レインボーホットドッグは、千葉県の海沿いの町、いすみ市にあります。大きな国道を一本横道に入った長者町商店街通りに面したお店です。鮮やかなオレンジ色をした可愛らしい外装が目印。


店内に入ると、店主の和田順子さんが元気な挨拶でお出迎えをしてくれます。



幼い頃の思い出の味だったホットドッグ


レインボーホットドッグでの定番商品「ホットドッグ」


順子さんがレインボーホットドッグを始めようと思ったのは、幼い頃に食べたホットドッグの美味しさが忘れられなかったことがきっかけでした。ご両親とお姉さん、弟さんの5人家族の次女として育った順子さん。お父さんがアウトドア派で、幼い頃は海、川、山、遊園地、プール、季節ごとの果物狩りなど、とにかく色々な場所に連れていってもらったそう。当時プールに連れて行ってもらった時に必ず食べていた思い出の味がホットドッグでした。


「泳いでお腹が空いていたのもあって、プールの売店で買ってもらったホットドッグが本当に美味しくて。パンに焼いたソーセージを挟んでケチャップとマスタードをかけただけの簡単なものなのに、こんなに美味しくお腹を満たせて、幸せを感じられる素晴らしい食べ物だなって感動してたんです」


当時からホットドッグ屋さんを開くことが順子さんの夢となりました。



「今しかない!」と思い立って始めたホットドッグ屋さん


順子さんは学生時代の早い時期から色々なバイトをしてきたといいます。小さい頃から家族のために料理を作ってきたこともあり、将来は調理関係の仕事につきたいと考えていた順子さん。17歳の頃に大型社員食堂を運営する会社に入社し、調理師として22年間勤務しました。


「ちょうど会社の契約の更新だったというのもあるんですけど、職場でやり尽くしたと感じてしまって、やりたいことがなくなってしまったんです。だから、あまり深く考えずにすっぱりと仕事を辞めました」


その後は、大好きなサーフィンをしながら、しばらく将来について考える時間をとったといいます。


「当時40歳くらいで、人生の折り返し地点だと思ったんです。それなら幼い頃からやりたかったホットドッグ屋さんをやろう、今しかないなって思いました。当初は、大好きなサーフィンをしながら、ワンボックスでラフにホットドッグを販売して、サーファーたちのお腹を満たせたらいいなって。でも、たまたま最初にこのいい物件を見つけちゃったので、店舗をもつことにしたんです」


思い立ったらすぐに行動をする性格の順子さんは、開店資金も知識もないまま早速ホットドッグ屋さんを開くことにしたといいます。オーブンとホットドッグに店名を印字する刻印、パンを切る包丁さえあればホットドッグ屋さんができるという確信だけは持っていたそう。


アルバイトをしながら貯めたお金で備品を購入し、地域のNPO団体が所有している建物の厨房を間借りして営業をスタートしました。オープンから1年ほど経った頃、間借りをしていた建物の所有団体から建物を引き継がせていただくことになり、自分の店舗としてお店を構えるようになりました。



お店のこだわりはホットドッグに使う天然酵母パン


レインボーホットドッグの人気商品「メキシカンチーズドッグ」


レインボーホットドッグの一番のこだわりは天然酵母で作られたフワフワのパン。地元のお店のパンを使いたいという想いで、こだわりのパンを探し求め、やっと見つけたパンだといいます。酵母菌や粉の配分、大きさ、焼き加減などを細かく何十回も調整してもらいながら、レインボーホットドッグのために作られたオリジナルのパンです。ホットドッグのパンだけを買いたいというお客さんがいたり、同業者から同じパンを使いたいと言われたりもするほどだそう。


ソーセージは近日中にリニューアル予定だといいます。リニューアル予定のソーセージとは別にいすみ豚のソーセージを使用するホットドッグも販売予定です。地元で有名なハムやソーセージ、ベーコンの専門店のソーセージ。


地元で作られたソーセージとパンを使ったいすみ市でしか食べられないホットドッグは必食です。


「自分がブレてしまうので、ホットドッグの修行は何もしてません。他の人の作り方を真似するのではなく自分スタイルでやっています!」


お店のメニューはオープン当初4種類でしたが、お客さんの提案などからどんどんとメニューを増やし、現在なんと18種類。キーマカレードッグや厚切りベーコンドッグ、あんどホイップのスイーツホットドッグなど珍しいものも多く取り揃えられています。


中でもシンプルなホットドッグとメキシカンチーズドッグが人気メニューです。メキシカンチーズドッグはスパイシーさもありながら程よい甘さもあり、辛さが苦手な方でも食べられるリピーターの多いメニューだそう。


さらに、店名に因んだ「レインボーアイスドッグ」も変わり種の人気商品。「暑い時でも美味しく食べられる冷たいホットドッグが欲しい」というお客さんの声を受けて作られました。


飲み物のメニューも豊富で、ホットドッグにぴったりなレモネードやタピオカドリンクもあります。サイドメニューとしてポテトやナゲットもあり、夏の時期にはかき氷の販売もしているそう。お店の居心地の良さもあって、何度も来店して色々なメニューを試したくなります。



みんなで作り上げたお店


独立当初、順子さんの手元には少ない資金しかありませんでしたが、お店の食器やTVなど備品関係は周りの方からいただくなどして、あまりお金をかけずに揃えられたといいます。


また、お父さんが材木屋さんだった関係で、廃材をもらいちょっとした家具を作ったり、ペンキを塗ったりといったことが自身でできる順子さん。店内には、電気コードをまく道具をリメイクしたおしゃれなテーブルもありました。


