は簡単にできる時代になってきたと思います。ただやはり直接会ってみて話さないと、その人のことはなかなか分からないもの。会ったときのフィーリングを大事にしてほしいと感じています」
こういった想いのもと、毎週開催されている合コン企画。緒方さんは成婚報告100組を目指して、今後もお店を続けていきたいと語ってくれました。もし真剣な出会いをしたい方がいたら、ぜひDining85へ足を運んでみてください。
■ Dining85
公式HP
住所
〒810-0001
福岡県福岡市中央区天神3-14−2 公建ビルⅡ7階
電話番号
092-406-6926
アクセス
天神地下街「西1」出口より徒歩2分
緒方さんのInstagram
緒方さんのTwitter
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