私たちの暮らしに彩りを添えてくれる雑貨。“部屋をおしゃれにするための雑貨”ではなく“心を喜ばせるための雑貨”を届けたいという、オーナー・伊藤里美さん。
秋田県の中でも、面積が最も小さいといわれている潟上市の中で、古き良き景色がそのまま残る地域に「TRETÅR(トレートール)」は位置しています。そこには、地域の魅力を伝えたいという伊藤さんの思いがありました。
KoSaJike(コサジケ)ワールドが広がる!お店の実現化へ
オーナーとしてお店をオープンする前から、雑貨クリエイター「KoSaJike(コサジケ)」として活動をしていた伊藤さん。当初はお店を出すことは考えておらず、とにかく雑貨を作ることが楽しかったそうです。そんな中、フリーマーケットで初めて自身の雑貨を販売したことで、気持ちに変化が生まれました。
「誰かが『かわいい』って言って買ってくれる喜びを、そこで初めて感じたんだよね。そこからハンドメイドのイベントにも出るようになった。そのうち作品数も増えてきて、作ったものの置き場兼売り場としてお店があったら、めっちゃステキじゃんって思ったの。私、一度思うと勢いで行動しちゃうから。そこからはパタパタとお店のオープンに向けて準備をしていった感じかな」
2坪というコンパクトながらも、ワクワクがギュっと詰まったお店。大工であるお父様と、そのお弟子さん、更には旦那さんも一緒に施工を手伝ったそう。伊藤さん自身も屋根や店内の塗装をし、様々な人たちによって作り上げられたTRETÅRは2020年7月、ついにオープンの運びとなりました。
スウェーデンの言葉で“3杯目のおかわり”を意味する「TRETÅR」。コーヒーを3杯おかわりするくらい心地よくて、長居してしまう。そして、何度でも訪れたくなるようなお店にしていきたいという思いの元、このお店は名づけられました。
オシャレじゃなくてもいい。お気に入りの雑貨で毎日がウキウキすることがいい
“ワクワクがギュっと詰まったお店”という言葉通り、入った瞬間に心がときめく雑貨がずらりと揃います。ディスプレイにもこだわっており、おうちに飾るイメージがしやすく、居心地も良い空間です。
「流木とドライフラワーの雑貨屋さん」がコンセプトのTRETÅRですが、元から流木メインの雑貨だったわけではなく、最初は市販の木材を使って作品を生み出していました。
そこから今のコンセプトにシフトしたきっかけとなったのが、伊藤さん自身が憧れているクリエイター達の作品に触れたことでした。クリエイターの一人が手掛けた、流木を使った家具を見て、流木ってこんなにかっこいいんだ!と思ったそう。更にもう一人のクリエイターは、ドライフラワーを使用した雑貨を作っており、これら2つの素材を掛け合わせたとのこと。
「せっかく日本海のそばに住んでいるからと思って、流木拾いに行ってみたらハマっちゃって。私の作る流木雑貨は、秋田県の海を飾ってるって感じ!」
店内には同じものが一つとない、それぞれに違った風合いの流木雑貨はもちろん、地元の海辺で見つけたというレトロな瓶も並びます。飾るだけでも雰囲気が出そうなTRETÅRの雑貨ですが、こんな声も聞こえるそう。
「『うちはオシャレじゃないから、どんなところに飾ればいいのか分からない』って、お客様からよく言われるの。でも、オシャレじゃなくてもいいと思うんだ。オシャレにしたいんだったら、TRETÅRの雑貨をお気に入りの一個として飾ることによって、そこから自分なりにしていけばいいし。センスがないと思っていても、お気に入りを飾って、自分の気持ちが上がっていけばそれでいいんじゃないかって思うんだよね」
伊藤さんが繰り返し語る“自分の気持ちを上げるための雑貨”に秘められた想いとは、どのような出来事からきているのでしょうか。
自分が最も苦しい時に救われた「心が喜ぶ」雑貨との出会い
お店のロゴであるカエルのキャラクターと店名のロゴは、なんと伊藤さんの旦那様がデザインしたもの。いつでも応援し見守ってくれるという旦那様の存在は、とても心強くありがたいと話してくれました。
さらに遡ると、クリエイター活動をする前は、会社員として働いていた伊藤さん。元々は、家にはなるべくモノを飾りたくないタイプだったそうです。雑貨との出会いは、自身が大きな病気を患い、手術を経て入院生活をしていた時のことでした。