オープン当初から大切に使っているという包丁はサーフィンの師匠にオープン記念でプレゼントしてもらったもの。いすみ市をよく知る方と一緒に市内のパン屋さんを巡り、おすすめのパン切り包丁を尋ね歩いてやっと見つけたものだといいます。


お店を始めてみて大変だったことは、全てのことを何もかも自分一人でやること。仕込みや接客、仕入れ、お金の事務関連を限られた時間の中でやらなければなりません。


「これまで本当に色々あったんだけど、辛いって感じたことは一度もなくって。本当に楽しくやってこれました。一人でやっているお店だけど周りにいる方にたくさん助けてもらっているから一人じゃない感じもして。関わってくれた人たちみんなで作り上げたお店なんです」


現在はホットドッグ屋さんの営業以外に、店舗内で駄菓子の販売や居酒屋の営業もしています。


「お客さんのリクエストに答えていたらどんどんいろんなことをやりたくなって(笑)仕入れや仕込みが増えてきて、自分の時間がなかなか取れないんですけどね」と笑顔で語ってくれました。 



順子さんにとって大切なサーフィンの存在


店内の内装からもわかるように順子さんはサーフィンが大好きです。サーフィンはお姉さんの影響で18歳の時に始めたといいます。お店を始める前は、毎日サーフィンをされていたとか。お店を始めてからも、10時から15時の営業前後にサーフィンをしていることもあるそうです。そんな順子さんにサーフィンの魅力について聞いてみました。


「自分の好きな板で波に乗って見る景色が最高です。幸せだな〜って感じますね」


店名の「レインボー」はハワイでサーフィンをしているときに見た、大きな虹の風景から名付けられました。当時まだこのお店はオープンしていませんでしたが、ホットドッグ屋さんを開くときは「レインボーホットドッグ」と名付けようとそのときから決めていたといいます。


店内はサーフボードやハワイアン雑貨で装飾された明るい雰囲気。いすみ市や隣町の一宮市は、有名なサーフスポットでもあります。お店に遊びにくるサーファーの方々のサインもたくさん飾られていました。店内の真ん中にはサーフボードで作られた初代の看板があります。


「有名なプロサーファーのシェイパーさん(サーフボードを作る人)にボードをもらって看板を作ったんです。外に飾っていたけど風に飛ばされたりと大変だったので、今は店内に置いてるんですけどね(笑)お店を始めた頃の看板ですごく思い入れのあるものなので大切に飾っています!」


サーフィンをしている時間や、サーフィンを通じて出会った方々の存在が順子さんにとって大きなものだという印象を受けました。



常連さんに愛されるレインボーホットドッグ


常連さんの多いレインボーホットドッグ。2〜3年ぶりに戻ってきてくれるお客さんもいるそうです。筆者も何度かお店を訪れていますが、順子さんの元気な話し声とお客さんの笑い声が絶えない和やかな雰囲気です。


「本当にいろんな人が来てくれるんですよ〜!よく覚えているのは、突然、弟子にして欲しいと来てくれた女の子がいて。3日間ホットドッグを一緒に作ったんです。その子は今、元気にハンバーガーをメインとしたお店をやっているんですよ!初めてお弟子さんを持った経験だったし、そういう面白い経験ができるのもお店をやっているからだなって思います」


最近では、InstagramやGoogle Mapsの口コミのおかげもあり、新規のお客さんも増えてきているそうです。


小さなお子さんからお年寄りまで幅広い年齢層の方が来店するレインボーホットドッグ。


「お店の隣が産婦人科兼小児科の病院なので、小さなお子さんもたくさんきてくれるんです。駄菓子は最初、子供たちのために入り口の一角だけで販売してました。年齢ごとに品揃えを考えたり、子供たちのリクエストに答えたりしているうちに、気づいたらかなり駄菓子の品揃えも豊富になっていました(笑)」


お客さん想いの順子さんらしい温かさを感じるエピソードです。


さらに、「ホットドッグと一緒にビールを飲みたい」というお客さんの発言がきっかけでお酒の提供を始め、夜に居酒屋の営業もされています。


調理師としての経験が20年以上ある順子さん。お店では、お刺身や揚げ物、焼き物、炒め物などを中心としたおつまみが楽しめます。毎日通ってくれる常連さんのためにと、日によってメニューを変えているそうです。


そんな順子さんに今のやりがいを伺ってみました。


「やっぱりホットドッグがおいしかったって言ってもらえるのが何より嬉しいです。最近は、小さなお子さんが自分から行きたいと言って、親子で来店してくれるのが本当に嬉しいんですよね」



生涯現役でホットドッグ屋さんをするのが目標


「私、この場所でおばあちゃんになっても死ぬまでホットドッグ屋さんやります」と力強く語ってくれた順子さん。


「占いで長生きをするって言ってもらったことがあって。おばあちゃんになってもホットドッグ屋さんやるって決めました(笑)だから最高のパンを作ってくれているパン屋さんにも長生きしてもらわないと!」


いすみ市にお店を構えている順子さんですが、現在は、県内の別の場所でご家族と暮らしています。


「今は、みなさんのお陰でホットドッグ屋さんとして楽しく毎日を過ごせています。幼い頃からの夢が叶ったなと強く実感しています。この地域は本当に温かい人が多くて素敵な場所なので、将来は、ホットドッグを販売して稼いだお金だけでお家を建てたいです!」


愛あふれるお人柄で常連さんから愛されている順子さん。美味しいホットドッグと順子さんとの会話に元気をもらいにぜひ訪れてみてください。



■ Rainbow Hot Dog(レインボーホットドッグ)


住所

〒299-4616

千葉県いすみ市岬町長者176


営業時間

10:00-15:00

(ラストオーダーは14:30で、売り切れ次第終了)


定休日

火曜日・日曜日


Instagram

@rainbowhotdog7716