「いくつになってもキレイでいたい」 誰であっても、このような思いを感じるのではないでしょうか。しかし、育児に仕事といった生活スタイルの変化や年齢を重ねたことで、体調や肌のトラブルとして訪れてしまう現象は、女性ならではの悩みでもあります。
そんな女性を対象として、秋田市でメイクセラピストとして活動するのが佐々木美郷さん。
年齢やその時の環境に合う方法でメイクやスキンケアのやり方をレクチャーしてくれることで、肌悩みやコンプレックスを吹き飛ばし“心をポジティブにする”サポートをしています。
その拠点となるのが、メイクレッスンスタジオ“ヴィヴァンメイクアップワークス”です。はじめは自宅でレッスンを行っていましたが、より多くのお客様に居心地の良い空間を提供するため、2021年にメイクレッスンスタジオを立ち上げた佐々木さん。
“肌からポジティブに”をテーマに、心が元気になれる女性を増やしたいという想いで活動をする佐々木さんに、開業までの経緯や、メイクが秘める力についてを伺いました。
結婚を機会に秋田へ移住
生まれも育ちも新潟県という佐々木さん。社会人になってからは化粧品会社に入社し、その後はアパレルに飲食店勤務と、様々な職種を経験されたといいます。
「接客が好きなことは分かっていたのですが、東京にいた頃は『将来的にこうなりたい』っていう明確なビジョンはなくて。ずっとこの仕事をしていたいなとか、この職場にいたいなと、フワ~っとした感じで過ごしていました」
結婚を機に、東京で出会った旦那様が秋田出身だったことで、秋田県へ移住。当時は土地勘も自動車免許もなく、友達もいない状況でした。
「娯楽もないし追い求めるものもなくて、そこに住む人にも閉鎖的な印象を受けたんです。『東京から来たんです』なんて言うと、『よく秋田に来たね』って言われることもしばしば。思うように人とコミュニケーションが上手くとれなくて、どんどん孤独になって辛い気持ちになりました」
そのような暗い気持ちを抱えている時期に妊娠が発覚し、自分の住む町を何も知らないまま、子育てにどっぷりと浸かる日々がスタートしたのです。
やりたいことはなんだろうと模索した日々
スタジオに一歩入ると、アンティーク調のインテリアがお出迎え。窓から差し込む光も心地よく、こだわりが詰まったスタジオです。
双子の男の子を出産した後は、旦那様も多忙だったことから、ワンオペ育児に心が追いつかない日々が続いたそうです。
「慣れない町での暮らしに子育てがプラスされて、より孤独を感じてしまっていました。でも、2人の子どもを育てないと、家庭を回さないと。そんな思いで必死に2年くらいは家庭中心の状態が続いていました」
そうしているうちに人と関わらない、家庭もうまくいかない生活に徐々に限界がきたといいます。そこで佐々木さんは、リフレッシュのためのお出かけができるように運転免許を取得し、秋田県の道の駅や、観光施設を子連れで渡り歩いてみたのです。
「ついでに人とお話がしたくて“1,000人とおしゃべりをする”っていう目標を立てたんです(笑)色々なスポットを巡ることで、ダイナミックな自然を見つけたり、たくさんの人に出会えたりで『秋田って楽しい!』って思えました」
こうして秋田の魅力に気づいた佐々木さんは、秋田巡りを通して、まちづくりに興味を持ち観光士の資格を取得。まちづくりの団体で活動も始め、地域のお祭りの様子を観光映像資料として町に提供するために、ドローン操作の勉強も始めたそうです。そこで、思わぬことにドローンの仕事が多忙化し、ドローンで開業をするまでに発展。
しかし「本当はドローンがやりたいわけではないのに」という気持ちと、旦那様から「子どもが小学生になるまでは、専業主婦でいてくれ」との言葉もあり、廃業を決意。何もしない日々が再び訪れ、半年ほどは無気力状態になってしまったといいます。
「メイクの力で目に輝きが宿る」を体感した出来事