「病気のことで、ひどく心が落ち込んでしまった時に、旦那さんが『かわいい雑貨屋さんがあったよ』って連れて行ってくれたの。雑貨屋さんを見ていたら、すごく素敵だった。そのとき一瞬、病気のことを忘れたんだよね。雑貨に興味を持ったのも、つくるようになったのも、間違いなくこの出来事がきっかけになっているよ。私の店のコンセプトでもある、自分の気持ちを上げてくれるようなものを提供したいっていう想いは、そこからきてるんだと思う」
最も苦しく辛い時期に、それを忘れるくらいに心が明るくなれたこと。 この出来事が、伊藤さんの今に繋がるターニングポイントとなったのです。
作品づくりの大変さが報われる瞬間とは
贈り物にもおすすめという「蹄鉄(ていてつ)の厄除け」。逆さまの蹄鉄には、厄除けの意味があるといいます。トベラの「慈しみ、飛躍」、そしてピンクペッパーベリーの「情熱、信じあう心」の花言葉に乗せ、縁起を呼ぶメッセージを表現しています。色や形、花言葉と組み合わせは様々で、目に入る度にパワーがもらえそうです。
自分自身は器用でもなく、ものづくりをするなんて思うこともなかったという伊藤さん。
「今の自分って、昔の自分とは正反対のところにいる。憧れのクリエイターさんが『簡単に作れる』って言ってたから作ってみたわけで。今考えると、その時作ったものって何これ!っていうような出来なんだけど。当時は『めっちゃかわいいものができた!』って思ってたのよ」
雑貨をつくる上でイメージした仕上がりにならないことや、イベント出店で思ったような反応が得られず、作ってどうするんだろうと落ち込むこともあったそうです。メンタル面を自分自身で保たなければならず、大変さを感じることもあるという伊藤さん。
「色々あるけれど『ずっといたい、この空間好き』って言ってくれるお客さんがいてくれると、嬉しくなれるよね。私が雑貨をつくることで、ちょっとは貢献できてるかなって感じてる」
大変なこともある中で、手にした人の心が満たされることを感じた時の喜びは、今の仕事でしか味わえないことだといいます。
来てくれた人の一日をプロデュースができる町にしたい
シーズンに合わせた様々な雑貨には“Laugh and grow fat”(笑う門には福来る)の刻印が施されています。雑貨が自分の目に入った時、思わず笑みがこぼれるような瞬間を提供したいという、伊藤さんの想いが表れています。
潟上市に隣接する秋田市に住んでいる伊藤さんですが、お店を構えるなら地元・潟上市でという思いがあったそうです。
「潟上市って、秋田市や近隣の市に行くための“通り道”っていう印象が大きいと思っていて。どこか行く途中に潟上市に寄るんじゃなくて『今日、潟上市に遊びに行こう』って思ってもらえるような町にしていきたいな。発信力が弱いお店ってたくさんあると思うから、色んな魅力を拾い上げて、点と点を繋げて結んでいくことで地元が盛り上がっていくはず」
普段は、お店の立地が小学校の近くということもあり、下校中に小学生のかわいらしい姿を見守ったり、近隣の住民の方々も、時折お店を覗いてくれたりしてくれるそう。
活動の輪を徐々に広げている伊藤さんは、買い物スタンプラリーの加盟店としての参加や、大型公園で開催されているイベントへの出店など、地域活性化に繋がる活動もしています。雑貨の販売を通して、人の心や地元を豊かにしていきたいという伊藤さんは、TRETÅRのこれからについて考えていることがありました。
TRETÅRは自分の人生をワクワクさせる存在
「お茶を提供するカフェとか、キッチンカーもやりたいなっていう夢を描いてる。前々からお茶の勉強をしてみたいって思っていて、最近では日本茶スペシャリストの資格を取ったの。雑貨だけでなく、その空間の中で日本茶を楽しむことができたら、もっと居心地が良くなるよね」
今は夢であって、自分のやってみたいことは遠い先の話かもしれないと話す伊藤さん。ですがTRETÅRに入った瞬間に広がる、想いが詰まった数々の雑貨に心が躍り出したことは、言うまでもありません。伊藤さんはこれからも、更なるワクワクを追い求めて、TRETÅRを通してお客様の心を喜ばせていくことでしょう。
■ TRETÅR by KoSaJike
公式HP
tretar2020.wixsite.com/my-site
住所
〒010-0201
秋田県潟上市天王字上の台43-8
営業日・営業時間
不定休
※インスタグラムにて営業スケジュールをご確認ください