イベントやお祭りのシーンだけでなく、街角や駐車場でもよく見かけるキッチンカー。


ホットスナックが定番ですが、スイーツやコーヒー、流行りのグルメまでとメニューも様々です。 晴れ渡った空色の車が目印の「allpy(オルピー)」は、体の健康を第一に考えた高たんぱく・低脂質・減塩のお弁当・お惣菜のキッチンカーです。道の駅に市場、スーパーや神社まで、秋田市を拠点とした様々な場所に出店しています。


「高齢者や介護状態の方など、食事制限のある方にこそ健康食を届けて、みんなを元気にしたい!」と思いを語ってくれたのが、オーナー・武田紀子さん(トップ写真:右)です。



介護福祉士として働いている中での転機


お弁当に加え、コーヒーや、りんごづくりで有名な横手市十文字町の「ほそかわ農園」のりんごジュースも販売しています。


元々は介護福祉士として勤務をしていた武田さん。施設では介護の業務だけでなく、調理場に入ることもあったそうです。


会社勤めの毎日でしたが、お父様の在宅介護のために一時的にお仕事を休職。在宅介護が落ち着いたその後、職場復帰をするも、武田さん自身の体調が悪くなってしまったことで退職をしました。


退職前から、イベントごとが好きで、よく訪れていたという武田さん。 一緒に足を運んでいたのは、小学生以来の親友の渡部京子さんでした。


「彼女は以前、胃の切除手術をしています。なのでキッチンカーで一人前の注文をすると、量が多くて困ってしまうんです。私が仕事を退職していたこともあり『ちょっとの量だけでも購入できるキッチンカーを作っちゃおうか!』って話になったのが、キッチンカー開業のきっかけですね」


京子さんが協力したいと言ってくれたこともあり、その実現までには、そう長く時間は掛かりませんでした。


「それからキッチンカーを扱う会社を調べているうちに、良さげな車が千葉にあるって知って。直接見たいから『じゃあ来週、千葉に行く?』みたいな軽い感じで、秋田から千葉に高速道路を使わずに向かいました(笑)」


秋田は曇りの日が多いこともあり、キッチンカーは明るいブルーを基調にしたいと考えていて、無事にイメージに合う車を確保できました。


「一般的なキッチンカーは商品のお渡し用の窓が小さいですが、オルピーのキッチンカーは、車内の様子が見える大きな窓もポイントなんです」


内装は心が元気になるような空のイメージ。 そんな理想的なキッチンカーとの出会いで、これからのことに胸を弾ませたのでした。



どんな人でも食べることでhappyになるために考えた提供方法


武田さんの親友でもある京子さんは、お手伝いとして来てくれることも多いそう。お二人の明るい空気感に、お客さんも一緒になって会話を楽しむ様子がみえます。


キッチンカーの準備もでき、それからは出店準備やメニュー作りの考案を始めました。


“all happy”から着想を得たというallpy(オルピー)は、心と体が元気になれる、そしていつも笑顔・幸せでいられるようにと、願いを込めて名づけたそうです。


お弁当の提供方法は、定番の四角いお弁当箱はもちろんのこと、カップ形式にもできるのがオルピーの特徴です。


「食べたいものを、食べられる分だけ購入できる。そしておうちに持ち帰っても温めやすいように、レンジ対応カップにしているのもこだわりです」


レンジ対応カップにより、メイン・副菜・ごはん・お味噌汁まで、単品注文が可能になりました。



お客様一人ひとりに寄り添う“優しいごはん”


「私自身アレルギー体質なんです。なのでアレルギー体質のお客様向けに、メニューには食材の名前の表記をしたり、成分だったり調味料だったりの細かいところまでお伝えできるようにしています」


高たんぱく・低脂質のメインおかずの看板メニューは「ささみのつくね」。 ふわふわ感を出す豆腐やだし寒天を使用することで、つなぎの卵や小麦を不使用にしているので、※卵・小麦アレルギーを持つ方でも安心して食べられます。(※調味料には、多少の小麦が含まれる醤油を使用しているため、アレルギー反応が出る可能性があります)


パサつきがちなささみですが、しっとりとした食感と優しい味のタレがマッチしています。


「ささみのつくねだけでは寂しいので、もう一つのメインおかずとして、鶏もも肉の照り焼きも用意しています。その方の好みに合わせたものを食べてほしいので、ごはんをおにぎりにしたりお粥にしたり、味付けの濃さをお好みにしたりとご要望に沿って提供しています」


お弁当の出来上がりまでには渡邉さんのお人柄溢れるトークで、お客さんとお二人の空間は、まさに青い空のような明るい雰囲気に包まれるのでした。



お客様に助けられながらここまでこれた


「イベントに行っても、おかず系のフードはたくさんあるけれど、野菜だったりご飯だったりはないんですよね。お祭りなんかに行っても、お孫さんを連れたおじいちゃんおばあちゃんが食べるものがない。そういったご高齢の方はもちろん、塩分・血糖値を気にされている、食事制限のある方にオルピーを利用してもらいたいです。味付けだけでなく、野菜の柔らかさにまで配慮しているので、安心して召し上がっていただけます」


取材当時、まもなくオープンから1カ月を迎えるオルピーでしたが、出店場所によって様々なお客さんとの出会いもあったといいます。


「とある会社さんの駐車場をお借りして出店した際には、初めてのランチ営業で多くの注文をいただき、仕込みの量や効率についての改善を考えるきっかけになりました。注文を受けてから調理をするので、お待たせしてしまうこともあるのですが、快く待ってくださる優しいお客さんに囲まれてありがたいと思っています」


“Instagramを見て来ました”と、写真を撮ってSNSに投稿をしてくれる方も多く、口コミでもオルピーが広まってきているそうです。


「日々勉強・成長だと思っているので、少しずつ慣れてお仕事をこなしていくことで、いずれは大きなイベントや市外にも出店できたらと思っています。こうしてみたらどうだろう?という工夫や、改善したいところを意見し合う余裕が、少しずつ生まれてきています。仕込み時間の時短をすることで、営業時間を長くしたり、出店日数を増やしたりができるようにしたいです」


会社員として働いていた武田さんですが、ご自身の好奇心から始めたキッチンカーの活動をすることで、考え方にも変化があったそうです。


「自分の体調に合わせて出店できることはもちろん、万が一仕事ができない状態になった時に、キッチンカーのレンタルもできるんじゃないかと思っていて。キッチンカーの可能性や活用の仕組みづくりを、元気なうちに考えていけたらいいですね」


お弁当の出来上がりを待つ時間すらも、楽しくいられるオルピー。 介護の現場や、親友の食事制限を目の当たりにし、健康でいてほしいという願いが人一倍強い武田さんだからこそ作れる“優しいごはん”なんだと感じました。


心と体を元気にする空色のキッチンカーは、今日も幸せを届けるために走り続けています。




■ allpy(オルピー)


Instagram

@allpy__all_happy