「健康のために身体に良いものを食べたい」と誰もが一度は思ったことがあるでしょう。スーパーやコンビニで、「カロリーオフ」「糖質カット」「国産」「無添加」「無農薬」の文字を見て、商品を買うかどうかを決める人も多いのではないでしょうか?


「自然食品の店ヒノモト」は、できるだけ農薬や添加物が少ないものを食べたい・食べさせたい人が安心して買い物ができる場として50年以上重宝されてきました。


自然食品を長く扱ってきた店主の前川さんに、農薬や添加物との付き合い方のヒントや、健康を謳った多くのアイテムの中からヒノモトに並べる商品を選ぶ基準をお聞きします。



自然食品の店を続けて50年ーお店に来るお客さんの変化


福井市の堀ノ宮地区にあるヒノモト。店主の前川さん(写真右)にお話を伺いました。


ー 福井県福井市で添加物を使用しない食品や無農薬・減農薬な農作物を販売する「自然食品の店ヒノモト」の前川社長にお話を伺います。2022年で50周年を迎えられましたが、お店はどのようにスタートしたのですか?


ヒノモトは父が始めたお店で、わたしは15年前から2代目として切り盛りしています。身体があまり強くなかった父は、マクロビ(マクロビオティック:玄米や野菜、海藻などの日本の伝統的な食生活を通して、健康な暮らしを目指すこと)の考え方に感銘を受け、マクロビの価値を広めたいと、食品の店を立ち上げたようです。


― 50年続けていると、健康や食品に対する顧客のニーズも大きく変化していると思うのですが、お店に来る人の変化を感じることはありますか?


あります。始めたばかりのころは、高齢のお客さんが多かったですね。加齢による体調不良を患っていて、健康に余生を過ごすために身体に良い食事をしたいというようなニーズだと思います。


地元福井をはじめ各地の農家から仕入れた野菜も並んでいました。


― 自分の身体になんらかの不調を感じている人が来ていた、ということですね。そこから客層はどのように変化していくのですか?


20年前くらいから、メインのお客さんは小さい子どもがいるお母さんになりました。妊娠や出産をきっかけに、自身や子どもの食べる物に気を遣うようになった、ということかと思います。今もこの傾向は続いています。


― 最近はどうでしょう?


ここ6、7年は、純粋に自然食品に興味がある人が来てくださっていると感じます。実際に不調があるわけではないけれど、日常の健康管理に興味があって、安全な食品を口にしたいとお店を覗いてくださいます。


最近では男性が一人でお店に来ることもあります。県外から来てくれる人もいますよ。

おやつの品揃えも豊富です。お客さんのリクエストで商品を仕入れることもあるといいます 。


― 社会全体で、食べることや健康への意識が変わっていると想像できますね。


ずいぶん変わったんじゃないでしょうか。たとえば、最近はスーパーやコンビニでも無添加と書かれた商品が増えました。安全な食への関心が高まっているのでしょうね。良い傾向だと思いますが、そのぶんニュートラルな情報を正しくキャッチすることが大切になると思います。


― ニュートラルな情報とはどのような情報を指しますか?


スポンサーがない情報、という意味ですね。たとえば、少し前に流行った糖質制限ダイエットでは、お米を食べると太ると思わせるような情報が飛び交っていますが、冷静に考えるとそうではないと気づくはずです。戦前の日本人は米ばかり食べていましたが、太っている人は今よりも少なかったので。 


健康情報だけでないですが、ニュースで報道される情報も「冷静に考えればおかしい」内容がたくさんあると思います。ニュートラルな視点を養ってほしい、というメッセージはお客さんにも伝えるようにしています。



作り手の想いをお客さんに伝えることが売り手の使命


商品棚のあちらこちらで見られる手書きのポップ。ついつい目が留まります。


― 調味料、食品、野菜、サプリメントや雑貨など、ラインナップが幅広いですね。お店に並べるかどうかは、どのような基準で判断しているのでしょう?


