国立大学がすぐそばに位置する、秋田市手形の山崎町。 学生が多いこともあり、周辺には美容室や飲食店、カフェなど多くのお店が建ち並んでいます。
そんな中、木目調にかわいらしい月のロゴが目印の「リリスのお菓子」が、2023年4月にオープンしました。 “クリスタルスイーツ”という名にふさわしい、美しい見た目の琥珀糖を使ったお菓子と、フラワーゼリーの専門店です。
オーナーは中津川直子さん。 趣味で始めたお菓子づくりが、お仕事となるまでの経緯を伺いしました。
前職は自動車関係！異業種から転身した理由とは
季節やイベントに合わせた商品や、ギフトにも喜ばれるスイーツも随時販売しています。
元々、乗り物が好きということもあり、車のクリーニングや車検に除雪まで様々なお仕事を個人事業として行っていた中津川さん。
趣味のお菓子づくりをSNSにアップしていた際に、ガスのショールームで働く友人から「料理教室の講師をやってみないか」との誘いがあり、月に何度か料理講師として、焼き菓子中心のお菓子づくりを教えていました。
その傍らで、インターネットで見つけた琥珀糖を用いたクリスタルスイーツに一目惚れをし、最初は真似をしながら作っていたそうです。
本業のお仕事では、冬になると大雪で多忙になる除雪作業に疲れを感じ始めていたといいます。降り続く雪を相手に朝4時頃から除雪をし、仮眠を摂れるかどうかで、作業は深夜にまで及ぶことも。
「除雪の仕事が忙しすぎて、全然眠れない、帰れない。年越しをローダーの中で過ごしたこともありました（笑）車のクリーニングも肉体労働なので、いつまでやれるんだろう、雨風がしのげる仕事がしたいって思うようになりました」
自分にできることってなんだろう
一番に仕事として思い浮かんだのは、趣味で続けてきたお菓子づくりだったといいます。
「初期投資を抑えることも考え、最初にインターネットでの販売を考えました。でも、家のキッチンでは販売許可って下りないんですよ。そうなると、どこかに工房を借りなければならない。イコール家賃が発生してしまうわけなので、家賃以上の売上を出せるかというと、知名度もないから難しいわけなんです。どうせやるならお店を構えて、地元の集客から知名度を上げようって考えました」
琥珀糖スイーツは長年作り続けても全く飽きなかったことで“好き”を再認識したといいます。
これは仕事にできる！秋田にない琥珀糖スイーツだったら、自分も戦えるのではないかという直感の元、中津川さんはお菓子屋さんの店舗経営に踏み切ったのです。
リリスのお菓子が誕生するまで
美術大学附属高等学院に通う、娘さんのクラスの友人たちに案を募って決めたという、センスが光るお店のロゴ。アクリルの看板にもよく映え、お客さんにも好評いただいているそうです。
お店づくりをするにあたって、ターゲットは女性に絞って“女性が喜ぶお店”にしたいと考えたといいます。
「男の人は入るのを躊躇（ちゅうちょ）するくらいのお店だと思っていたのに、意外と男性のお客様も来てくれるんです。一人で入って来て、一番きらきらしている琥珀糖のお菓子を買ったり、カップルでも男性のほうが興味津々で見ていたり。男子のほうがときめいているのかも！って、なんだかその姿が、かわいらしく見えました（笑）」
そんな男性のお客様から、店名である「リリスのお菓子」の由来について、正解を当てられることも多々あるのだそうです。それは、有名アニメのキャラクターの名前にちなんでいるからでした。
「言いやすく、聞き間違えのない覚えやすい名前を考えていて、ふと有名アニメを見ていた時に出てきたキャラクター名の響きで決めました（笑）扱うスイーツだったりお店の名前だったりがお店のロゴにマッチしているので、とても気に入っています」
自然由来の寒天は健康に導いてくれる効果もある
琥珀糖スイーツは、乾燥させたものと生のものがあり、おすすめはキラキラと輝く生の方だそうです。
「秋田って、寒天消費率が全国一位なんですよ。スーパーでもサラダ寒天やら、フルーツ寒天が必ずあるくらい。寒天は食物繊維が豊富で、お通じにもいい。当店で販売しているゼリーの透明な部分は、寒天で作っています。我が子がひどい便秘症なんですが、定期的に寒天ゼリーを食べさせることで、なんと解消してしまうんです。舌触りが良く食感もツルンとしているので食べやすく、水分も一緒に摂れるから体に優しいんですよ」
透明なゼリーの裏側から、注射器を使って花びらを注入したフラワーゼリー。ゼラチンにはない、寒天ならではの透明感が特徴的です。
“かわいい”が溢れるお店にスタッフもハッピーな毎日
リリスのお菓子でスタッフとして働くのは、元々は同僚の関係であった“ゆうこりん“こと、ゆうこさん。 息子さん同士が同級生ということもあり、ママ友としても仲良くしていたそうです。
「私が作ったお菓子を食べては『お店をやりなよ！そしたら私、ついていくから』と言い続けてくれました。実際にお店の立ち上げの話をしたら、本当に仕事を辞めて一緒についてきてくれたんです。彼女はお菓子屋さんでの接客経験もあったから、テキパキ動いてくれるし、いつも店頭に並ぶお菓子を見ては『かわいい～』って言ってます（笑）スタッフとしてはもちろん、このお店のファンでいてくれる存在でもありますね」
好きなことを楽しみながら生きていける自分
自身や家族も含め、常に明るい人に囲まれていると話す中津川さん。時折、娘さんが学校帰りにお店に立ち寄り、パッケージのシール貼りをお手伝いしてくれることもあるそうです。
中津川さんの気さくなお人柄と、ハキハキとした気持ちの良い接客で、初来店のお客様であってもすぐに打ち解けられます。
「こんな素敵なお店になっちゃったから、ちょっとは上品にしないとと思ったんですが（笑）設計士さんからは『ボロが出るからやめなさい』なんて言われちゃいましたよ（笑）私自身、これからもとにかく楽しくやっていきたいですね。単純に、自分が充実してるって思えるようにお店を続けていきたいから」
最後に今後について尋ねると、エネルギッシュで前向きな答えが返ってきました。
「基本的に人が作っているものって、自分でも作れると思っているんです。ただ、クオリティを求めたら職人さんなんだよね。琥珀糖だってフラワーゼリーだって、最初は真似っこから始まったんですもん。私はそこから、本当に好きって思えるものに出会えたわけで。これからもお客さんからの一番の褒め言葉『かわいい』をもらえるように、このお店らしさを出していけたらいいなって思います」
一歩お店に入ると、きらきらとしたかわいいジュエリースイーツに囲まれた、リリスのお菓子の世界。
見た目の美しさと、口に含んだ時に広がる優しい味に、思わず幸せな気持ちになることは間違いありません。
■ リリスのお菓子
公式HP
住所
〒010-0854
秋田県秋田市手形山崎町10-55