カウンセリングをしながら、丁寧に相手に合ったメイクやスキンケアをレクチャーしてくれます。佐々木さんの気さくなお人柄で、スタジオが明るさと笑顔に包まれます。
ぽっかりと心に穴が空いた日々が続く中、まちづくり団体に関わっていた時に出会った、着物リメイクの団体の方から声を掛けられます。
「着物リメイクのファッションショーをやるんだけれど、ヘアメイクを探していて、誰かいない?って聞かれたんです。まちづくり活動を通して人脈が増えていたので、きっと私に声を掛けてくれたんだと思います。なかなか条件に合う方がいないな……なんて思っていたら『あ、私化粧品会社にいたんだ』って気づいて、自分で名乗り出たんです(笑)」
そしてメイクの打ち合わせに参加をして、久しぶりに人にメイクをした佐々木さん。化粧品会社にいた頃に努力を重ねた練習や、積んできた経験が瞬間的に降りてきたといいます。
「メイクを施した時に“目に力が宿る”のを目の当たりにしました。モデルさんは一般人で、普段はすっぴんでいることが多い60代の方。塗れば塗るほど目に力や命、輝きが宿って女優になっていくような感じ。私自身もメイクをするほどにゾクゾクしたのを覚えています。まわりもびっくりするほどのオーラをまとい、ステージに向かっていくモデルさんの姿を見て『メイクの力ってすごい』と実感したし、これを仕事にしたい!って強くおもいました」
自信をもって踏み出せたのは“私が必要とされている”実感
佐々木さんのInstagramでは、メイク動画やオススメのコスメの紹介、スキンケアのコツなども発信しています。
このファッションショーをきっかけに、佐々木さんの元には少しずつ、メイクの依頼がくるようになります。
「メイクを仕事にするには、どうしたらいいかって考えました。土地柄もあって、芸能関係のお仕事は難しい。それなら、メイクをする相手を一般の方に絞ってみようと思ったんです。そもそもメイクを教えてくれるところってないですよね。メイクをする過程で会話をしながらレクチャーしてくれたり、使っているメイク道具やアイテムを紹介してあげたりしたら役に立ちそう!って思いました」
自分が施したメイクに満足してもらえるのか、まわりから見た評価はどうなのか。それなら正しいメイクとは何であるのかと、自問自答しながらの挑戦だったといいます。最初のうちは出張メイクとして、自宅や指定場所に出向いて活動をしていました。しかしとある広告に「おうちレッスン」として掲載をすると、予想以上の問い合わせがきたそうです。
「これだけ私を必要としてくれている人がいるなら、自分がどう思われているかを気にするよりも、レッスンを受けたいと言ってくれている、目の前のお客様にサービスを提供しなければいけないなって感じました」
それと同時に、より良いサービス提供のためにお店を持つということも意識していきます。
好きなことに囲まれる=毎日恋をしているような楽しさを感じる
秋田市の中心にある、秋田駅前から程なく歩くと見えてくる仲小路通り。美術館やカフェ・雑貨屋など、隠れ家のようなオシャレな店舗が立ち並びます。
その中で、築40年を超える建物をリノベーションした複合ビルに、VIVANTMAKEUP WORKSは位置しています。このビルにメイクレッスンスタジオを構えたい!と思っていた佐々木さんですが、当初はテナントを募集中であることを知らなかったそうです。知り合いのネイリストさんに場所を探していると話をしたところ、テナント募集をしているよ!と教えてくれたフロアが、なんと佐々木さんが希望していたビルだったのです。
不思議なご縁とタイミングで、やるしかない波がきていると感じ、まわりの協力を得ながらメイクスタジオの立ち上げを決意。
ちょうどこの頃には、お子様が小学生になられたこともあり、子育てがひと段落した時期でもありました。スタジオを構えることはもちろん、フリーランスでメイクの仕事をするということは、コスメ全般の知識だけでなく、お肌の内部まで知識を得なければならないといいます。