食品に関しては、無添加で安全かどうかが一番の基準です。サプリだと、きちんと効果があるか、考え方がわかりやすいか、価格が手ごろかなど、そういった観点で商品を見るようにしています。


― 「考え方のわかりやすさ」ですか。


発想のシンプルさ、と言い換えるとわかりやすいでしょうか。たとえば、大根湯とか生姜湯とか、誰でも知っているような食材を使った民間療法は身体の冷えを解消するのによく効きます。よくわからない成分が入っているサプリメントよりも、効果もシンプルですし発想も簡単ですよね。


商品を選ぶときは、このようなシンプルな発想で作られたアイテムを選ぶようにしています。効果があるといわれる成分を組み合わせて、とってつけたような効果を謳ったものも多いですからね。


― お店には手書きのポップが多いですね。


情報発信には昔から力を入れていて、ちらしや店頭の商品ポップのひとつをとっても、情報を伝えることに重きを置いて作ります。たとえば、「この醤油はどんな原材料を使っていて、それが一般的な醤油とどう違うのか」を丁寧に書きます。


基本的に、添加物や農薬を使わない商品は価格が高いので、商品の価値を理解してもらえないと売れなくなってしまいますからね。


人気商品の「真空焙煎玄米」。玄米の食べにくさを感じさせない画期的な商品だと前川さんもイチオシです。


― たしかに。商品ができる過程や、作り手の想いに価値があるものが多いですよね。


その通りです。作り手は信念を持っていて、利益が少ないにもかかわらず作っている一面もあります。売れなくても、技術や味を後世に残したい、消費者に本当に良いものを食べていただきたいという信念が商品から垣間見えます。作り手の信念を、お客さんに伝えるのが売り手の使命だと思います。



愛されるお店作りのキーは流行に左右されないこと


品出しをするスタッフの女性。商品の特徴を説明してくださいました。


― 農薬や添加物についてはどのようにとらえていらっしゃいますか?


農薬も添加物も悪いところにだけフォーカスされると「身体に悪いから排除すべき」と判断されてしまいます。ただ、添加物があるから災害時でも食事ができますし、大量生産が叶う便利な側面もあります。


もちろん問題意識を持つことも大切ですが、必要だから使われていることを無視せずに、悪い部分をどう扱うか、くらいの感覚を持っていればよいと思っています。


― 農薬も添加物も利点があるから使われているということですよね。


そうです。大量生産できる利点があります。ただ、問題もあるので、その問題とどう付き合うか、という程度の話です。これはわたしの予想ですが、この先、加えることで食品の質が良くなる添加物が生まれるかもしれない。今は過渡期なんですよ。


― 過渡期ですか。なるほど。過渡期の中で、前川さんご自身は自然食品のお店の代表としてどのような役割を担っていきたいと考えますか。


50年間お店が続いているといっても、ひたすら地味にやってきただけです。派手なことはせず、今まで通り地道に自分のペースでお店をやっていきます。良い発想の商品を取り入れたり、正しく情報を伝えたり、今していることを続けます。


サプリや雑貨など食べ物以外の商品もあります。前川さんが今気になっているのはスマホやタブレットの電磁波を除去するアイテムだそう。


― 今後もご自身の価値観を大切にして、続けていかれるんですね。


流行っている、売れ筋だからとかで、それをお店に並べることはしないです。自分が納得できたものだけを選んでいきたいですね。


― 前川さんのその姿勢がお客さんの信頼につながっているのでしょうね。


売る側が「おもしろい!すごい!」と思わなかったら、お客さんには伝わらないと思っています。いくら説明が完璧でも、流行っていても、それを売る人がわくわくしていなければ商品の良さは伝わらないです。感動やときめく感情を大切にしてお店をやっていきたいです。


たくさんのお客さんが来てほしいですが、コアなお客さんが付いてくれるお店にしたい。安定して長く続けるキーはこの考えにあると思います。


― 流行に左右されずに、自分が納得できることを地道に続けてきたと振り返る前川さん。ヒノモトが長く愛され、自身や家族の健康を大切に思う人たちから信頼され続けている理由がよくわかりました。ありがとうございました。




■ 自然食品の店ヒノモト


住所

〒910-0033

福井県福井市堀ノ宮1丁目803


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@hinomoto_macro


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