「コスメや美容にどっぷりハマるのが、なんとなく怖かったんです。売るのは楽しいけれど、何かを提案したり自分だけのサービスとするなんて考えてもなかったし。正直、責任を負いたくないのもありました。そんな時もあったけれど、お客さんが後押しをしてくれたから『挑戦するドアを開けてみよう』って思えたんです。今や、すっかりコスメの沼にハマってしまって(笑)毎日が最高で、まるで恋をしているみたい(笑)」
自分の発する言葉に責任が伴うからこそ、自信を持ってサービスを提供したいという思いは行動にも繋がります。化粧品検定、成分検定、スキンケア検定、アドバイザー検定にパーソナルカラー資格と、様々な資格を取得されたそうです。
嬉しい瞬間はいつもお客様からいただく
ゆったりとくつろげるソファーは、フェイスオイルトリートメント施術専用の席
秋田県産クロモジオイルを使用した施術は、癒やしの香りで心もほぐれていきます。
「今まで、芸能関係だったりドラマのヘアメイクを担当したり、華やかなお仕事をやらせていただいたこともありました。でもやっぱり『あまりメイクをしてこなかった』という一般の方にメイクをレクチャーしたときの、気に入ったお顔を見るのがとても嬉しいんです」
特に印象的であったのは、最高齢で92歳のお客様との出会い。当時、市の広報に掲載されていたメイクレッスンの記事を見て、スタジオを訪れてくれました。何十年もお化粧をしていないけれど、お子様達からもらったコスメはずっと大切にとっておいていると、佐々木さんに見せてくれたのは、ヴィンテージ感溢れる未使用のコスメの数々。
「『ずっとキレイでいてほしい』というお子様の想いと、それを大切にしまってあるお母様の気持ちに感動しました。レッスン後、レクチャーさせてもらったスキンケアをすぐに実践してくれたんです。数日後に電話をくれて『今までお札がめくれなかったのに、スキンケアで手元が潤ったのか、お札がめくれるようになったの!』と話してくれたのが、とても嬉しくて……」
いくつになっても“やってみることが大事”と感じさせてくれる、素敵なお客様との出会いだったと、佐々木さんは振り返りました。
メイクの力で元気になる人を増やしていく
「私がしたいメイクではなく、あくまでお客様が“自らの手でキレイを手に入れる”ことのサポートをしていきたいです。そのためには、会話というコミュニケーションが必要不可欠。その人が嬉しいって思ってくれることは何だろうって、考えることが好きなんです」
今後の活動としても、メイクの力で元気になる人を増やしていきたいと話してくださった佐々木さん。
「いつかは商品開発もしてみたいですね。その中でも“秋田の背景”がみえるようなもの。例えば水だったりお酒だったり、麹といったスキンケア商品なんかも考えています」
更に佐々木さんが着目しているのは、秋田の空の色に関連することでした。
「秋田の人って、灰色の空が嫌いってよく言うんですよね。明度は明るいけれどスタイリッシュに見える灰色、私はカッコ良くて好きなんです。明るい部分もあるけれど、ダークネスなところもある、人間の心みたいじゃないですか。曇りは悪じゃない。『休んでもいいよ』って言ってくれているみたいで心地良い。そんな秋田の空を『いい空色だね』と思える人が増えると嬉しいです」
空や川、花や自然の色といった“秋田の色彩”を使ったコスメも作りたいと、その想いを馳せる佐々木さん。紆余曲折しながらもたどり着いたのは、内側から輝く女性の笑顔を引き出す、メイクセラピストとしての道。
歳を重ねても、美しく自分らしくいたい!
それをサポートできるのは、メイクの力だけでなく、佐々木さん自身のポジティブなエネルギーがお客様に伝わっているからなのではないでしょうか。
■ VIVANTMAKEUP WORKS
公式HP
※オンラインのメイクレッスンも実施中
住所
〒010-0001
秋田県秋田市中通2丁目1−48 仲小路ビル2階